「フランチャイズ展開にはどのような契約書類が必要になるのでしょうか?」
これは先日弊社にフランチャイズ本部構築のご相談に訪れた東京都内で居酒屋チェーンを営む経営者からのご質問です。
契約書類というと、一般的にはフランチャイズ契約書をイメージするかもしれませんが、加盟者希望者が現れてからフランチャイズ契約を締結するまでには、実に様々な書面が必要となります。
フランチャイズ契約締結までのプロセスは企業によってまちまちとなりますので、まずはこのプロセスを明確化し、そのプロセスに沿った形で、どのような契約書類が必要となるかを明らかにしなければなりません。
そこで、今回はフランチャイズ契約締結までの流れと必要な書面をご紹介します。
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なお、FC展開について詳しく知りたい方は、弊社YouTubeチャンネルも併せてをご覧ください。
フランチャイズ契約締結までの基本的な流れと留意点
フランチャイズ契約に至るまでの流れはフランチャイズ本部によって違いがありますが、フランチャイズ契約までのプロセスに基本形があることも事実です。
そこで、以下に基本的な流れとそのポイントや必要となる書面についてまとめてみたいと思います。
①加盟希望者が出現
本部の事業説明会や個別相談を経て、具体的に加盟を検討している人が現れます。
フランチャイズの加盟希望者を集める際の基本的な流れは、
資料提供⇒事業説明会への参加⇒店舗見学⇒個別相談
といった流れになります。
②秘密保持契約書の締結
加盟希望者に対してより詳細な情報を開示する前に、秘密保持契約を結びます。
直営店舗の収益情報など、本部にとって重要な情報は秘密保持契約締結後に開示するとよいでしょう。
③法定開示書面の説明
法定開示書面とは、契約前にフランチャイズ本部が加盟希望者に対して、国より交付・説明することが求められている情報をまとめた書面です。
飲食・小売業は、「中小小売商業振興法」により、契約前に指定事項を記載した書面を交付し、その記載事項について説明をすることが義務付けられています。
また、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」でも同様の情報開示をFC本部に求めており、こちらはサービス業も対象となります。
すなわち、すべてのフランチャイズ本部は、加盟希望者に対して、契約締結前に法定開示書面を交付する必要があるのです。
「法定開示書面を提示しない本部=情報開示がしっかりとできていない本部」ともいえます。
FC展開を目指す以上、加盟者に対して法定開示書面を交付し、説明することは、本部の義務と心得ましょう。
なお、法定開示書面やフランチャイズを規制する法律の詳細についてお知りになりたい方は、以下を参照いただければと思います。
また、フランチャイズ本部の中には法定開示書面をインターネット上で公開している本部もあります。
日本フランチャイズチェーン協会が運営するJFAフランチャイズガイドには、JFA加盟企業の法定開示書面が公開されていますので、参考までに確認してみるとよいでしょう。
④加盟申込
加盟希望者の加盟意思が固まったら、加盟申込書を提出してもらいます。
その際、加盟審査やその後の手続きに必要な情報もあわせて提出していただくとよいでしょう。
一般的には以下のような内容が考えられます。
加盟希望者が個人の場合
- 印鑑証明書(3ヵ月以内)
- 住民票
- 預金残高証明
- 履歴書、職務経歴書
- 確定申告書 等
加盟希望者が法人の場合
- 履歴事項証明書
- 印鑑証明書
- 直近決算書(貸借対照表、損益計算書)3期分程度
- 代表者の履歴書、職務経歴書 等
⑤加盟審査
加盟希望者から受領した書類及びこれまでのやり取りや面談時の対応等の結果を踏まえて、加盟可否を審査します。
フランチャイズ展開の成功を左右する最大のポイントは、加盟審査といっても過言ではありません。
同じ船に乗せてはいけない人を乗せることがないよう、多面的な視点から十分に審査をした上で意思決定をしましょう。
事前に加盟審査のチェック項目を一覧化しておき、重要な要素を漏れなく審査できるようにしておくとよいでしょう。
⑥審査結果の通知
加盟審査の結果を加盟希望者に対して通知します。
審査に合格した場合には、その後の手続きの流れを書面にまとめて渡すとよいでしょう。
⑦加盟申込金の徴収
フランチャイズ本部によっては、フランチャイズ契約の締結前に、加盟申込金を徴収するケースがあります。
フランチャイズ契約前にも、フランチャイズ本部には物件探索のサポートや立地評価など、一定の負荷が生じます。
それらの負担を負ったにも関わらず、フランチャイズ契約締結前に、加盟希望者に加盟意思が無くな、加盟するのを取りやめた場合、本部は一方的な損失を受けることになります。
このような事態を避けるためにも、フランチャイズ契約締結前委に加盟申込金を徴収するのです。
加盟申込金は、覚書等で理由のいかにかかわらず返還しない旨を確認しておくことで、仮に加盟希望者が、加盟申込金の支払い後に加盟することを取りやめたとしても、本部に返金の義務は無くなります(ただし、その金額が、本部が負担する業務に対して相応のものである必要はあります)。
フランチャイズ契約締結前に本部に一定程度の負担が生じる場合には、加盟申込金を設定しておくとよいでしょう。
その場合、加盟申込金の取り扱いなどを規定する覚書が必要となります。
⑧店舗物件の探索・選定・評価・決定
店舗候補物件は、原則加盟希望者に探してもらいます。
ただし、店舗ビジネスでは出店立地の良し悪しで成功するかしないかが決まるといっても過言ではありませんから、候補物件の評価は本部が必ず行うべきです。
本部の業務を効率化するためにも、出店立地の基準をまとめた資料を用意し、加盟希望者にある程度絞り込みを行ってもらった上で、基準を満たす店舗のみ、本部が最終評価を行うとよいでしょう。
⑨フランチャイズ契約書の読み合わせ
店舗物件がきまると、いよいよフランチャイズ契約を締結します。
フランチャイズ契約締結のタイミングは、店舗物件決定後がベストです。
店舗物件決定前にフランチャイズ契約を締結し、加盟金を受領している本部もありますが、その場合、あとから店舗物件が見つからない場合にトラブルとなる可能性がありますので注意が必要です。
フランチャイズ契約書の条項は数十項目にわたることが一般的です。
記載されている内容も専門的なものが多いため、加盟希望者が単独で読むだけですべてを理解することは難しいものといえます。
ですから、フランチャイズ契約書は本部と加盟者で必ず読み合わせを行い、フランチャイズ契約書の各条項が意味する内容を十分に理解してもらいましょう。
万が一、後からトラブルが生じた場合にも、この読み合わせを行っていることが、フランチャイズ本部の立場を守ることにつながっていきます。
なお、フランチャイズ契約書の作成方法や盛り込むべき条項について詳しく知りたい方はこちらをこちらをご覧ください。
⑩フランチャイズ契約書の預託
フランチャイズ契約書を読み合わせただけで、フランチャイズ契約書の内容すべてを正確に理解することは不可能です。
契約書の読み合わせ後は、1~2週間程度、加盟希望者の検討時間を設けましょう。
これも、前項と同様、不測の事態が発生した際に本部の立場を守ることにつながります。
尚、フランチャイズ契約書を加盟希望者に預託するにあたっては、期間満了後にフランチャイズ契約書を返還すること、フランチャイズ契約書の内容を外部に漏らさないことなどを一筆交わしておくことをおすすめします。
⑪加盟金等の加盟費用の徴収
加盟金は、フランチャイズ契約締結日までに振り込んでもらうことが一般的です。
フランチャイズ契約書の預託と併せて加盟金等の請求書を渡し、加盟金等の支払いを確認したうえで、フランチャイズ契約締結日を迎えるとよいでしょう。
なお、加盟金やロイヤリティの設計方法について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
まとめ
以上、フランチャイズ契約締結までの基本的な流れと必要となる書面をご紹介しました。
このように、フランチャイズ契約締結までには実に様々なプロセス、留意点があり、必要となる書面も多岐にわたります。
フランチャイズシステムは、契約書に基づくビジネスです。
何か問題が生じたときに、最終的に立ち返るのはフランチャイズ契約書であり、その締結プロセスとなります。
今回ご紹介した内容は、最低限のものになりますが、本格的にフランチャイズ展開を目指すのであれば、この基本的なプロセスや留意点をしっかりとおさえつつ、自社にとっての最適な流れを構築しておくべきでしょう。
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