人材育成

社員のキャリア構築に必要な2つの視点とは

キャリアというと、どのような経歴をたどったか、どのような経験をしたか、誰と人脈を気づいたか、といった「歩んできた過去」に目が向きがちです。
しかし、それはキャリアが持つ意味の一部分です。

キャリアという言葉を、社員の成長のために使うには、現在から過去を見る視点に加え、現在から将来を見る視点をプラスすることです。
具体的には、将来の社会人としてあるべき姿、到達したいポイントを明確にイメージさせて、それに向かってどのような経験をしていこうかと考えもらいます。
これにより、社会人にとってキャリアという言葉の本当の意味を理解し、キャリアを社会人生活に活かせるようになります。

現代は不確実性が高い世の中になりました。
日常生活においても、集中豪雨や新型コロナウィルスの蔓延など、これまで何十年も経験したことがないようなことが次々と起こっています。
また、IT技術の進展により、情報の量や速度、細かさが格段に増し、市場や顧客ニーズが刻々と変化するようになりました。

このような時代に突入したことに社員は気づいています。
社員は、“会社に寄りかかるのではなく社会人として自律していこう”、“一世代前の時代のように無意識に毎日働き続けるのではなく、自らの将来の姿を意識してキャリアを構築していこう“と考えています。そして、会社がこのような姿勢に共感し、支援することを望んでいます。

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事業拡大したい経営者必見!のれん分け制度をつくる7つの手順と、成功の3つのポイント


(1)キャリア構築に必要な視点とは

キャリアを考えるうえで、社会人としての歩む道を見る視点の話に触れたいと思います。
現在から過去を見る視点に、現在から将来を見る視点を加えることを前段でお話しました。
これは時間軸に関する視点です。

これに加え、もう1つ大切な視点をご紹介します。それは、問題に対して近づいて見るのか、離れて見るのか、という自分と問題との距離感に関する視点です。
社会人として成長し、自律して自発的に行動するということは、目標に向かって行動すること、チャレンジすることです。
これは、課題や問題を解決していくことと言い換えることができます。

それでは、課題や問題を解決するためには、どうしたらよいでしょうか?
通常、問題に近づきます。
何が原因であるか探り、なぜその問題が起こったのか仮説を立て、対応策を複数検討したうえで、望ましい対応策を実行し、その結果を確認しながら、問題を解決していきます。

そのためには、問題を深掘りしたり、問題解決能力を高めるために具体的な業務の経験をしたり、研修を受けたりします。
これは、問題を解決するために必要な行動であり、問題に対して“近づく”行為です。

一方、問題を解決するために近づきすぎると、問題をうまく解決できないことがあります。
例えば、今回コロナウィルスの感染拡大で、時差通勤や在宅勤務が必要になりました。

出社しなければ仕事ができない理由は、業界や会社によってさまざまですが、そのうちの1つに捺印することがありました。
物事を承認するために、はんこを押しているからです。
承認しないと支払いができなかったり、業務が前に進まなかったりします。
そこで、電子印などの議論がさかんに行われたり、政府も行政を中心にはんこを廃止する動きを慌てて開始しました。

ところで、はんこを電子印にすることは、問題を解決するでしょうか?
一部の問題を解決することにはなりますが、それで仕事が効率的になるとは限りません。
そもそもはんこには、認印といった使い方もあり、はんこの意味が不明確な場合もあります。

つまり、捺印するという目先の問題に対して、はんこを代替するという解決策はある意味正しいですが、もう1つの大切な解決策として、はんこを使用しないようにする、という根本的な解決策が考えられるはずです。
その書類にはんこを押すのは、何のためなのか?という視点です。

つまり、ある問題に対して、近づきすぎるとそれより広い視点、高い次元での解決策が思いつかなくなります。
これは、森の中で目の前にたくさんの木があり、木の種類はわかるが、それが全体でどのくらいあり、森の広さがどれくらいなのかわからないことと似ています。
つまり、問題を解決するには、目先の木ばかりを見るのではなく、木が生えている森全体を見ることも必要になります。問題に対して“離れる”行為です。

問題に近づくことは必要ですが、問題からグーっと離れて、問題全体を見てみる。
そもそもその問題はどういうことなのか?
根本解決するにはどうしたらよいか?
将来はどのような社会人になりたいのか?
ライフワークバランスをどう考えるのか?
などの視点です。木とともに森である全体像をしっかり把握します。

担当者であれば、主な仕事の中身は作業ですが、自律した自発的人材は、現場の作業をこなしながら、自ら進んで考え行動する自発的活動が中心になります。
つまり、社員を自律した自発的人材にするには考える習慣を身に着けさせることです。
その支援をするにあたり、さまざまな問題を解決する手段として、社員に木と森を見る距離感に関する視点を持たせるのです。
社員の成長に欠かせない視点です。

(2)問題解決のために持たせたい距離感の視点

社員は、自律した社会人としてキャリアを構築するために、どのような業務を経験したらよいのか、どのようなスキルや資格を獲得したらよいか、と考えています。
もしかしたら、このまま現在の業務を続けていてよいのか、次にどのようなスキルを身に着ければいのか、仕事とプライベートのバランスをどうとればよいのか、悩んでいるかもしれません。

今業務を進めるために必要なスキルと将来会社の中心的な役割を担う人材として必要な能力は異なるはずです。
経理担当の社員は簿記の習得に関心が高いでしょう。
しかし、将来マネジメントとして活躍するためには、他の部署と適切にコミュニケーションしたり、部下のモチベーションを高めたり、他社と交渉する能力が必要になったりします。
これらの悩みや課題を解決するために、木と森を見る距離感の視点が役に立ちます。

以前、芝の野球場でホームベースから外野のポールまでフェアウェイとファールをわける白線を引くことを仕事にしている人がいました。
その白線は曲がることなく一直線でなければなりません。
慣れない人が白線を引こうとすると、足元の白線ばかりを見てしまうそうです。

結果として、白線が曲がってしまい真っすぐに引けません。
しかし、そのプロの方は、足元を見ずにホームベースからゴールの外野のポールをめがけて引きます。こうして直線が引けるのだそうです。

このように悩んでいる社員には、木と森を見る距離感の視点をアドバイスすることで、考えの目線をいつもより高く上げ、より広く俯瞰的に考えさせることができます。
より遠く広くを見通すからこそ、自らが進むべき方向性が明らかになり、今すべきことがわかるようになります。
つまり、この距離感の視点を持たせることは、将来社員を会社に貢献する自律した自発的な人材に育成することにつながるのです。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

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