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制度構築前に絶対知っておきたい“のれん分けとFCの違い”

「のれん分けとFCって何が違うんですか?」

これは、弊社が開催するのれん分け・FCセミナーにご参加いただいた方からいただく質問の中でも、最も多い質問です。

質問はいたってシンプルなのですが、この問いは、FCシステムやのれん分けの本質に迫る内容ともいえます。
これからのれん分け制度を導入し、成功させたいと考えているのであれば、この違いは明確に理解しておくべきでしょう。

とはいえ、この“のれん分けとFCの違い”について、本質的な内容をまとめている情報はそれほど見当たりません。
そこで、今回は“のれん分け制度とFCシステムの概要と違い”から、それらを踏まえた“のれん分け制度を導入する際の留意点”までをご紹介します。

 

のれん分け制度とは

「のれん」とは、ご存知のとおり飲食店などのお店の入り口に掲げられているものです。
家紋や屋号が書かれていることが多く、そのお店を象徴する存在です。

日本では、古くから飲食店などで、長年働いてくれた奉公人に、同じのれん=家紋や屋号を使ってお店を出すことを認める“のれん分け”という取り組みが行われてきました。

簡単にまとめると、経営者が長年会社に貢献してくれた従業員に対して、感謝の意味も込めて、自社のブランドやノウハウをつかって独立することを認める制度を“のれん分け”といいます。

古くからあるのれん分けの目的は、長年勤めてきた弟子の働きに対する報奨や、のれんの格式、伝統を守ること等にあります。
この文化は現代にも引き継がれており、従業員の独立志向が旺盛な飲食店や美容院などにおいて発展した形で取り入れられています。

 

フランチャイズとは

「フランチャイズ」という言葉に明確な定義は存在しませんが、日本国内においては、日本フランチャイズチェーン協会が公表している定義が一般的です。

(社)日本フランチャイズチェーン協会(JFA)の定義
フランチャイズとは、事業者(フランチャイザー)が、他の事業者(フランチャイジー)との間に契約を結び、
自己の商標、サービスマーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、
同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして
一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う
両者の継続的関係をいう。

この定義をかみ砕くと、以下の3つのポイントに整理できます。

①本部から加盟者にFCパッケージ(商標、経営ノウハウ、継続的指導等)を提供する
② ①の見返りとして、加盟者は本部に一定の対価(加盟金、ロイヤルティ等)を支払う
③ 本部と加盟者は各々独立した事業体であり、契約に基づき共同事業を行う

 

このポイントをよく見てみると、先ほどご紹介したのれん分け制度は、ほとんどの場合、この3つの要件を満たしています。
ですから、“のれん分け制度はFCシステムの一種”いえます。
実際、「のれん分けFC制度」と呼ばれることもあります。

 

のれん分けとフランチャイズの違い

では、“のれん分け”と“FC”の違いはどこにあるのでしょうか。

端的に言えば、のれん分けとFCの本質的な違いは、
「加盟者が全く信頼のない第三者か(=FC)、一定の関係がある従業員か(=のれん分け)」
という点です。

制度設計上の違いは様々あるのですが、その違いの本質は、“加盟者が誰であるか“の違いしかありません。
この違いから、のれん分けとFCでは制度設計のポイントが変わってくることになります。

例えば、加盟者が第三者の場合、すなわちFCのケースを考えてみます。

FCの場合、そもそも加盟者は、本部が運営しているビジネスのことをよく知りません。
場合によっては、その業種で働いた経験が無いこともあります。
ですから、本部としては、素人でも最低限の運営ができるよう、
・しっかりとしたマニュアルを整備する
・店舗運営についての研修を実施する
・定期的な臨店指導を実施する
などのサポートが必要となります。

また、加盟者が第三者の場合、本部と加盟者との間には信頼関係がありません。
そのため、加盟前に相手が信頼に値する人物であるかどうか、しっかりと見極める仕組みも必要となります。

とはいえ、短期間で加盟者を完全に見極めることは不可能です。
加盟後に本部と加盟者との間でトラブルが生じることも想定し、本部が負けない仕組み、例えば万全のFC契約書を用意するなどしておくことも必要でしょう。

一方、加盟者が従業員の場合、すでに店舗運営についての知識は十分に備わっていますし、本部との信頼関係も構築されているはずです。
そのため、先に紹介したような細かい仕組み作りは必要ないもかもしれません。

このように、FCシステムとのれん分け制度は、基本的なシステムとしては同一であるものの、“加盟者の違い”よって制度設計のあり方に違いが生じることになります。
ややこしいですが、これが“のれん分けとフランチャイズの違い”です。

 

のれん分け制度が導入される目的の変化

のれん分け制度の場合、すでに信頼関係のある従業員が加盟対象となることになります。
この背景から、これまでは独立者との間に一定の信頼関係があることを理由に、厳密な定めをせずにのれん分け制度の運用がなされることが多くありました。
大げさな話ではなく、口約束だけでブランドやノウハウを使用することを許可するような本部もあるほどです。

昔は、このような制度設計でも比較的うまくいくことが多かったようです。
そのため、今でも昔ながらの決まりや仕組みがゆるやかな、またはほとんど決まりがないのれん分け制度を導入している企業を見かけることがあります。

しかしながら、のれん分け制度を取り巻く環境も時代の流れとともに変化しています。
現代において、信頼関係をベースにしたのれん分け制度(=厳密な定めのないのれん分け制度)は本部と独立者間でトラブルに発展する可能性が極めて高いものになっています。
これからのれん分け制度を導入し、成功したいと考えるのであれば、この時代変化の流れを踏まえた制度設計をすることが大切です。

では、その時代変化とは何を指すのか。
一言でいえば、昔と今とで、のれん分け制度を導入する目的が大きく変化していることがあげられます。

昔ながらののれん分け制度は、「会社からの従業員への恩返し」を最大の目的としています。
これまで長年にわたり会社に貢献してくれた従業員に対する恩返しとして、従業員の自己実現のためにのれん分けによる独立という選択肢を提供するものであり本部側の利益が目的に含まれていない、またはそれが第一目的となっていないことが特徴です。

一方、近年のれん分け制度が導入される目的には、従業員に対する恩返しという側面は当然に残ってはいるものの、それにプラスして
・本部の多店舗展開の推進
・働き手確保に向けた本部の働く場としての魅力向上
・本部の安定収益の確保
など、本部側の利益が必ずといっていいほど含まれています。

この違いは、些細なことのように見えますが、実際に運用してみると、大きな違いとなって顕在化してきます。

 

のれん分け制度の目的が変わることで顕在化する問題

のれん分け制度の導入目的が変化することにより顕在化する問題は様々ありますが、その最も重大な問題は、のれん分け制度の特徴ともいえる本部と独立者との関係性が従来システムよりも希薄化することです。
これは、人間関係が希薄化している現代の特性によるところもあるでしょう。
例えば、人手不足問題を乗り越えることを目的に、本部の働く場としての魅力向上のためにのれん分け制度を導入する企業が増えています。
将来、独立を志す人材に対して「のれん分けによる独立」というキャリアパスを提供することで、人材採用・育成・定着の円滑化を目指す方法です。

これを実現する場合、制度設計の面では、「独立を志す人材が入社してから何年で独立できるのか」という点が極めて重要な要素となります。

目安となる期間が設定されていなければ、そもそも求職者に対する情報としては弱い(例えば、明確に「3年で独立」等とうたわれている方が情報としては強い)ですし、仮に独立を目指す人材を確保できたとしても、次に出てくることは「いつになったら独立できますか?」という質問となります。

それをうやむやにして引き延ばすようことをしていれば、独立を目指すような志の高い人材には見放されてしまうことは明らかです。
かといって、独立までの期間を10~20年などと長く設定していたとしたら、そもそも制度の魅力が薄れてしまいます。

上記のような理由から、人手不足対策を目的としたのれん分け制度の場合、どうしても入社してからのれん分けによる独立までが、昔ながらののれん分けシステムと比べると短期化することとなります。
弊社の経験則で申し上げれば、求職者に対しての魅力という視点では、3年以内がベスト、長くても5年程度に抑える必要があります。

この短期間で、独立者に求められる能力や資質を習得させることや、本部と独立者間の信頼関係を構築することは至難の業と言えます。
ですから、経験が不足している分、独立前後のサポートが必要になるでしょうし、信頼関係が従来よりも希薄化している分、トラブルが発生することを想定した制度づくりが必要となるでしょう。

この点、昔ながらののれん分けは、あくまで従業員が頑張った結果として提供されるものですから、入社してから独立までの期間はたいていの場合10年超となります。
また、はじめからのれん分けによる独立を前提としていないため、十分な能力と資質を持ち、かつ本部と厚い信頼関係を築くことができた人にのみ、のれん分けをすることも可能です。

独立者が十分な能力と資質を習得し、かつ本部と独立者間で十分に信頼関係が構築されているため、のれん分け後にトラブルが生じるリスクが少なく、ゆえに口約束でも運用することが可能であったのです。

「信頼関係がある」と言えば聞こえはいいですが、自社が展開しようとしているのれん分け制度の目的がどのようなものなのか、その点を踏まえたうえで、どの程度の仕組みを構築すべきか、十分に検討することが必要でしょう。

 

まとめ

のれん分けとFCの本質的な違いをご紹介しましたが、最近ののれん分け制度では本部と独立者の信頼関係が希薄化している点を踏まえると、求められる仕組みはのれん分けとFCでそれほど違いは無いものと言えます。

「のれん分けは信頼できる元従業員との契約だから安心だ」といった発想は通用しなくなっています。
権利者意識が高まっている現代において、独立者を全面的に信頼し、口約束だけで独立を認めるような行為は慎むべきでしょう。

悲しいことですが、このような安易な考えでのれん分け制度を導入し、トラブルを抱える結果になった企業や経営者を多く目にしています。
「我々は違う」などと考えず、導入の目的に従い、しっかりとした制度設計を行うことをおすすめします。

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