人材育成

若い社員にキャリアを考えるきっかけを与える対話方法とは

現代の多くの若い人は、将来の不透明さから会社に頼り切ることをせず、自分のスキルを高め、自律していける力をつけようとしているようです。
一方、将来のことや自分のキャリアについて、まだ若いから、といった理由で、あまり関心を持っていない人もいます。

人生100年時代といわれ、20代くらいの若い人から見れば、まだまだこの先何十年も働かなくてはならず、とりあえず今困っていなければよいのではないか、と考えても不思議ではありません。
しかし、若い社員に早期にキャリアに関心をもってもらい自発的に行動してもらえれば、それだけ会社に大きな利益をもたらします。

そこで、キャリア構築は長い時間をかけるからこそ実現できるということを気づかせるために、将来のキャリアについてまだ十分に意識していない若い人をケース別に分けて、対応策をご紹介します。

なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。

事業拡大したい経営者必見!のれん分け制度をつくる7つの手順と、成功の3つのポイント

(1)キャリアに興味を持っていない若者

「うちの若い者は頭もいいし、仕事も早いのですが、まだあまり自分の将来を考えるつもりがないようで」

これは先日お話したあるサービス業の経営者の方の言葉です。
現代の多くの若い人は、将来の不透明さから会社に頼り切ることをせず、自分のスキルを高め、自律していける力をつけようとしているようです。

一方、この経営者の会社の社員のように、将来のことや自分のキャリアについては、まだ若いから、といった様子で、あまり関心を持っていない人もいるのは事実です。
人生100年時代といわれ、20代くらいの若い人から見れば、まだまだこの先何十年も働かなくてはならず、とりあえず今困ってなければ良いのではないか、と考えても不思議ではありません。

(2)継続して取り組むことでしか成果を出せないことがある

しかし、健康寿命の延びにともない働く期間が延びたとしても、20代というのは人生で一度しかありません。
20代を過ぎてしまったら、その時間は決して戻ってきません。

人として、働く社会人としてキャリアを長期的視点で見たときに、若い時からやっておくべきことがあるはずです。
短期間では成果が出ず、長い時間をかけるから意味を成すこと、継続するから実現できることが世の中にはいくつかあります。

身近な例では貯金です。
突然100万円が欲しいと思っても、100万円は転がっていません。

しかし、毎月1万円ずつ積み立てていれば、9年弱で貯まります。
もし複利5%で運用していれば、同じ9年間で何と約130万円にもなっています。
長期間継続したからこそ成果が現れました。
資産形成は、長期の備えが必要な典型的な例です。

長期視点という意味で、キャリア形成も同様です。
ある仕事や職種で一人前になるには、よく1万時間必要といわれます。
専門家や職人になるには、それだけ長くの時間をある仕事や努力に費やす必要があります。

1万時間とは、1日1時間費やすと約30年かかる時間です。
もし、職業とした場合は、1日8時間、200日/年働いたとして、6年強かかる計算です。
つまり、継続して取り組むことの大切さに気づき、早期に取りかかっているかいないかで、数年後にとても大きな差が生じます。これらは、決して1日や短期間で成し遂げることができないことです。

(3)若い社員にキャリアを考えるきっかけを与える対話方法

若い社員に早期にキャリアに関心をもってもらい自発的に行動してもらうことは、それだけ会社に大きな利益をもたらします。
若い人に活躍してもらえば、その効果は、長期間現れ、そして大きくなります。
人材育成を行うには、経営者が社員に早く気づかせることが第一歩です。

そこで、将来のキャリアについてまだ十分に意識していない若い人をケース別に分けて、対応策をご紹介します。

まだいいだろう

将来のキャリアについてまだ意識していない若い人のなかには、「まだいいだろう」、「今ではなくてよい」と考えている人がいます。
このケースは、今問題に直面していないため、キャリアを考えないことを問題と認識していません。

夏休みの宿題が出ているのは知っているが、まだ時間があるので夏休みの終わりにやればよいだとうと小学生が考えるのと似ています。
夏休みの宿題は、2~3日でできるかもしれません。

しかし、キャリアは、一朝一夕に構築できません。
失った時間は決して戻らず、取り返すことができません。

一日でも早く取り組めば、それだけ大きく成長する可能性があります。
このケースの対応策は、先ほどの資産形成の例のように、キャリア形成は時間をかけないと大きな成果がでないことであることを知ってもらいます。

具体的には、30代で活躍するために求められる仕事を伝え、今のままで30代になって求められるスキルが身についているのか?もしこのまま30代になったらどうなるのか?歳を重ねるうちに次々と後輩が入ってきて、先輩として指導できるのか?などを想像させ期待と危機感を抱かせ、気づかせます。
20代である今こそやるべきことがあると、社会人経験の長い経営者や先輩が経験談を交え対話をします。

直視したくない

キャリアを考えることは頭のなかではわかっているが、「考えることが面倒くさい」、「問題を抱えたくない」と思っているケースです。
問題意識はありますが、「考えることが面倒くさい」場合は、どこから手をつけたらよいかわからないと思っています。

また、「問題を抱えたくない」場合は、今までの仕事に対する取り組みやキャリア構築の仕方で気になるところがあったり、満足していないことがあるため、キャリアを考え始めることで、パンドラの箱を開けたくないと考えています。
自己否定につながるかもしれないことを恐れて、問題を直視することを意図的に避けています。

このケースの対応策は、問題を直視することを消極的にしてしまう心に引っかかっているものをクリアにすることを支援します。
キャリアを考えることを大げさに考え過ぎず、まず数年後の仕事をしている様子、チャレンジしてみたい職種などイメージしやすいことからから始め、その実現のために取り組むべきことや時間軸などを少しずつ具体的にしていきます。

その過程で、今までの自分の甘さや本当の夢など、触れたくなかったことがあった場合は共感を示し認めます。
これが社員の安心感につながり、問題を捉えるきっかけとなります。
対話により、考えるきっかけを与えれば十分です。

考える時期ではない

キャリアを考える問題意識は多少持っているが、まだ20代だし、与えられた仕事を十分にこなすこともできないので、今の仕事に集中しょう、そのような何年も先のことをまだ考える時期ではないと考えているケースです。

このケースは、問題の意識は持っているので、一日でも早く取り組んだ方がよいことを伝えます。
現在の業務をしっかりやっていることを認めたうえで、このままキャリアを考えずに仕事を続けた場合の将来の姿と、キャリアをデザインしながら成長した将来の姿について想像させます。

時間が経てば、社会環境は変化し、自分の興味や能力も変化します。
絶えず変化する環境のなかで、長期の視点を持つからこそ、今すべきベストのことがわかりやすくなります。

会社が長期的視点のビジョンや経営方針を掲げ、毎月直近の経営課題に取り組むことと同じことです。目先ばかり見ていては、進路を見失ってしまいます。
このケースは、キャリアをしっかり構築したいと考えていますので、今から考えることがより望ましいこと、「善は急げ」であることを気づかせます。

このように、若い人がキャリアを考えないケースはいくつかあります。
社員ごとに背景は異なると思われますので、今回ご紹介したようなケースを想定し、社員と対話をしながら、一緒にキャリアを考えていくことが、早期にキャリアを意識させ、行動を促すことにつながります。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

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