多店舗展開

スタッフの行動に変化をもたらす“理論と感情のバランス”とは

「部下に気づきを与えようと、対話を心掛けているのですが、あまり通じていないようで、、」

これは、以前お会いした飲食店の経営者の方の言葉です。
詳しくお話を伺ってみると、経営者の方が熱心なあまり、接客や売上向上策などの課題について、理屈ばかりの話をされていたようです。

このようなことは、この方だけに言えることではありません。

人は、相手を動かそう、動いてもらおうとすると、つい理屈で動かそうとしてしまいます。
しかし、人の心の中では、理屈より感情が先に動いています。
人は理論よりも感情を優先しているのです。

 

会社の中で感情より優先される理論

しかしながら、いざ仕事となると、感情よりも理論が優先されがちです。
なぜなら、組織で人を動かすためには、論理が必要だからです。

経営者は、日頃から経営方針の決定、事業計画の策定・実行、経営分析などを論理的に進めています。
特に、金融機関などとの打ち合わせでは、論理的な説明が重要です。
経営者の気持ちが感情でコロコロ変わっては、取引先や部下から信頼を得ることはできません。

一方、プライベートでは、好き嫌いなどの感情を優先して、生活していることでしょう。
その方が、気持ちがよいからです。そのため、家族との買い物で理論的な話ばかりをすると、ケンカになってしまうこともあるでしょう。

このように、人は、理論と感情で動きます。これは会社の中にもあてはまります。
「この新商品は絶対に売れる」とか、「この販売促進策は楽しそう」と感じたり、「この仕事はやらなければいけない」とわかってはいても、「この人とは一緒に仕事したくないな」と思っていると、行動しなかったりします。

人が動くかどうかは、理論だけではなく、感情が大きく関係しているのです。

仕事でもプライベートでも、人は感情に従った行動は得意ですが、逆らった行動は苦手です。
人を動かすためには、理論と感情のバランスをとることが大切です。

 

感情に働きかけ、部下を説得する3要素

人が自発的に行動するためには、自分自身で行動の目的や意味を納得していることが必要です。

そこで、理論だけではなく、感情にも働きかけ、自発的に行動させる方法をアリストテレスの弁論術を使って、ご紹介します。

アリストテレスは、古代ギリシャの哲学者で、弁論術の中で、説得手段として、以下の3要素の重要性を述べています。

1. エトス(話し手の人柄)

まず信頼です。日頃から部下と信頼関係を築いておく必要があります。
信頼を築くには2つの観点があります。

1つは、上司である面談者の業務に取り組む姿勢です。

部下は、上司の働き方をよく見ています。
飲食店であれば、接客の態度、開店準備の様子、売上管理、社員への指示の仕方や社長との接し方など多岐に渡ります。
部下から見て、信頼できると感じられる姿勢を示すことが必要です。
経営者の方は、上司は周りから見られている存在であることを部下に意識させましょう。

もう1つは、部下に質問することです。

質問は、相手に関心があることを間接的に示します。
想像してみてください。
面談などで、上司に一方的に話をされるよりは、質問をされて、それに答えるほうが、部下ははるかに、気分良く対話を行うことができるでしょう。
対話が終わった後に、いろいろ話を聞いてもらえた、と部下は満足感を感じます。

2. パドス(聞き手の感情への働きかけ)

聞き手の感情に働きかけをします。
キーワードは、「共感」です。

対話の中で、部下が共感を得ることができると、気持ちの上で、上司との距離がぐっと縮まります。
それには、上司が自身の苦労話や失敗談などの話をすることです。

店舗立ち上げ時の様子や、社長を説得して企画を承認してもらった過程、新規顧客獲得のため飛び込み営業をした経験など、いろいろあるはずです。
これらの話は、成功例だけである必要はありません。
失敗談こそ誰もが経験しやすいものなので、共感の度合いを高めます。
成功例を話す際は、決して自慢話にならないようにしましょう。

また、命令や指示をしないようにします。
部下がわかっていることを指示された場合などは、認められていない、と受け止めることになりますし、人によっては、自尊心を傷つけられたと感じる場合があります。
これらは、部下の負の感情に働きかけをしてしまい、自発的人材育成にとっては、逆効果となってしまいます。

3. ロゴス(理論による説明)

部下に自発的に行動させるためには、会社の経営方針や組織の役割、行動施策、部下への期待などの話をします。
この話の際には、しっかり理論で裏づけをして、話に説得力を持たせます。

通常面談などでは、このような上司が伝えたい話だけになりがちですが、それだけでは、部下の自発的な行動につながりません。
そのため、弁論術では、それらに加えて、人の感情に働きかけることを説いています。

 

理論と感情のバランスがとれた対話が部下の行動を変える

このように、人を説得するためには、理論に加えて、感情に働きかけをします。

上司が、論理的な話ばかりするのではなく、部下から信頼と共感を得て、業務に取り組みたい、業務をやってみたいと部下に心から思わせることが必要です。
上司は理論と感情のバランスがとれた対話を心掛ける必要があるのです。
それにより、部下自身の気持ちと考えが変わり、自発的な行動につながります。この説得の方法は、仕事や部下に限っていません。

会社での対話に加え、プライベートや自分自身に対しても活用できますので、意識して行動してみてはいかがでしょうか?
周囲の方の行動が変わり、会社の業績や自分自身に変化が現れるかもしれません。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

 

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