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のれん分け制度で直営店を譲渡する時の留意点。譲渡対価設計、譲渡契約書作成

「社員に直営店を譲渡しようと考えています。何か注意すべき点はありますか?」

これは、先日弊社のセミナーにご参加いただいた焼肉チェーン経営者から頂いた質問です。

のれん分け制度における独立形態の一つに直営店を譲渡する形態があります。
独立者からすると、すでに実績のある店舗を引き受けることができるため、独立後の収入の見通しが立てやすく、独立後の事業リスクを抑制できるメリットがあり、本部視点からすると、売却によりまとまった資金を得ることができるメリットがあります。

双方にとってメリットが大きいこともあり、弊社にのれん分け制度構築でご相談に訪れる方の多くは、この直営店譲渡方式による独立を想定しています。

一方、直営店譲渡方式は仕組みが複雑なこともあり、注意すべき点も多々あります。
そこで、本記事では、直営店の譲渡をする際に注意するべき点をご紹介します。

なお、のれん分け制度における独立形態について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

のれん分け制度における3つの独立形態。「直営店譲渡」「経営委託」「新規店舗」



 

直営店舗を譲渡する時の留意点

具体的な留意すべき点としては以下の4つがあげられます。

1.適性な譲渡金額を設定する
2.事前に移籍する社員の個別の同意を得る
3.瑕疵担保責任の取り扱いを確認する
4.のれん分け契約に加えて、譲渡契約を締結する

(1)適正な譲渡金額を設定する

既存店舗の譲渡を行う場合、「店舗の譲渡金額をいくらに設定するか」という点が重要な問題となります。

譲渡金額の算定方法には、大きく分けて「資産評価額を基準に算定する方法」と「当該店舗が将来にわたり生み出す利益を基準に営業権を算定する方法」があります。
のれん分けの実務では、両方を組み合わせて譲渡価額を設定することが一般的です。

仮に、実際の価値と比べて不当に安い金額を設定してしまうと、本部視点では安くした分は税務上は寄付金扱いとなり、本部は寄付金課税をうけるリスクを抱えることになります。
独立者にとっては安く受け取った分は税務上は贈与の扱いとなるため、贈与税が課せれるリスクが生じます。

一方、上記リスクを考慮して譲渡金額を高額に設定すると、独立者が買い取り資金を準備できず、そもそものれん分け制度が成り立たなくなることが懸念されます。

以上を踏まえると、直営店舗の譲渡金額は、税務上のリスクがなく、かつ独立者が買い取ることが可能な金額に設定することが求められます。
この適正金額の算出が、直営店譲渡方式によるのれん分け制度設計の最も難しいポイントです。

なお、譲渡金額の算定方法について詳細をお知りになりたい方は「のれん分け制度で直営店を譲渡する時の譲渡金額の考え方」を参照ください。

のれん分け制度で直営店を譲渡する時の譲渡金額の考え方

(2)事前に移籍する社員の個別の同意を得る

既存の直営店舗を譲渡するに際しては、当該店舗で働いている人材も含めて独立者に譲渡することが一般的です。
人材も含めて譲渡してしまった方が、譲渡後の収益も安定するでしょうから、のれん分け制度の理念から考えて、人材を含めて譲渡する経営者が多いのだと思います。

ただし、直営店譲渡方式の場合は、M&Aとは異なり、人材の移籍にあたり各人材の個別の同意が必要となる点に注意が必要です。
移籍する人材の立場からすれば、独立者の店舗に移籍するよりも、規模が大きい本部で働いていたいと考えるのが自然です。

したがって、直営店譲渡方式を採用するのであれば、対象店舗の人材から移籍について個別同意がとれるかどうかも重要な要素となります。

直営店を譲渡する際の店舗スタッフの取り扱いについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

直営店をのれん分けする際の“店舗スタッフ”の取り扱い。どちらが雇用?派遣はあり?

(3)瑕疵担保責任の取り扱いを確認する

瑕疵担保責任とは、売買される物に瑕疵(その物に対して一般的に要求される品質が欠けているなど、欠陥がある状態)があり、それが一般的な取引に求められる通常の注意では気が付かないものである場合に、売主が買主に対して負う責任をいいます。

既存店舗を譲渡するケースでは、譲渡する店舗に契約した時点では明らかになっていない欠陥(設備不良等)があった場合に、本部は元従業員に対して修繕や損害賠償などの責任を負うこととなります。

既存店舗の譲渡を行う場合、現状有姿で引き渡すことが一般的です。
その場合、店舗を譲渡した後に設備故障などのことでトラブルとならないよう、譲渡時点での店舗や設備の状態がどのようなものであるか、本部と独立者とで一つ一つ確認しておくことが大切です。
譲渡時点で確認しておかなければ、後から設備故障が生じた場合にいつ、誰の責任下で故障したのか判断できないため、トラブル発生の要因となりえるのです。

また、店舗引き渡し後に発覚した事実について本部は責任を負わない旨を契約書に明記しておくべきでしょう

(4)のれん分け契約に加えて、譲渡契約を締結する

既存店舗を譲渡する場合、のれん分け契約に加え、譲渡契約を締結することとなります。
トラブルを防止するためにも、前述の譲渡金額や瑕疵担保責任の取り扱いも含めた譲渡契約書を作成、締結しておく必要があります。

いかに自社の店長経験があったとしても、のれん分け制度についての知識がある方はほとんどいないはずです。
契約書の各条項が意味する内容を丁寧に説明し、十分に納得を得たうえで契約を締結しましょう。

「従業員との間に信頼関係がある」などの理由から契約書を用意せず、口約束だけで制度運用しているケースも見受けられますが、あいまいな契約はトラブルの発生原因となりますので注意が必要です。

のれん分け契約書に盛り込むべき条項について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

のれん分け契約書に盛り込んでおきたい条項例。絶対に入れなければならない8条項

 

まとめ

以上、のれん分け制度で既存直営店舗を譲渡する時の留意点をご紹介しました。

既存直営店舗を譲渡する形態は、本部、独立者共にメリットが大きい仕組みですが、通常のFC契約に加えて「店舗譲渡」が加わる分、仕組みは複雑になります。

店舗譲渡の仕組みや留意点をしっかりと理解して、後から困ることが無いよう制度設計を進めておくべきでしょう。

 

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