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フランチャイズ構築時に知っておきたい法律②独占禁止法

フランチャイズを規制する法律①中小小売商業振興法」では、フランチャイズシステムに関連する代表的な法律として中小小売商業振興法の概要やフランチャイズシステムとの関連性をご紹介しました。今回は、中小小売商業振興法と並ぶフランチャイズシステム関する代表的な法律である独占禁止法を紹介します。

(1)独占禁止法とは

独占禁止法とは「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」の略称で、企業間の公正、自由な競争を確保することにより、資本主義の市場経済の健全な発達を促進することを目的とした法律です。市場メカニズムが正しく機能していれば、事業者は自らの創意工夫によってより安くて優れた商品を提供して売上高を伸ばそうとします。またその結果として、消費者は自らのニーズに合った商品を選択することができ、事業者間の競争によって消費者の利益が確保されることになります。
上記を実現するために、独占禁止法は、次の3つの柱によって構成されています。

①私的独占の禁止

私的独占とは「事業者が、単独に、または他の事業者と結合し、もしくは通謀し、その他いかなる方法をもってするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、または支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」をいいます。

②不当な取引の制限

不当な取引とは「事業者が他の事業者と共同して、その事業活動を相互に拘束しまたは遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」をいいます。

③不公正な取引方法の禁止

不公正な取引方法とは「不当な競争手段を用いる行為 (競争面における経済力の濫用) や取引上の優越的地位を不当に利用して相手方の競争機能を制限する行為 (取引面における経済力の濫用)」をいいます。

独占禁止法に違反した場合、公正取引委員会では、違反行為をした者に対して、その違反行為を除くために必要な措置を命じることがあります(排除措置命令)。また、私的独占、カルテル及び一定の不公正な取引方法については、違反事業者に対して、課徴金が課されることがありますし、カルテル、私的独占、不公正な取引方法を行った企業に対して、被害者は損害賠償の請求をすることもできます。
万が一、フランチャイズ本部が独占禁止法に違反をしてしまった場合、本部には様々なデメリットが生じることになりますので、独占禁止法に抵触しないよう本部運営をしていくことが求められます。

(2)独占禁止法とフランチャイズの関連性

フランチャイズシステムでは、チェーン全体のイメージの統一性が重要な要素となることから、加盟店に対しては商標の使用、商品や原材料、商品等の仕入れ先、販売価格や販売方法などに対して様々な制約が課されることとなります。この制約が、フランチャイズシステムの統一性や競争力を守るために必要不可欠な内容であれば特段の問題はありませんが、その制約が過度になりすぎると、独占禁止法で禁止されている「不公正な取引方法」に該当する恐れが生じます。フランチャイズシステムの特性上、本部は加盟店よりも優越的な地位に立つケースは多く、フランチャイズ本部としては独占禁止法に抵触しないよう注意をする必要があります。
フランチャイズシステムを用いる事業活動の増加に伴い、本部と加盟者の取引において様々な問題が発生しており、独占禁止法上の問題が指摘されることも少なくありません。そこで、公正取引委員会は、本部と加盟者の取引において、どのような行為が独占禁止法上問題となるかについて具体的に明らかにし、本部の独占禁止法違反行為の未然防止とその適切な事業活動の展開に役立てるために、「フランチャイズシステムに関する独占禁止法上の考え方について(フランチャイズガイドライン)」を策定・公表しています。
フランチャイズガイドラインは、「契約締結前」と「契約締結後」の2つのフェーズに分けて、それぞれのフェーズにおける独占禁止法の適用について説明をしています

本部の加盟者募集について

①加盟希望者に対して開示することが望ましい事項

中小小売商業振興法と同様、独占禁止法違反行為の未然防止の観点から、加盟希望者の適正な判断に資するよう本部が加盟者を募集するに当たり的確に開示することが望ましい事項として次の事項が明示されています。この内容については最低限開示が必要な項目となる点を心がけなければなりません。

  1. 加盟後の商品等の供給条件に関する事項(仕入先の推奨制度等)
  2. 加盟者に対する事業活動上の指導の内容、方法、回数、費用負担に関する事項
  3. 加盟に際して徴収する金銭の性質、金額、その返還の有無及び返還の条件
  4. 加盟後、本部の商標、商号等の使用、経営指導等の対価として加盟者が本部に定期的に支払う金銭(以下「ロイヤルティ」という。)の額、算定方法、徴収の時期、徴収の方法
  5. 本部と加盟者の間の決済方法の仕組み・条件、本部による加盟者への融資の利率等に関する事項
  6. 事業活動上の損失に対する補償の有無及びその内容並びに経営不振となった場合の本部による経営支援の有無及びその内容
  7. 契約の期間並びに契約の更新、解除及び中途解約の条件・手続に関する事項
  8. 加盟後、加盟者の店舗の周辺の地域に、同一又はそれに類似した業種を営む店舗を本部が自ら営業すること又は他の加盟者に営業させることができるか否かに関する契約上の条項の有無及びその内容並びにこのような営業が実施される計画の有無及びその内容

なお、中小小売商業振興法の対象は、飲食・小売業でしたが、独占禁止法ではサービス業も対象となる点に注意が必要です。したがって、どのような本部であれ、契約前に加盟希望者に対して情報開示書面を開示し、自社のフランチャイズシステムについて十分な説明をすることが求められます。

②予想売上げ又は予想収益の提示

加盟者募集に際して、予想売上げ又は予想収益を提示する本部もありますが、この場合、本部が提示した予測値と実績値のギャップがしばしば問題となります。そこで、フランチャイズガイドラインでは、本部が売上や収益の予測値を加盟希望者に対して提示する場合には、類似した環境にある既存店舗の実績等根拠ある事実、合理的な算定方法等に基づく必要があり、また、本部は、加盟希望者に対して、これらの根拠となる事実、算定方法等を示す必要があるものされています。

③ぎまん的顧客誘引

本部が、加盟者の募集に当たり、上記①に掲げるような重要な事項について、十分な開示を行わず、又は虚偽若しくは誇大な開示を行い、これらにより、実際のフランチャイズシステムの内容よりも著しく優良又は有利であると誤認させ、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引する場合には、ぎまん的顧客誘引に該当します。
本部の行為がぎまん的顧客誘引に該当するかどうかは、以下事項を総合勘案して、加盟者募集に係る本部の取引方法が、実際のものよりも著しく優良又は有利であると誤認させ、競争者の顧客を不当に誘引するものであるかどうかによって判断されます。

<ぎまん的顧客誘引に該当するか否かについての考慮事項の例>

  • 予想売上げ又は予想収益の額を提示する場合、その額の算定根拠又は算定方法が合理性を欠くものでないか。また、実際には達成できない額又は達成困難である額を予想額として示していないか。
  • ロイヤルティの算定方法に関し、必要な説明を行わないことにより、ロイヤルティが実際よりも低い金額であるかのように開示していないか。例えば、売上総利益には廃棄ロス原価が含まれると定義した上で、当該売上総利益に一定率を乗じた額をロイヤルティとする場合、売上総利益の定義について十分な開示を行っているか、又は定義と異なる説明をしていないか。
  • 自らのフランチャイズ・システムの内容と他本部のシステムの内容を、客観的でない基準により比較することにより、自らのシステムが競争者に比べて優良又は有利であるかのように開示をしていないか。例えば、実質的に本部が加盟者から徴収する金額は同水準であるにもかかわらず、比較対象本部のロイヤルティの算定方法との差異について説明をせず、比較対象本部よりも自己のロイヤルティの率が低いことを強調していないか。
  • フランチャイズ契約を中途解約する場合、実際には高額な違約金を本部に徴収されることについて十分な開示を行っているか、又はそのような違約金は徴収されないかのように開示していないか

●フランチャイズ契約締結後の本部と加盟者との取引について

①優越的地位の濫用

優越的地位の濫用とは、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、取引先に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える行為をいいます。
加盟者に対して取引上優越した地位にある本部が、加盟者に対して、フランチャイズシステムによる営業を的確に実施する限度を超えて、正常な商慣習に照らして不当に加盟者に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施する場合には、フランチャイズ契約又は本部の行為が独占禁止法で定められた優越的地位の濫用に該当します。
ここでポイントとなるのが、「本部の取引上の地位が相手方に優越しているか」という点になります。フランチャイズシステムにおける本部と加盟者との取引において、本部が取引上優越した地位にある場合とは、「加盟者にとって本部との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、本部の要請が自己にとって著しく不利益なものであっても、これを受け入れざるを得ないような場合」であり、その判断に当たっては、加盟者の本部に対する取引依存度(本部による経営指導等への依存度、商品及び原材料等の本部又は本部推奨先からの仕入割合等)、本部の市場における地位、加盟者の取引先の変更可能性(初期投資の額、中途解約権の有無及びその内容、違約金の有無及びその金額、契約期間等)、本部及び加盟者間の事業規模の格差等を総合的に考慮するものとされています。
フランチャイズシステムにおける本部と加盟者との取引において、個別の契約条項や本部の行為が、優越的地位の濫用に該当するか否かは、個別具体的なフランチャイズ契約ごとに判断されることとなりますが、取引上優越した地位にある本部が加盟者に対して、フランチャイズシステムによる営業を的確に実施するために必要な限度を超えて、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合には、本部の取引方法が優越的地位の濫用に該当します。フランチャイズガイドラインでは、優越的地位の濫用に該当する例として以下の5例を挙げています。

<優越的地位の濫用に該当する事例>

取引先の制限 本部が加盟者に対して、商品、原材料等の注文先や加盟者の店舗の清掃、内外装工事等の依頼先について、正当な理由がないのに、本部又は本部の指定する事業者とのみ取引させることにより、良質廉価で商品又は役務を提供する他の事業者と取引させないようにすること。
仕入数量の強制 本部が加盟者に対して、加盟者の販売する商品又は使用する原材料について、返品が認められないにもかかわらず、実際の販売に必要な範囲を超えて、本部が仕入数量を指示し、当該数量を仕入れることを余儀なくさせること。
見切り販売の制限 廃棄ロス原価を含む売上総利益がロイヤルティの算定の基準となる場合において、本部が加盟者に対して、正当な理由がないのに、品質が急速に低下する商品等の見切り販売を制限し、売れ残りとして廃棄することを余儀なくさせること。
フランチャイズ契約締結後の契約内容の変更 当初のフランチャイズ契約に規定されていない新規事業の導入によって、加盟者が得られる利益の範囲を超える費用を負担することとなるにもかかわらず、本部が、新規事業を導入しなければ不利益な取扱いをすること等を示唆し、加盟者に対して新規事業の導入を余儀なくさせること。
契約終了後の競業禁止 本部が加盟者に対して、特定地域で成立している本部の商権の維持、本部が加盟者に対して供与したノウハウの保護等に必要な範囲を超えるような地域、期間又は内容の競業禁止義務を課すこと。
②抱合せ販売等・拘束条件付取引

抱き合わせ販売等とは、「ある商品やサービスを販売する際に、その購入者らに対し、不当に他の商品やサービスを一緒に購入等させる行為」をいい、拘束条件付取引とは「取引に際して、取引の相手方と第三者との関係を拘束する条件 (例:購入先、販売価格などの指定) を付して当該相手方と取引すること」をいいます。
フランチャイズ契約に基づく営業のノウハウの供与に併せて、本部が、加盟者に対し、自己や自己の指定する事業者から商品、原材料等の供給を受けさせるようにすることが、抱き合わせ販売等に該当するかどうかについては、行為者の地位、行為の範囲、相手方の数・規模、拘束の程度等を総合勘案して判断する必要があり、このほか、かかる取引が拘束条件付取引に該当するかどうかについては、行為者の地位、拘束の相手方の事業者間の競争に及ぼす効果、指定先の事業者間の競争に及ぼす効果等を総合勘案して判断されるものとされています。

③販売価格の制限

前述の通り、フランチャイズシステムでは、チェーン全体のイメージの統一性が重要な要素となります。そのため、販売価格については、統一的営業・消費者の選択基準の明示の観点から、本部が必要に応じて希望価格を提示することは許容されます。しかしながら、加盟者が地域市場の実情に応じて販売価格を設定しなければならない場合や売れ残り商品等について値下げして販売しなければならない場合などもあることから、本部が加盟者に商品を供給している場合、加盟者の販売価格を拘束することは、原則として独占禁止法で禁止されている再販売価格の拘束に該当するものとしています。また、本部が加盟者に商品を直接供給していない場合であっても、加盟者が供給する商品又は役務の価格を不当に拘束する場合は、拘束条件付取引に該当することとなり、これについては、地域市場の状況、本部の販売価格への関与の状況等を総合勘案して判断されるものとしています。

(3)まとめ

このように、フランチャイズシステムは独占禁止法による制約を強く受けることとなりますので、フランチャイズシステムの制度設計から契約書作成においては独占禁止法とフランチャイズシステムとのかかわりを踏まえて制度構築を進めていく必要があります。また、仮に制度設計上は問題ない形としていても、日々の運用次第では独占禁止法に抵触する事態も十分に想定される(たとえば、加盟店開発担当者が、自らの成績を優先するあまり、口頭で加盟希望者の誤解を招く情報を伝えてしまうなど)ことから、フランチャイズ本部としては、独占禁止法とフランチャイズシステムとの関連性を、社員全員に理解させる努力が不可欠といえます。

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