多店舗展開

多店舗展開を加速する人材育成システムとは

多店舗展開を進めていく上で必ず問題・課題として浮上するのが人材育成です。特に10店舗を超えたあたりから、人材育成や動機付けで悩みを抱える経営者が多いようです。これはある意味当然のことともいえます。なぜならば、当社経験則でいうと、どんなに優秀な経営者(マネージャー)であっても、1人で管理できるのはせいぜい7~8店舗程度が限界となるからです。そのため、10店舗を超えてくると、これまで経営者が行っていた人材育成・動機づけに関する取り組みを、中間管理職を通じて実施していくことが求められるようになります。この多店舗展開の進展に伴うマネジメントスタイルの変化が、人材育成や動機付けが上手く進まなくなる要因です。
10店舗を超えると経営者自らが人材育成や動機付けを行うことが難しくなるわけですから、さらなる多店舗展開を進めていくためには、人材育成や動機付けを会社の仕組みとして回していく意識が必要です。その点さえ理解しておけば、人材育成システムを構築することはそれほど難しいことではありません。具体的には、以下のポイントを会社の仕組みとして整備するとよいでしょう。

(1)目標設定

人材育成を進めていく上で目標が必要ということは誰もが知っていることでしょう。しかしながら、その目標には大きく分けて2種類の考え方があることは意外と知られていません。当社では、目標を以下の2つに分けて考えることが、人材育成を進めていく上で非常に重要な点だと考えています。

①結果目標

結果目標とは、売上や利益等、企業活動の結果として現れるもので、定量的に測定できる目標を意味します。多店舗展開を目指すような企業であれば、ほぼ間違いなく、会社全体、部門毎、店舗毎で売上や利益等の結果目標が設定されていることでしょう。
この結果目標が重要であることは言うまでもありませんが、注意しなければならない点は“結果目標は企業活動の結果生じるものであり、その数値だけを追うことには何の意味もない”ということです。
このようなことを言うと「そんなことはない!」と怒られるかもしれませんが、結果目標を達成するために、店舗または従業員の具体的な行動が伴っていない(行われていない)のであれば、まったく意味がないことはご理解いただけるかと思います。
売上目標や利益目標といった結果としての目標は、それを達成させるための行動が伴ってはじめて意味を持ちます。しかしながら、人材育成で躓く企業の多くは、結果目標の設定まではしつつも、結果目標を達成させるために取り組む具体的な行動の内容や量については店舗や従業員にゆだねてしまっている事実があります。企業として、人材育成を進めていきたいのであれば、結果目標を達成させるための行動にこそフォーカスすべきであることは言うまでもありません。

②行動目標

行動目標とは、前述の結果目標を達成させるために具体的に取り組むべき行動レベルの目標です。例えば、売上昨年対比120%という結果目標を達成するために、
・チラシを1000枚ポスティングしよう
・法人営業を100件実施しよう
・単価の高い●●をすべてのお客様におすすめしよう
等と設定することです。
結果目標に対して、それを達成するための行動目標が設定されることで、初めて人材育成に役立つ振り返りができるようになります。具体的には、結果目標だけを設定している場合、振り返りでは結果目標の達成・未達成しか振り返りができません。達成していれば「良かったね」、未達成だったら「残念だったね」で終わりです。なぜならば、そこには結果目標を達成させるために必要な取り組みが店舗や従業員にゆだねられてしまっているからです。一方、結果目標に加えて行動目標が設定されている場合、結果目標の達成、未達成に加えて、行動目標の達成、未達成を振り返ることができます。例えば、結果目標である売上目標が未達成だったとして、それは(a)行動目標を質・量共にやりきった上での未達成なのか、それとも(b)そもそも行動目標をやりきっていないのか、まで振り返りができるようになります。(a)の結果未達成とういことであれば、行動目標の量・質のいずれかが不足していたということですから、次はその行動の量・質を見直して再チャレンジすることができます。(b)の結果未達成ということであれば、まずは決めた行動をやりきるよう指導する必要があります。このような振り返りを行っていくことが人材育成には不可欠であることから、結果目標に加えて行動目標を設定することは、人材育成を効果的に進めていく上での重要な要素となります。
また、結果目標を達成するために必要となる行動目標を各従業員に考えさせることが、多店舗展開を進める企業の人材育成には必須のプロセスと言えます。なぜならば、多店舗展開を進める際に求められる人材像は、ただ言われたことを言われた通りにできる人材ではなく、目標の達成や問題を解決するために必要なことを自ら考え、行動できる人材であるからです。「結果目標を達成させるために何が必要か」ということを従業員が必死に考えて実行し、その結果を振り返り、また考えて実行する…というプロセスをまわし続けることこそが、自ら考え行動できる人材を育成する唯一の方法なのです。

(2)定期的な振り返り

結果目標と行動目標設定後、その目標を達成するために各店舗、各従業員が取り組みを開始します。大切なことは“その後の取り組みを各店舗、各従業員任せにしてほったらかさない”ということです。なぜかというと、残念ながら人には“楽をしたがる”という性質が誰しも生まれながらに備わっているからです。自分自身を振り返ってみても、やらなければいけないのに、楽をしたいがためにできなかった、継続できなかった等の経験はないでしょうか。運動や禁酒・禁煙、早寝早起きなどはその代表的なものといえるでしょう。
この性質から考えれば、たとえ目標を設定したとしても、普通の人であれば自分一人で行動を継続的に実施していくことは困難を極めます。ですから、目標設定後の取り組みを店舗や従業員にゆだねてしまっては、せっかく設定した目標が意味をなさなくなってしまいます。そのような事態を防止するためにも、目標設定後には定期的な振り返りが必要です。振り返りのサイクルは短ければ短いほどいいでしょう。振り返りの内容としては、結果目標の達成度に加えて、行動目標の進捗度合いを確認し、必要に応じてその後の行動目標の内容を見直します。例えば、行動目標は進捗通りに進んでいるけれども結果目標が未達成になりそうということであれば、行動目標の質・量を見直す、などといったイメージです。このような振り返りを短サイクルで実施していくことで、設定した目標に対する店舗、従業員の意識を維持し続けることができるのです。

(3)取り組みに対する適正な評価と承認

目標設定と振り返りの仕組みが完了すれば、人材育成の仕組みとしてはほぼほぼ完成です(もちろんマニュアルの整備、定期的・継続的な研修の実施等、人材育成を加速する手法は他にも多々あります)が、この仕組みの効果を最大化するために必要不可欠なものが、従業員の取り組みを適正に評価もしくは承認するシステムです。設定した行動目標を質・量の両面でやり切り、その結果として結果目標を達成した従業員を評価することはもちろんのこと、仮に結果目標が未達成だったとしても、行動目標をやり切った店舗や従業員を評価・承認することで、取り組みに対して高いモチベーションを持つことができるのです。ここでポイントとなるのが、結果目標だけを見るのではなく、行動目標の遂行度=仕事のプロセスまでをみてあげることでしょう。このような評価・承認システムを構築することにより、前述の人材育成システムの有効性が加速度的に高まるのです。


以上が多店舗展開を進める企業に求められる人材育成システムの重要要素となります。
なお、上記要素をすべて網羅した仕組みとして、当社では、「多店舗展開に必要な要素(後編)」でもご紹介した目標管理制度の導入を推奨しています。人材の育成や動機付けで苦労されているのであれば、目標管理制度を導入することも一つの手といえます。
ただし、意識しなければならない点は“目標管理制度は運用が命”という点です。正直、目標管理制度の運用は容易なことではありませんし、導入したからといってすぐに結果が表れるものでもありません。しかしながら、継続的に運用するともに、制度のブラッシュアップを行うことで、確実に人材の育成や動機付けが進んでいく仕組みです。人間で例えれば、筋トレのようなものといえます。人手不足問題が深刻化する現代においては、このような取り組みを着実に実施し、社内で必要な人材を育成できることこそが、圧倒的な差別化要素となるのです。

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