これまで、フランチャイズ本部を立ち上げるために取り組むべきことを、事前準備からフランチャイズシステム構築、加盟店開発の進め方まで時系列でご紹介してきました。ここまでの内容を確実に遂行してきたのであれば、今すぐにでもフランチャイズ展開を進めることができる状態になっているはずです。
しかしながら、実際にフランチャイズ展開を進めていくのはフランチャイズ本部のスタッフです。どんなに素晴らしい戦略や仕組みが作られていたとしても、実行する人に問題があれば、絵にかいた餅で終わってしまいます。最終的には、フランチャイズ本部の担当スタッフの資質や能力がフランチャイズ展開の成否を左右するのです。
そこで、第7回目はフランチャイズ担当者を育成する際のポイントをご紹介します。
<目次>
コンテンツ
<シリーズ>
第1回:フランチャイズ展開をはじめる前に準備すべきことを知る
第2回:フランチャイズ展開する標準店舗モデルを確立する
第3回:加盟店に提供するフランチャイズパッケージを作り込む
第4回:本部が受け取る加盟金やロイヤリティを設定する
第5回:フランチャイズ契約書類を整備する
第6回:加盟店開発戦略を策定する
第7回:フランチャイズ本部のスタッフを育成する
第8回:フランチャイズ本部立ち上げを成功させるためのポイント
なお、FC展開について詳しく知りたい方は、弊社YouTubeチャンネルをご覧ください。
(1)フランチャイズ本部の人材に求められる要件
フランチャイズ本部には、直営展開時には存在しない機能がいくつかありますが、人材という観点から考えたときの最大の違いは、加盟店の経営者を相手に仕事をすることが求められる点です。
当該フランチャイズ事業に人生をかけた加盟店の経営者を相手にするのは並大抵のことではありません。フランチャイズ本部の経営者であれば対等なコミュニケーションがとれるでしょうが、一社員がそれらの経営者と対等にやりとりするためには、相応の準備をしておかなければまず不可能です。
加盟店経営者と本部スタッフとの間に信頼関係が無い本部が上手くいくことはありえません。ですから、自社のスタッフが加盟店の経営者と対等にわたりあえるよう、必要な教育を行っていく必要があります。教育の対象としては、以下の切り口があげられます。
①フランチャイズシステムについての理解
フランチャイズ本部のスタッフがフランチャイズシステムについて理解していなければならないことは当たり前なのですが、弊社の経験則では、フランチャイズ展開を開始して間もない本部のスタッフは、驚くほどフランチャイズシステムについて無知であるケースが多いです。ひどい場合には、フランチャイズ担当者がフランチャイズ契約書を見たことが無いケースもありました。
加盟者とフランチャイズ契約を締結している以上、フランチャイズ本部スタッフが加盟者とコミュニケーションをとる際には、すべての内容が自社のフランチャイズシステムに基づいている必要があり、そのためには、フランチャイズシステムを正しく理解していることが前提となります。
フランチャイズシステムは専門性の高い内容であり、書籍を読むだけなどで習得できるものではありません。フランチャイズ本部が率先的に学びの場を提供していく必要があるでしょう。
②フランチャイズ本部の経営方針やビジネスモデルについての理解
フランチャイズ本部のスタッフは、フランチャイズ本部の経営方針やビジネスモデルを誰よりも理解していなければなりません。
例えば、加盟店の経営指導を担当するSV(スーパーバイザー)は、加盟店の売上・利益を増やすために、フランチャイズ本部のビジネスモデルを基準とした指導を行わなければなりません。また、加盟店開発の担当者は、フランチャイズ本部の経営方針やビジネスモデルの特徴、魅力を加盟希望者に対して適切に伝えていくことが求められます。
この前提として、フランチャイズ本部の経営方針やビジネスモデルについての深い理解が必要となるのです。
なお、フランチャイズ本部のSVが役割を果たすために理解すべきことについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
③経営者と対等な関係を気づくための資質
前述の通り、フランチャイズ本部スタッフは、加盟店の経営者を相手に仕事をすることが求められます。当該フランチャイズ事業に人生をかけた加盟店の経営者を相手にするのは並大抵のことではありません。中途半端な気持ちで加盟店の経営者と接してしまっては、信頼関係など構築できるはずがありません。加盟店経営者と向き合うフランチャイズ本部スタッフには、経営者と対等にわたり合うための相応の資質が求められるのです。
例えば、以下のような点が挙げられるでしょう。
加盟店経営者と本気で向き合う姿勢
チェーン全体や加盟店のためであれば、厳しいことでも率直に伝える覚悟
目の前に生じた問題は、自らの責任において解決しようとする姿勢
常に向上心を持ち、学ぼうとする姿勢
これらの資質は、一度研修等を実施したからといって身につくものではありません。会社の仕組みとして、繰り返し指導していくことが求められます。
なお、SVに求められる対話力について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
(2)フランチャイズ本部人材育成の考え方
このように、フランチャイズ本部の人材には、多様な知識やスキル、資質が求められます。このような知識やスキル、資質をはじめから兼ね備えている人材は極めて稀な存在であり、外部からの採用は実質的に不可能と考えた方がよいでしょう。このような人材を社内でいかに育成できるかが、フランチャイズ本部の競争力を大きく左右することになるのです。
フランチャイズ本部人材育成の方法に唯一無二の正解はありませんが、ただ研修を実施する、業務の経験を積む、等の考え方で身につくものではないことは明らかです。
このような人材を育成していく最大のポイントは、3つの要素「責任を果たすための知識×責任を全うするための経験×フィードバック」を、会社内の仕組みとして繰り返し回し続けていくことでしょう
3つの要素のうち、いずれか1つでも不足するものがあれば、人材育成の効果は見込めません。ただ研修を実施する、ただ現場で経験を積む、といった考え方ではなく、学んだ知識を現場で実践し、それを振り返って次につなげる、という至ってシンプルな流れを繰り返し繰り返し行っていくことが、優秀な人材を育てる唯一の道といえるでしょう。
まとめ
第7回では、フランチャイズ本部スタッフに求められる役割や育成方法を解説しました。
どんなに素晴らしい戦略や仕組みが作られていたとしても、実行する人に問題があれば、絵にかいた餅で終わってしまいます。最終的には、フランチャイズ本部の担当スタッフの資質や能力がフランチャイズ展開の成否を左右することになります。
フランチャイズ本部スタッフに求められる資質やスキルは多岐にわたるため、そう簡単に育つことはありません。焦らず、じっくりと、人材育成に取り組んできましょう。
最終回である第8回目は、現代におけるフランチャイズ本部立ち上げを成功させるためのポイントを解説します。
執筆者プロフィール
株式会社 常進パートナーズ 代表取締役 高木 悠
千葉県生まれ。立教大学経済学部卒。大手外食フランチャイズチェーンに入社後、店長、マネージャー、フランチャイズ担当等を歴任。15年以上にわたり外食・フランチャイズ業界に関わっており、店舗ビジネスや大手チェーン・フランチャイズ本部の実態を熟知している。
独立後は「店舗ビジネスを営む企業とそこで働く社員の社会的地位の向上」を実現すべく100社以上の企業支援に携わっており、支援先の中には2年間で売上274.6%UPを達成した企業や、創業後5年以内に30店舗展開を達成した企業があるなど、その実践的なコンサルティングには定評がある。
著書として「フランチャイズマニュアル作成ガイド(同友館 共著)」「飲食店「のれん分け・フランチャイズ化」ハンドブック(アニモ出版 共著)」がある。
経済産業大臣登録 中小企業診断士。
<シリーズ>
第1回:フランチャイズ展開をはじめる前に準備すべきことを知る
第2回:フランチャイズ展開する標準店舗モデルを確立する
第3回:加盟店に提供するフランチャイズパッケージを作り込む
第4回:本部が受け取る加盟金やロイヤリティを設定する
第5回:フランチャイズ契約書類を整備する
第6回:加盟店開発戦略を策定する
第7回:フランチャイズ本部のスタッフを育成する
第8回:フランチャイズ本部立ち上げを成功させるためのポイント
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