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既存店をのれん分けする際の“その他従業員”の取り扱い

「既存の直営店をのれん分けするのですが、その店舗で働く独立者以外の従業員はどのように取り扱えばよいのでしょうか」

これは、先日弊社にのれん分け制度構築のご相談で訪れた
パーソナルトレーニングジムチェーンを営む経営者からのご質問です。

既存店でのれん分けを行う際、しばしば問題となるのが
「独立者以外の従業員の取り扱いをどうするか」
というものです。

例えば、のれん分けする店舗に独立者以外にも正社員がいた場合、
その社員は従来通り本部の帰属となるのか、
それとも独立者の帰属となるのか、という疑問が生じます。

このとき、深く考えずに独立者以外は従来のまま本部帰属とすることもありますが、このようなやり方は本部に大きなリスクが生じることとなりかねませんので注意が必要です。

のれん分けを実施する際は、その他従業員の取り扱いまで十分に検討の上、制度設計・運用することが求められます。

 

その他従業員を移籍させる際に生じる問題

のれん分けをすると、独立者は本部とは別の“独立した事業体”となります。
そのため、のれん分けした店舗を運営するために必要な人材は、独立者自らの責任で募集・採用することが原則です。
この時、のれん分けする店舗に元々在籍していた従業員をどのように取り扱うかがしばしば問題となります。

基本的には、当該店舗の経営者が本部から独立者に変更されることとなりますから、当該店舗で働く従業員も、当独立者の事業体(独立者が立ち上げる会社等)に帰属することになるように感じられます。

しかしながら、このような考え方には以下の2つの問題点があります。

①独立者の事業体の帰属となることは、当該従業員の人生に関わる重大な問題であること

のれん分け制度を導入する本部は、店舗を複数店舗展開していることが多く、独立者の事業規模と比べて圧倒的に会社規模が大きいことが一般的です。
そのような本部企業だからこそ働きたいと感じた従業員に対して、たまたま在籍していた店舗がのれん分けするからといって、当然に「独立者の下で働いてください」といっても、納得してもらうことは容易なことではないでしょう。

ましてや、独立者とその他従業員の関係は、のれん分け後は“経営者”と“従業員”として明確な上下関係ができることになります。
独立者とその他従業員の間に信頼関係がなければ、その下で働きたいなどと思うことはないでしょう。

また、転籍する従業員が、自分も将来のれん分け制度で独立したいと考えていた場合、事態はより複雑になります。

②従業員の転籍には、対象者の個別同意が必要であること

のれん分けに伴い、本部から独立者の事業体に対して従業員を転籍させる場合、法的にも労働契約はそのまま独立者の事業体に継承されることにはなりません。
のれん分けの際に、本部従業員を独立者の事業体に転籍させる場合には、対象となる従業員に個別に同意を得たうえで移籍してもらうことが必要となります。

①の問題から従業員が転籍に同意しない場合、本部としては強制的に転籍させることはできませんから、その他直営店への配置転換等によって、本部において雇用継続の努力を行う必要があります。

 

のれん分けにおける従業員派遣の考え方

以上のことから、のれん分けを実施する際、独立者以外の従業員については、本部に残ってもらって他の直営店等に配置転換をする(≒独立者側で必要となる人材は、独立者の責任で採用してもらう)か、対象者に個別同意を得て独立者の事業体に転籍してもらうかを選択することとなります。

ここで問題となりやすいのが、美容院やパーソナルトレーニングジムなどのように、特定の従業員に顧客が付くようなビジネスモデルのケースです。
このようなビジネスモデルの場合、のれん分けと同時に、店舗に在籍している従業員を転籍させなければ、当該店舗の売上は大きく落ち込むこととなります。
のれん分け制度を円滑に運用していくためには、従業員を転籍させることが不可欠ですが、当該従業員が転籍に同意しなければ、前述の通り強制的に転籍させることはできません。

このようなケースで行われがちなのが
「雇用主は本部のままとして、のれん分け実施後も独立者の店舗で働いてもらう」
といった方法ですが、このようなスキームは労働者派遣に該当します。

労働者派遣を許認可が必要な事業となるため、実施のためには厚生労働大臣に対して許可の申請を行い、その許可を受けなければなりません。
仮に許可を得ずに実施した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられることとなります。
安易に労働者派遣を行うことは慎む必要があるでしょう。

それでは、美容院やパーソナルトレーニングジムなどでのれん分け制度を導入する際に、独立者以外の従業員の取り扱いをどうしているのかというと、「本部企業からの出向」や「業務委託契約」といった方法が採用されるのですが、これらの方法も一長一短ありますので、各手法のメリット・デメリットを踏まえて、自社にあった方策を選定する必要があるでしょう。

 

まとめ

以上、既存店をのれん分けする際の独立者以外の従業員の取り扱いの考え方をご紹介しました。

独立者以外の従業員の取り扱いをその場しのぎで行ってしまうと、後々大きな問題になりかねません。
安易な考えで行うのではなく、

  • 取りうる選択肢の種類
  • 各選択肢のメリット・デメリット

を十分に検討したうえで、自社に最適な手法を選択すべきといえます。

 

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