現代のフランチャイズシステムは、小売業・飲食業・サービス業など多様化が進んでいますが、いずれの業種においても、フランチャイズパッケージに基づいて加盟店指導を担当する“スーパーバイザー(以下、SV)”という役割が存在します。
SVの呼び方は、「コンサルタント」「店舗指導員」「オペレーションカウンセラー」「スーパーバイザー」「営業」等、フランチャイズ本部の経営方針やSVに求める役割等によって異なります。
一方、各社に共通していることは、“SVとは説得業である”ということです。
SVはあくまで加盟店指導を担当するフランチャイズ本部のスタッフです。加盟店に対する指示・命令ができる立場ではありません。
商売の主体者はあくまで加盟店にありますから、加盟店オーナーを“説得”して、納得させなければ物事は動きません。
この点が、SVという役割が難しい仕事であるといわれている理由でもあります。
今回は、SVが務めるべき“説得業”の内容とその役割を果たすためのポイントを紹介します。
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“SVの使命”と“フランチャイズ契約書の原理原則”のジレンマ
SVは、常に「フランチャイズ契約書」「フランチャイズマニュアル」に立ち返って加盟店に対する指導を行いますが、加盟店とよく議論になるのは、“互いの役割”についてです。
たいてい、クレーム処理、スタッフ教育、店作り(売場づくり)等から議論が始まります。
SVの使命は、“加盟店を自発的に課題解決できる経営者に育てること”です。
「SVは指導する立場、加盟店が実行する立場」が前提のビジネスです。
その点を意識して、加盟店と向き合う必要があります。
例えば、経営者として成熟していない加盟店オーナーは、「SVが自分の代わりに何でもやってくれるものと思っていることがよくあります。
この希望に合わせて、SVが加盟店オーナーの代わりに何でもやってあげてしまっては、加盟店に甘えが生まれ、何でもSVや本部に頼りだすことになります。
これでは、加盟店を自発的に課題解決できる経営者に育てることができません。
このようなケースでSVの使命を果たすためには、時には、甘え体質の加盟店を突き放す姿勢も必要となってくるのです。
一方、杓子定規に「フランチャイズ契約書」を振りかざすことも問題です。
契約の原則から考えれば、フランチャイズ契約書に基づいて加盟店に対して指示・命令することも可能ですが、今の時代、それだけで加盟店の行動を抑制できないことは、コンビニで発生した時短営業問題で実証されています。
フランチャイズ契約書に定められた内容を加盟店が守っていないからといっても、ただちにフランチャイズ契約書を振りかざすのではなく、なぜ、そのような決まりになっているのかを十分に説明するなど、加盟店が「フランチャイズ契約書」の原理原則を理解できるよう、誠実に対応していくことが求められるのです。
この“SVの使命”と“フランチャイズシステムの原理原則“とのバランスを取って加盟店を”説得“していくことが、SVが果たすべき役割であり、SVにとっては非常に難しい問題ともいえます。
なお、フランチャイズ契約締結の流れや作成のポイントについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
SVの役割を果たすために理解すべきこと
それでは、“SVの使命”と“FCシステムの原理原則“とのバランスを取って加盟店を”説得“していくためには、SVはどのようなことに留意すればよいのでしょうか。
この内容は多岐にわたりますが、弊社では以下の2点がより重要であると考えています。
加盟店のこだわり(力点)を理解する
SVに求められるスキルには、「新しい情報や知識・数値管理・分析力・仮説力・コミュニケーションスキル・雑談力・スタッフ教育」等、様々あります。一方、加盟店がSVの働きを評価する際にこれらすべてを見ているかというと、そういうわけではありません。
加盟店によって店舗運営のこだわり(力点)があり、その内容は加盟店毎に異なるものです。また、加盟店によってSVに求めていることが異なるケースや、相性の良し悪しも当然にあります。
場合によっては、SVの働きに対するクレームが入るケース、ひどい時には担当SVの交代を要求されるケースもあります。
その要求にあわせて、加盟店にあったSVに担当させるという考え方もありますが、そのような先に、安定したフランチャイズ本部運営が無いことは明らかでしょう。
ですから、SVはどの加盟店を担当しても高いパフォーマンスを発揮できるようにならなければなりません。
とはいえ、SVに求められるスキルのすべてを全SVが身につけることなど、実質的に不可能です。
その点、加盟店のこだわりを正しく理解し、そのこだわりにあわせた指導をおこなっていくことが、SVの役割を果たすうえで極めて重要といえます。
例えば、加盟店のこだわりが分かれる事例として“スタッフ教育”が挙げられます。
加盟店のスタッフの雇用主は加盟店であり、原則は、加盟店の責任において進めていただくこととなります。
しかしながら、加盟店の希望としては、大きく分けて以下の2パターンが存在します。
①SVにまかせたい(SVの力を借りてスタッフ教育を進めていきたい)
➁加盟店自らで行いたい(本部に口出しされたくない)
これが、加盟店による考え方やスタンスの違いです。
これに対して、フランチャイズ契約書の定め通り、画一的な対応をしているようでは、すべての加盟店と信頼関係を構築することなど不可能です。
ここは加盟店の考え方やスタンスによって、SVの指導スタンス変えることになります。
このような加盟店のこだわりを理解して、加盟店の“聞く耳“を確保できれば、その後の”説得“もスムーズなものになるでしょう。
加盟店の立場を把握し理解する
優秀なSVであればあるほど、加盟店に対して指導したいことが山ほどあるものです。数値管理の方法、本部方針の徹底度、オペレーション改善など、加盟店のために指導したいことが様々あることでしょう。
また、まじめなSVであればあるほど、「加盟店のため」を想って、幅広いテーマについて指導を行うこととなります。
ここで気を付けなければならないことは「加盟店のため」を想ってSVが指導した内容が、加盟店の立場からすると“押しつけ”と感じられてしまうケースがあることです。
加盟店にも、経営についての方針やスタンス、またはその時の状況など、様々な事情があります。加盟店の収益力を高めるために絶対にやった方がいいことであったとしても、加盟店の事情を踏まえると、今は優先順位が低い、ということはありえるでしょう。
SVは、この点を理解した上で加盟店と向き合う必要があります。いいかえれば、「加盟店のため」に加えて、「加盟店の立場」を踏まえたスタンスをとることといえます。
SVは、“客観的(第三者的)に加盟店を見る目”と、“加盟店の立場で課題を見る目”の両方を身に着ける必要があるのです。
加盟店の立場に立つということは、加盟店の課題を一緒に背負い、課題に対して当事者意識を持つことに繋がります。当事者意識は加盟店の心を掴みます。加盟店の家族構成や生活環境から、経営資源や資産の把握までできれば一人前でしょう。
加盟店の立場で同じ目線で課題解決の提案ができれば、その後の説得もスムーズに進はずです。まずは言いたい事を我慢して、加盟店の立場で、加盟店と向き合うことが大切といえるでしょう。
まとめ
このように、SVの役割から身に着けるべきポイントを確認してみると、いかにSVという仕事が難易度の高いものであるかがお分かりいただけるのではないかと思います。
ゆえに、SVのレベルの高低は、フランチャイズ本部の競争力に直結します。
フランチャイズ本部としては、どのような加盟店とも信頼関係を構築して、本部の目指す方向性に動かすことができるSVを一人でも多く育成していかなければなりません。
そのためにも、SV教育に相応の労力を費やしていくべきでしょう。
SVの業務内容や育成方法について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
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