多店舗展開

考課者間での評価のばらつきを抑制する唯一最善の方策とは

「考課者によって評価の考え方にばらつきがあり、それが評価される社員の不満になっているようなのです…」

これは先日社員のモチベーションを高めるために人事評価制度を導入したばかりの整骨院チェーン経営者からいただいたご相談です。せっかく社員のモチベーションを高めるために人事評価制度を整備したにもかかわらず、それが社員のモチベーションを下げる結果になってしまっているとはまさに本末転倒の事体ですが、意外にも、このような状況に陥っている企業は少なくないようです。

これはある意味当然なことで、どんなに素晴らしい人事評価制度を構築したとしても、その運用が適切でなければ、プラスの効果が得られるどころか、むしろマイナスにしかならないことは言うまでもありません。そして、運用面での最大のポイントとなるのが“考課者間での評価基準の統一”となります。

そこで、多くの企業では、人事評価制度構築直後から、考課者間で評価基準を統一すべく「評価基準の明確化」や「考課者向け研修を専門企業に依頼する」といった対応を行います。これらの取り組みがまったく意味の無いわけではありませんが、注意すべき点は、人事制度構築直後にそれら取り組みを行うだけで、考課者による評価のばらつきを無くすことは実質的に不可能であるということです。

(1)人事評価制度構築直後の評価基準統一が難しい理由

例えば、人事評価制度構築直後に「評価基準の明確化」を進めることを考えてみたいと思います。仮にS~Dまでの5段階評価制としているケースで考えてみると、各項目に対してS~Dの評価が付く状態とはどのような状態か、というのを洗い出していく作業となります。ここで必要な基準をすべて洗い出せればOKなのですが、人事評価制度運用前もしくは運用を開始してから間もない時点でその基準を洗い出すことがいかに難しいかは、想像するだけでもお分かりになるのではないでしょうか。どのようなポイントで評価のばらつきが出るかもわからない状態なのですから、重要な基準をシンプルかつもれなく抽出することは困難を極めますし、仮にできたとしても、実用性のないものとなるのがオチでしょう。
次に、「考課者向け研修を専門家に依頼する」ことを考えてみます。考課者が評価をするうえで一般的に知っておくべき事項を学ぶという意味では、このような研修は効果的といえますが、評価者間での評価のばらつきを抑制するという観点では、おそらくほとんど効果を発揮しないものと思われます。それは、研修を実施する専門家は自社の方針や考え方を知っているわけではないからです。これまで多くの企業の人事評価制度にかかわってきて強く感じることは、例え同じ規模、業種の企業であったとしても、経営者の方針や考え方によって評価の基準は全く異なるものになる、ということです。それを自社の人間ではない専門家が指導することは実質的に不可能です。このような研修を利用する際には、目的を明らかにして、考課を発揮するポイントに絞って実施することが望ましいものといえます。

(2)評価基準を統一するための基本的な考え方

それでは、評価基準を統一するためには何をすればいいのでしょうか。
当社では、考課者全員が参加する考課者会議を開催し、その会議の中で明らかになった基準をピックアップしていくことで、段階的に評価基準の明確化、共通化を進めていくことを推奨しています。

具体的には、各考課者が事前に部下の評価を行ったうえで考課者会議に参加し、各部下の評価結果とその評価をつけた理由を発表します。他の参加者はその発表を聞き、自分自身の評価の考え方と異なる内容があれば、そこに対して自らの考えを述べます。そうすると、おのずと評価者間での認識ギャップが明らかになります。そこで、経営者及び考課者全員で、当社にとってのあるべき基準がどのようなものであるかを議論し、その結果まとまったものを会社の基準として記録、以降の評価基準として活用していきます。

このような流れで進めていくと、制度導入直後から考課者間での評価のばらつきを抑制できることはもちろんのこと、考課者間での認識ギャップが生じている点に絞って、段階的に基準を明確にしていくことができますから、その基準の効果性も、制度運用前に作る場合と比較すれば、圧倒的に高いものになるはずです。


普通に考えれば、考課者会議を通じて段階的に基準を明確化、共通化していくことが最も有効な方策であるにもかかわらず、その手間を嫌い、結果として社員のモチベーションアップのために時間とお金をかけてつくった制度が、社員のモチベーションを下げるものとなってしまうのは残念でなりません。
評価者会議を通じた評価基準の明確化、共通化はすぐにはじめられることです。いま、考課者による評価のばらつきで困っているのであれば、すぐに評価者会議を開催し、基準の明確化、共通化を進めていくことをおすすめします。

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