多店舗展開

店舗ビジネスの多店舗展開に求められる5つの要件とは

今後、店舗展開を加速していきたいと考えています。
多店舗展開を進めていくには、どのような仕組みが必要でしょうか。

これは、現在飲食店を10店舗展開しており、今後の目標として50店舗超の展開を目指す企業経営者からいただいたご質問です。

店舗ビジネスでは、1店舗が生み出す売上や利益には限りがあるケースが多く、会社の発展のためには、店舗を増やし続けていくほかありません。
一方、数店舗の時には上手くいっていたものが、多店舗展開の進展とともに上手くいかなくなっていく…といったこともよくあります。これは、店舗数の拡大とともに会社が抱える課題が変化していくためであり、多店舗展開を進めていくためには、それに耐えうる体制を整えなければならないのです。

それでは、多店舗展開を進めていく際に押さえておくべき要件にはどのようなものがあるのでしょうか。

この点、企業や展開する業種・業態の特性によって様々ですが、当社では“あらゆる企業に共通する多店舗展開に必要な要件”を以下のように定義しています。

それぞれの要件について、詳しくご説明していきます。

(1)経営計画の策定&共有

多店舗展開を進めていく際にはじめに取り組むべきことは、経営計画の策定&全従業員への共有です。

いたって当たり前のことですが、多店舗展開が上手くいかない企業の大半は、このステップで躓いていることが多い印象です。

弊社の経験則で申し上げると、この要件を満たせていない会社は、ほぼ間違いなく多店舗展開を上手く進めることができません。
その理由は2点あります。

1点目は、経営計画を策定していない場合、取り組みが目先のことに終始しがちであることです。

経営者は多忙です。どのような経営者にも、やらなければならないことは山ほどあります。
ただし、やらなければならないことの多くは、目先のためのことであるケースが多いのです。

もちろん、目先のことは大切です。
しかし、企業が中長期的に継続・発展していくためには、現時点ではすぐにやらなくてもよいものであっても、3~5年先を見据えて着実に取り組んでいく必要があります。

例えば、「3年後に新しい事業の柱をつくる」とか「既存のビジネスモデルを革新する」などは、優先順位が低くても、時間をかけて取り組みを積み重ねていかなければ、決して実現できるものではありません。
中長期的に事業発展していくための自社の課題を特定し、それを年単位の計画に落とし込んで、着実に遂行していくことが企業に求められているのです。

2点目は、経営計画が無ければ、従業員に力を発揮してもらうことができないことです。

多店舗展開の成否を左右するポイントが
“会社が決定した戦略・方針を、全従業員に高い水準で実施してもらえるか否か”
にあることは、多店舗展開を目指す誰もが共感できる内容でしょう。

その点、経営計画自体が不明瞭であったとしたら、従業員からすれば不明瞭なことを高い水準で実施しようがありません。
よく「うちの従業員は…」などと従業員の批判をする経営者もいらっしゃいますが、そもそも計画の策定&共有が行われていなければ、それはすべて経営者の責任でしかないのです。

ですから、まずは会社の進む方向性や戦略、経営ビジョン等を明確化し、経営計画書に落とし込んで可視化することが求められるのです。

そして、忘れてはならない点が“可視化した経営計画を全従業員に対して共有する”ということです。
経営計画についてはある程度整理できている企業でも、この全従業員への共有が不十分なケースが散見されます。

よくある失敗例は、経営者や管理者が、作成した経営計画を各従業員に“日々の会話”の中で個別に伝えていくケースです。
これはこれで一定の効果がありそうですが、経営計画は会社のまさに中核となる内容ですから、日常的なコミュニケーションの中ではなく、非日常的な機会を定めて伝える方が有効です。

当社でおすすめしているのは、年に1~2回程度、経営計画発表会を開催することです。
経営計画発表会には全従業員が参加することはもちろんのこと、協力会社や金融機関など、外部の関係先も招待することで特別な場=非日常的な機会であることを演出します。
これにより、会社の本気度が伝わって従業員の意識が高まり、経営者の言葉を聞く姿勢が整う効果が期待できます。
経営計画発表会の後には従業員の家族も招いて懇親会を開催すれば、企業内コミュニケーションの深化、組織風土の良化などの効果も期待できます。

このようなお話をすると「店舗の営業があるから全従業員を集めることは不可能だ」等との反論を受けることもあります。
もちろん、簡単なことではありませんが、そこをどう工夫して乗り越えるかが、会社の競争力を左右するポイントであることを忘れてはなりません。

実際、飲食店を数十店舗規模で展開していながら、経営計画発表会の日には全店休業してまで実施している会社もあります。
その日に得られたであろう収益を考えると、経営計画発表会にかかっているコストは1千万円単位になろうかと思いますが、それでも経営計画発表会を開催することによって得られる効果の方が大きいと判断しているのです。

それだけのコストを負担してまで実施している経営計画発表会ですから、経営陣の熱意も相当なものであることは言うまでもありません。日常的なコミュニケーションの中で伝えるものとは別次元の効果が生まれることは明らかです。

経営計画の策定&共有は、多店舗展開の前提条件となります。
これから多店舗展開を目指す企業は、経営計画の策定&共有が、安定的な多店舗展開のスタートになることを忘れてはならないでしょう。

(2)評価システム

経営計画が明確化されると、会社が従業員に求める意識や能力、行動も必然的に明らかにされていきます。会社の経営計画を従業員に浸透させていくためには、経営計画を策定して全従業員に共有した後には、会社が従業員に求める意識や能力、行動に基づき、従業員それぞれを適正に評価していかなければなりません。

評価システムのあり方は、会社方針を従業員に伝える明確なメッセージとなります。経営計画に定められた内容を遂行した人材が高く評価されれば、経営計画は自ずと社内に浸透していきます。
逆に、経営計画に定められた内容を遂行しているにもかかわらず、評価がされないのであれば、だれも経営計画実現に向けて頑張ろうとは思わないはずです。

会社の経営計画を実現するために従業員が努力した結果、その努力が適正に評価される、といった関係性が重要です。
これにより、経営計画と評価システムが連動するようになり、“会社の方向性=従業員の方向性”といった関係性が成り立つようになります。
評価システムは経営計画と連動させることではじめて意味があることを意識しておかなければならないでしょう。

(3)キャリアパス

評価システムを整備した後には、会社の経営計画実現に貢献し、高い評価を得た従業員が、会社でどのようなキャリアを描いていくことができるのかを明示することが大切です。

経営計画を理解し、経営計画実現のために努力した結果、従業員自身の将来がどのようになっていくか、という点が見えるようになることで、会社の経営計画実現と従業員自身の将来が一体化していくことになります。
すなわち、キャリアパスを明確化することにより、“会社事”が“自分事”になっていくのです。

キャリアパスには「社内におけるキャリアパス」と「社外におけるキャリアパス」があります。
社内におけるキャリアパスとしては、仕事内容やポジション、給与水準などがあげられます。
・どのようなステップで出世していけるのか、
・各階層に到達するためにはどのような能力が必要か、
・どの程度の期間でその階層に到達できるのか、
等を明確に示すことができるとよいでしょう。

社外におけるキャリアパスとしては、代表的なものとしては「のれん分け(社員独立支援)による独立」があげられます。
「将来は社内に残るのではなく、自分でやりたい」と考える従業員を、一経営者としてグループ内に留め、活躍してもらう方法です。

社内でキャリアを築いていきいたい人、社外でキャリアを築いていきたい人それぞれに対応するキャリアパスを用意できると、会社のキャリアパスとしては完璧でしょう。
また、このようなキャリアパスの選択肢を自社サイトの採用ページや求人サイト等で情報発信していけば、採用競争にも有利に働くことが期待できます。

(4)教育システム

経営計画、評価システム、キャリアパスが明確化されたら、従業員それぞれの知識やスキル、目指す将来像などを踏まえ、個々の従業員に適した教育を行っていきます。
前にも述べた通り、“会社の方向性=従業員の方向性”といった関係性とすることが大切です。
両面を意識して従業員を育成していける教育システムを導入することが大切です。

当社では多店舗展開を進めていく際の仕組みとして、目標管理制度の導入を推奨しています。
目標管理制度とは、会社の目標を踏まえて従業員個人毎に目標を設定し、それに対する達成度合いで評価を決める制度のことを言います。
会社の目標を踏まえて従業員個人が何を目標とするのかを明確にし、個人と企業のベクトルを合わせる手法で、個人の目標と企業の目標をリンクさせることができます。

目標管理制度では、従業員それぞれの目標を設定することに加えて、その目標を達成するために行動する具体的な内容を各従業員に考えてもらうことになります。

この行動を考えるプロセスが、多店舗展開を進める企業の人材育成には必須のプロセスと言えます。
なぜならば、多店舗展開を進める際に求められる人材像は、ただ言われたことを言われた通りにできる人材ではなく、目標達成や問題解決のために取り組む必要があることを自ら考え、行動できる人材であるからです。

このような人材はトレーニング無くしては絶対に育ちません。
会社から目標達成や問題解決のために必要な取り組みを考える機会を継続的に提供し、そのような思考方法が習慣化されるまで繰り返しトレーニングし続けなければならないのです。
目標管理制度は、そのトレーニングに最適な仕組みといえます。

また目標設定完了後は、上司が定期的に進捗確認をすることにより、各従業員が日々目標を意識して行動することができるようになります。
通常の評価システムでは、半年毎、1年毎といった間隔での評価となりますから、目標を日々意識することは難しいでしょう。
この点、目標管理制度を評価システムに組み込みことによって、評価システムを運用することがそのまま人材育成につながることになるのです。

(5)FCシステム

最後に、図の中心にあるFCシステムです。これは、多店舗展開を進めるにあたり必須、というわけではありません。
FCシステムは、多店舗展開を加速するエンジンの役目と考えるとよいでしょう。

直営店で多店舗展開を進めていくと、店舗ビジネスの特性から、どうしても資金面や人材面で制約が生じます。展開速度が速くなれば借入金が膨らみますし、人手不足問題が深刻化する現代では、必要人員を確保することも容易ではありません。

この点、加盟店の経営資源を活用するFCシステムでは、これらの制約を取り除くことができます。

具体的には、FC店舗の場合、店舗投資資金は加盟店が負担しますから、本部の資金負担なく店舗を増やしていくことが可能です。むしろ、店舗出店の際には加盟金が手に入るため、それをその他の投資に使うことも可能です。
また、店舗運営責任は加盟店が負いますから、人材の採用・育成・定着化の取り組みについても、加盟店に責任をもって取り組んでもらうことになり、本部はそれらの悩みから一定程度解放されることになります。

加えて、FC店舗の収益責任は加盟店が負うため、仮に急激な環境変化によって店舗の売上が激減したとしても、その負担は本部と加盟店が分散して負うことになります。
本部単体で見れば、環境変化によるダメージを抑制することができるのです。

情報化や国際化、技術革新等が進み、環境の急変が発生することが前提となる現代において、環境変化への適応力を高めることは、今後の重要なキーワードとなるのではないでしょうか。

このように、FCシステムを活用することで、直営店による展開時と比較して多店舗展開を加速することができるようになるのです。
直営による展開に限界が出てきたときには、FCシステムを活用することも一つの手段といえるでしょう。

まとめ

以上、当社が考える多店舗展開に求められる5つの要件をご紹介しました。

重要なことは、経営計画、評価システム、キャリアパス、育成システム、FCシステムの5つの要素が、それぞれ有機的に結びついて多店舗展開を支えている、という点です。
それぞれが単独で効果を発揮するものではなく、すべての要素を整備することで、はじめて最大の効果が発揮されるのです。

現在多店舗展開を進めていて悩みが生じている、またはこれから多店舗展開を進めていきたいと考えている方は、上記内容を参考に、今後の取り組みを検討していただければ幸いです。

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