多店舗展開を進めていこうと考えたとき、真っ先に考えるのが「直営店舗による展開」でしょう。
しかし、多店舗展開を進めていく手段は「直営店舗による展開」だけではありません。
その他の代表的な手段としては、「フランチャイズシステムを活用した展開」、「のれん分け制度を活用した展開」があります。
それぞれの手段にメリット・デメリットがあり、企業の経営方針やビジネスモデルによって採用すべき手段は変化します。
そのため、多店舗展開を進めていくにあたっては、それぞれの手段の特徴やメリット・デメリットを正しく理解し、最適な手段を選択することが大切です。
そこで、本記事では多店舗展開の代表的な手段である「直営店舗による展開」、「フランチャイズシステムを活用した展開」、「のれん分け制度を活用した展開」の3つにいて、特徴からメリット・デメリットまでを解説します。
なお、多店舗展開を成功させるために必要な5つの要件について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
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1.直営店舗による展開
直営店舗による展開は、最も基本的な多店舗展開の手段です。
企業が店舗投資をするとともに、自社の人員を配置して、店舗経営をする方法です。
(1)メリット
直営店舗による展開のメリットとしては次の2点があげられます。
①店舗マネジメントが比較的容易
直営展開方式の場合、会社と店長との関係は雇用関係となります。
会社は社員に対して指示・命令をすることができるため、加盟店に対して指示・命令権のないフランチャイズ展開方式、のれん分け展開方式と比較して店舗マネジメントを比較的容易に行うことができます。
②利益額が大きい
直営展開方式の場合、店舗で生まれた収益はすべて本部のものとなります。
そのため、売上や経費が同一条件の場合、加盟店と利益を分け合うフランチャイズ展開方式、のれん分け展開方式と比較して、本部の利益額が大きくなります。
(2)デメリット
直営店舗による展開のデメリットとしては次の2点があげられます。
①店舗投資負担が重たい
直営展開方式の場合、出店に必要な投資はすべて本部が負担しなければなりません。
店舗ビジネスは、初期投資を数年かけて回収していくため、直営展開方式の場合、店舗展開スピードが速いと、借入金が膨らみ、財務体質が悪化することは避けられません。
そのため、フランチャイズ展開方式のように、急速な多店舗展開を実現することは困難です。
②固定費が多く発生する
直営展開方式の場合、店舗の収益責任はすべて本部が負うことになります。
仮に急激な環境変化によって売上が急減したとしても、本部は店舗の家賃や人件費を自らの責任において負担しなければなりません。
したがって、加盟店とリスクを分け合うフランチャイズ展開方式やのれん分け展開方式と比較して、環境変化への適応力は低下します。
2.フランチャイズシステムを活用した展開
フランチャイズシステムとは、本部が開発した成功する仕組みを加盟者に提供して事業運営することを認める一方、その対価として加盟金やロイヤリティを徴収する仕組みです。
なお、フランチャイズシステムについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
(1)メリット
フランチャイズシステムを活用した展開のメリットとしては次の3点があげられます。
①スピーディーな多店舗展開が可能
フランチャイズ展開方式では、加盟者の経営資源(ヒト、カネ)を活用して事業展開することができます。
店舗開業に必要な初期投資や店舗で働く社員の採用・育成を加盟者にまかせることができるため、スピーディーに全国展開を進めることも可能です。
②高い利益率を実現できる
フランチャイズ展開方式では、本部は加盟者から加盟金やロイヤリティ収入を得ることになります。
加盟金やロイヤリティ収入の利益率は非常に高いため、直営展開方式と比較すると、高い利益率を実現することが可能です。
③環境変化への対応力が高い
フランチャイズ展開方式では、加盟店舗の収益責任は加盟者が負うことになります。
そのため、急激な環境変化によって売上が急減したとしても、加盟店舗についていえば、本部は家賃や人件費等の固定費を負担する必要がありません。
本部と加盟店とでリスクを分け合う分、直営展開方式と比較すると、環境変化への適応力が高くなります。
(2)デメリット
フランチャイズシステムを活用した展開のデメリットとしては次の3点があげられます。
①店舗マネジメントの難易度が比較的高い
フランチャイズ展開方式では、本部と信頼関係の無い第三者が店舗経営者もしくは店長となります。
本部と理念の共有が難しい上、本部には指示命令権が無いため、加盟店をマネジメントする難易度が直営展開方式と比較して高くなります。
また、基本的にフランチャイズ事業の素人が加盟者となるため、店舗運営品質を高い水準で維持することが難しいです。
②加盟店のミスがブランドイメージ低下に繋がる
フランチャイズ展開方式では、加盟店は本部の看板を掲げて営業することになります。
本部は加盟店側にマニュアルを展開させていますが、その裁量は各加盟店によるものなので、サービスや提供内容に差が出てきてしまう場合があります。
加盟店が問題行動を起こした際には、本部の看板を掲げて営業していることから、本部のブランドイメージが低下する恐れもあります。
③様々な仕組み整備が必要
フランチャイズ展開方式では、フランチャイズ事業の素人であり、かつ本部と信頼関係の無い第三者を加盟対象とします。
そのため、加盟希望者との理念共有や早期戦力化のための教育研修システム、素人にもわかりやすいマニュアル、信頼できる加盟希望者を見極めるシステムなど、直営展開方式では必要のない仕組みを整備する必要があります。
これら仕組みの整備には手間と時間がかかるうえ、フランチャイズコンサルタントに依頼する場合には、その分の費用も必要になります。
なお、フランチャイズ本部構築の手順や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
3.のれん分け制度を活用した展開
のれん分けとは、会社で働く社員に対して、フランチャイズ加盟を認める制度であり、フランチャイズシステムの一種です。
基本的な仕組みはフランチャイズ展開方式と同じですが、「加盟者が従業員」という点が異なります。
なお、のれん分けとフランチャイズの違いについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
(1)メリット
のれん分けシステムを活用した展開のメリットとしては次の4点があげられます。
①店舗マネジメントが比較的容易
本部と信頼関係のある元社員が店舗経営者もしくは店長となるため、フランチャイズでありながらも理念や経営方針の共有がしやすい特徴があります。
また、直営店で経験を積んだ人材が店舗経営者もしくは店長となるため、店舗運営品質を高い水準で維持しやすいです。
そのため、フランチャイズ展開方式と同様、本部は加盟者に対して指揮命令権はないものの、直営展開方式と同様、店舗マネジメントは比較的容易に行うことができます。
②高い利益率を実現できる
のれん分け展開方式では、本部は独立者から加盟金やロイヤリティ収入を得ることになります。
加盟金やロイヤリティ収入の利益率は非常に高いため、直営展開方式と比較すると、高い利益率を実現することが可能です。
③環境変化への対応力が高い
のれん分け展開方式では、加盟店舗の収益責任は独立者が負うことになります。
そのため、急激な環境変化によって売上が急減したとしても、のれん分け店舗についていえば、本部は家賃や人件費等の固定費を負担する必要がありません。
本部と独立者とでリスクを分け合う分、直営展開方式と比較すると、環境変化への適応力が高くなります。
④働き手のモチベーションを高めることができる
のれん分け展開方式では、社員に対して「独立する」という選択肢を提示することによって社員のモチベーションが高まる効果が期待できます。
また、のれん分け制度を整備することで、働き手からみた「働く場としての魅力」が高まり、人材獲得競争を優位に戦うことができます。
(2)デメリット
のれん分け展開方式は、直営展開方式とフランチャイズ展開方式の中間的な立ち位置にあり、フランチャイズ展開方式のメリットを享受しつつ、そのデメリットも克服できるいいとこ取りの制度です。
のれん分け展開方式に大きなデメリットはありませんが、開業資金を独自に用意可能な独立希望者を輩出する難易度が高いことから、フランチャイズ展開方式のような急速な多店舗展開を実現することは困難です。
この点がのれん分け展開方式の唯一のデメリットといえます。
なお、のれん分け制度のつくり方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
まとめ
以上、多店舗展開の代表的な手段である「直営店舗による展開」、「フランチャイズシステムを活用した展開」、「のれん分け制度を活用した展開」の3つにいて、特徴からメリット・デメリットまでをご紹介しました。
それぞれの手段にメリット・デメリットがあり、企業の経営方針やビジネスモデルによって採用すべき手段は変化します。
そのため、多店舗展開を進めていくにあたっては、それぞれの手段の特徴やメリット・デメリットを正しく理解し、最適な手段を選択することが大切です。
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