本部のことが信頼できなくなりました。
利益は一応出ていますが、気持ち的にこれ以上関係を継続していくのは難しいです。
なので、契約期間満了にて契約を解除し、以降は自分で新しいお店を立ち上げたいと考えています。
契約書に厳しい縛りがあるので、進め方をご相談できないでしょうか。
これは、先日弊社にご相談に訪れた
のれん分け制度で独立を果たした飲食店経営者からのご相談です。
弊社では、フランチャイズシステムやのれん分け制度を導入する本部企業のサポートをしていることもあり、FC加盟者やのれん分け制度による独立者からのご相談をお受けすることもあります。
そのようなときには、本部企業、加盟者(独立者)のどちらの側にもよることなく、中立的な専門家の立場としてご相談に対応させていただいています。
なお、のれん分け制度つくりや成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
コンテンツ
(1)「裁判に負けないこと=のれん分けの成功」ではない
今回のケースでは、ご相談者のお話をお聞きしている限り、本部企業のスタンスは、ご相談者様が主張されるほど非常識なことや不誠実なことをやっているような印象は受けませんでした。
本部の立場から見れば、独立者から過剰なクレームをつけられているような点が散見される状態です。
おそらく、訴訟になったとすれば、独立者が希望する条件を勝ち取ることは難しいことでしょう。
その点から考えれば、当該本部ののれん分け制度の運用は適切であったと考えることもできるかもしれません。
とはいえ、今回のような事態は、のれん分け制度を運用する本部として、絶対に避けたいものであることは間違いありません。
その意味で、この本部企業ののれん分け制度の運用方法は、適切ではなかったと結論付けるほかないでしょう。
この点は、のれん分け制度を運用する際に意識していただきたい点です。
フランチャイズシステムやのれん分け制度の導入を目指す経営者から
「絶対に訴訟に負けないフランチャイズシステムや契約書をつくってもらえますか?」
といったご要望をいただくことがあります。
このような要望を出される経営者は、フランチャイズやのれん分けシステムへの考え方について、根本的に誤った認識をお持ちであるように感じます。
確かに、訴訟に負けないフランチャイズシステムや契約書を作ることが本部にとって重要であることは間違いありません。
しかしながら、“訴訟に負けないこと”がフランチャイズシステムやのれん分け制度導入の目的ではありません。
そもそものれん分け制度では、信頼関係のある従業員に恩返しの意味も込めて独立を応援し、お互いの幸せの実現に向けた長期的なパートナーシップを構築して事業を展開していく仕組みです。
このような関係の中で、信頼関係が崩壊し、訴訟にまで発展してしまったとしたら、仮に訴訟で本部が勝ったとしても、果たして当初の目的が達成されたといえるでしょうか。
のれん分け制度の導入目的を考えれば、そうでないことは明らかです。
FCシステムやのれん分け制度の導入を目指す企業や経営者が本来目的とすることは、本部と加盟者・独立者がWIN-WINの関係を実現することにあるはずです。
裁判に負けないフランチャイズシステムや契約書は、目的とはなりえない点を心得るべきでしょう。
(2)独立者との信頼関係構築に失敗している本部に共通する点
それでは、「本部と独立者がWIN-WINの関係を実現する」というのれん分け制度の目的を実現する上では何がポイントとなるのでしょうか。
この点、弊社が考える答えはシンプルで、
本部企業と独立者間の信頼関係を長期にわたり維持し続けること
であると考えます。
なぜならば、盤石な信頼関係さえ維持できていれば、多少フランチャイズシステムや契約書の完成度が低かったとしても、お互いの信頼関係をベースに諸問題に向き合い、解決していくことができるからです。
この信頼関係構築の方法は本部によって千差万別ですが、本部として絶対に押さえておくべき点があることも事実です。
以下は、弊社がこれまでかかわってきた本部企業の中で、独立者との信頼関係構築に失敗している本部に共通する点となります。
①のれん分け制度の仕組みが対等な関係になっていない
1つめの目のポイントは、本部と独立者が対等な関係となる仕組みを構築することです。
のれん分けとは、本部と独立者の信頼関係の上に成り立っている仕組みですからこれは当然のことといえるでしょう。
ところが、のれん分け制度で上手くいっていない企業では、このバランスが崩れてしまっている実態があります。
本部の利益を優先しすぎるあまり、独立者がリスクに見合う利益を得られなかったり、本部から過剰な制約を受けるのであれば、本部はいずれ独立者の信頼を失うことになります。
一方、独立者の利益を優先しすぎるあまり本部の利益が減ってしまったり、独立者に裁量を認めすぎて店舗間のサービス品質にばらつきがでるようなこととなれば、そのような制度が継続するはずがありません。
したがって、制度設計にあたっては“本部と独立者の対等な関係性を実現すること”を第一の意思決定基準とするべきでしょう。
特に、のれん分け制度を導入しようとする経営者には、従業員想いの方が多く、従業員に有利な制度設計をしようとする傾向があるように感じます。
このような“想い”は、一時的には独立者のためになるかもしれませんが、長期的には両者の信頼関係にひずみを生み、結果として本部・独立者双方を不幸せにする可能性があることを認識する必要があるでしょう。
②のれん分け契約上のお互いの権利・義務等についての情報共有が不十分
独立者から本部についての相談を受ける際、共通してしている点として“契約内容についての理解が不足している”ということが挙げられます。
相談をいただいた事項について、契約書で事前に合意しているにもかかわらず、「そんなことは聞いていなかった」等とお話になる独立者が多いのです。
これは、ある意味独立者側の問題とも言えますが、経営者としての経験がない方に数十条に渡る契約書を完全に理解してもらうことは不可能と考えるのが自然です。
ですから、契約書の内容を十分に説明することはもちろんのことですが、本部にはお互いの権利と義務等の重要事項がシンプルに伝わるような工夫をすることが求められます。
なお、のれん分け契約書の作成方法について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
特に、ロイヤルティを徴収する場合には、何の対価としてそれらを支払っていただくかを十分に確認することが重要です。
弊社では、紙1枚で本部が提供するサービスとその対価を明示することを推奨しています。
なぜかというと、信頼関係が破綻するきっかけは、ロイヤルティ等の金銭的負担に対する不信感から始まることが多いからです。
本部に支払っているロイヤルティがどのようなサービスに対する対価であるのかを独立者が正しく認識していなければ、独立当初はよかったとしても、時が経つにつれてロイヤルティを支払いたくなることは自然なことでしょう。
裏を返せば、何の対価としてロイヤルティを支払っているのかを独立者が正しく認識し、契約を締結していれば、本部がしっかりとサービス提供している限り、その点についての不信感は生まれにくくなるのです。
なお、加盟金やロイヤリティの考え方について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
③のれん分け後の定期的なコミュニケーションがなされていない
本部と独立者の関係が上手くいっていないケースでは、のれん分けによる独立後に、本部と独立者間で定期的なコミュニケーション機会が存在しないことも特徴の一つといえます。
本部経営者の考えとしては、「信頼できる元従業員に任さているのだから大丈夫だろう」との考えがあるようですが、そのような考え方は、ことのれん分け制度の運用においては避けるべきものでしょう。
その理由は簡単で、たとえ今信頼関係が十分であったとしても、その信頼関係が未来永劫続いていく根拠は存在しないからです。
むしろ、これまでの接し方を続けていくからこそ、現在の信頼関係が続いていくと考える方が自然です。
ですから、のれん分けによる独立後は、多少接点が減るとしても、できる限り従来通りの関与方法を維持していくことが信頼関係持続のポイントとなるのです。
弊社がのれん分け制度の構築をサポートさせていただく際には、定期的なコミュニケーション機会として、本部による定期的な経営指導の実施、本部会議への参加等、最低でも月1回以上は本部と独立者がコミュニケーションを取れるよう、明確な規則を定めることを推奨しています。
これを実行するのは、本部側にも一定の覚悟が求められますが、その覚悟が持てないのであれば、のれん分け制度は導入しない方がよいでしょう。
④のれん分け後の経営的側面の指導が不十分
のれん分け制度で独立を果たした従業員は、本部から雇われている存在から、独立した経営者に立場が変わることとなります。
経営者となると、以降は経営について何が起きようともすべて自己責任となります。
のれん分けによる独立者には“どのようなことが起きようとも自らの責任で解決する”という強い覚悟が求められることになります。
しかしながら、本部と独立者の関係性が上手くいっていないケースでは、独立者にその覚悟が不足していることが多い印象を受けます。
これまで雇われの身として本部に守られていた人材ですから、独立と同時に経営者としての覚悟を持つことは難しいでしょう。
ですから、本部としては、独立者が経営者としての覚悟を持つようサポートをしていくことが求められます。
のれん分け制度を上手に展開している企業では、独立前の段階で、経営者としての自覚が芽生えるよう十分な指導を行っていることが多いです。
例えば、経営者塾のようなものを開催し、合宿形式で経営者に必要な知識と心構えを、経営者自らが講師となってみっちりと指導をしている企業もあります。
これはあくまで一例ですが、本部としては、独立者の資質に頼ることなく、一人前の経営者として育て上げたうえで独立をさせる覚悟が求められているものといえます。
なお、のれん分け制度における経営指導について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
まとめ
以上、今回はのれん分け制度で失敗する本部に共通する点をご紹介しました。
本愛用は、弊社の経験上、本部と独立者間の信頼関係を維持していくために絶対に押さえておくべきポイントとなります。
是非、上記を参考に、本部と独立者のWIN-WINの関係を実現するのれん分け制度を築き上げていただければと思います。
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