「のれん分けする社員を見極める際のポイントはありますか?」
これは、先日のれん分け制度構築のコンサルティングをご依頼いただいた飲食店経営者からいただいた質問です。
のれん分け制度を成功させるうえで、「誰にのれん分けするか」は極めて重要なポイントとなります。
どんなに素晴らしい仕組みをつくっていたとしても、独立させてはいけない人にのれん分けをしてしまったら、すべて台無しになることさえあるほどです。
そのため、のれん分け制度を活用していこうと考えた場合、「のれん分けを認める独立者の要件」はしっかりと考えておく必要があります。
そこで、今回は、のれん分け候補者に求められる要件と本部のあるべき姿勢について触れていきたいと思います。
なお、のれん分け導入の留意点について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
コンテンツ
(1)のれん分け候補者に求められる要件
のれん分けによる独立者は、会社に雇われていた立場から、一人の独立した経営者の立場に変わります。
社員と経営者では、負う責任は全くと言っていいほど異なるものになりますので、当然、求められる資質や能力も大きく変化することになります。
具体的には、のれん分けによる独立者には次のような要件が求められることになります。
①経営者としての覚悟
のれん分けとはいえ、独立する以上は独立後に何が起きても自己責任となります。
予期せぬ事態が発生して苦境に立たされたとしても、独立者の力で、その苦境を打破ししていかなければなりません。
したがって、のれん分けによる独立者には「何が起きても責任を取る覚悟=経営者としての覚悟」が必要不可欠です。
②問題解決能力
先に述べた通り、独立後に発生した問題はどのような理由があれ、すべて独立者自身の力で解決していかなければなりません。
本部は問題解決のサポートまではしても、代わりに問題解決するようなことはできないのです。
そのため、独立者には、解決困難な問題であったとしても、その問題を解決するための方法を突き詰めて考え抜き、具体的な行動にまで落とし込むこと=問題解決力を発揮することが求められるのです。
③本部理念や方針に対する共感度
中長期的に信頼関係を維持していくためには、本部と独立者間で理念や方針を共有しておくことが不可欠です。
特に、本部のブランドを独立者に使用させる場合、独立者が本部の理念や方針に反する行動をとってしまうと、ブランド全体に悪影響が及ぶ可能性もあります。
そのため、のれん分けによる独立者は、本部理念や方針に対して共感していることが前提条件となります。
本部としては、会社で働くうちから社員に対して本部理念や方針を繰り返し共有し、浸透させておく必要があるでしょう。
④経営リテラシー
経営者になる以上、経営者が知っておくべき最低限の経営リテラシーは押さえておかなければなりません。
例えば、決算書の読み方、雇用手続きや労務管理、金融機関からの借入の仕方、事業計画書の作り方などがあげられます。
このような内容は、独立者が意図的に学ぼうとしない限り、普通は学ぶ機会はありません。
ですから、本部としては、独立候補者が会社で働いているうちに、最低限の経営リテラシーを身に着けられるよう働きかけておく必要があるでしょう。
なお、のれん分け対象者に対する経営者のあり方について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
(2)本部はのれん分け候補者に経営者としての覚悟を問わなければならない
以上が、のれん分け候補者に求められる代表的な要件となりますが、この中でも習得が難しいものが「①経営者としての覚悟」です。
そもそも、独立候補者は、のれん分けによる独立という意思決定をするときには、会社に雇われる立場にあります。
会社で守られている立場の社員に対して、「経営者としての覚悟を持て!」といっても、ピンとこないのが現実でしょう。
特に、本部が独立者をサポートすることが前提となるのれん分けでは、独立者が「経営者としての覚悟」を持ちにくいのもある種当然のことといえます。
ですから、本部としては、独立者が「経営者としての覚悟」を持つためのきっかけを提供していくことが求められるのです。
具体的には、「お金に関する決断」をさせることが効果的です。
一定程度の自己資金を店舗に投資させることや、金融機関からの借り入れをさせることが該当します。
当然、独立者には
「これまで苦労して貯めてきたお金を失うかもしれない」
「事業が上手くいかずに大きな借金を背負うことになるかもしれない」
等の不安が生まれることになりますが、この不安を乗り越えて決断を下すからこそ、経営者としての覚悟が生まれるのです。
なお「のれん分け制度を成功させる秘訣」を詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
まとめ
以上、「のれん分け候補者に求められる要件と本部のあるべき姿勢」についてご紹介をしました。
のれん分けには、長年会社に貢献してくれた社員に対する恩返しの側面があるため、本部経営者の中には、独立者がスムーズに独立できるよう至れり尽くせりのサポートを行う方もいらっしゃいます。
例えば、「自己資金ゼロでも独立できる」等のサポートが該当します。
しかし、本部は独立者の経営について責任を持つことはできません。
のれん分けをした独立者は、独立以降、自らの力で道を切り開いていかなければならないのです。
その観点から考えると、経営から切っても切り離せない「ヒト」と「カネ」の問題について、本部が過度なサポートを行うことは、一時的には独立者のためになったとしても、中長期的には独立者のためにはならないでしょう。
本部経営者としては、このことを念頭に、独立者に対するサポートのあり方を検討していく必要があるのです。
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