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のれん分け契約書作成時の留意点。競業避止、顧客情報の帰属、違約金は必須

「これからのれん分け契約書を作成します。どのような点に注意すればよいでしょうか」

これは、先日弊社ののれん分け制度構築セミナーにご参加いただいた美容室チェーンを営む経営者からいただいたご相談です。

のれん分け制度はフランチャイズシステムの一種です。
フランチャイズシステムは契約ビジネスであり、本部と加盟店の権利と義務を定めた契約書の存在は、その根幹をなす存在です。

なお、のれん分けとフランチャイズの違いについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

制度構築前に絶対知っておきたい“のれん分けとフランチャイズの違い”

のれん分け制度においても、のれん分け契約書は制度の根幹ともいえる重要な役割を果たします。
万全な契約書があるからといってのれん分けが成功する訳ではありませんが、契約書がいい加減なものであれば、のれん分けがうまくいかない可能性は格段に高まることになります。

ところが、すでにのれん分け制度を導入している企業の契約書を拝見すると、驚くほど内容が薄かったり、また、絶対に盛り込んでおくべき事項が盛り込まれていない契約書が出てくることも珍しいことではありません。

このような事態が生じる原因は、のれん分け契約書の果たす役割や重要性を経営者が認識していないことといえるでしょう。

そこで、今回はのれん分け契約書の重要性及び作成時の留意点をご紹介します。

(1)のれん分け契約書の重要性

のれん分け制度による独立後は、本部と独立者との関係は、雇用関係から対等な事業者間の関係に変化します。
具体的には、本部と独立者とは各々が独立した事業体となり、基本的には契約書に規定されている内容に基づいて各々の権利と義務を履行していく関係性となります。

雇用関係とは異なり、独立者に対して本部が指揮命令を行う権利はなくなりますので、原則としては契約書に記載のない事項を独立者に対して求めることはできなくなります。
そのため、本部として独立者に遵守してほしい事項は、すべて契約書に明記しておく必要があります。
これが、のれん分け契約書(≒フランチャイズ契約書)が“ビジネスモデルのすべて”などといわれるゆえんでもあります。

もちろん、のれん分け制度の場合、すでに一定の信頼関係が構築されている元従業員との関係性となりますので、契約書に規定されていないことでも信頼関係をベースに事業展開していけるケースがあることも事実です。

ただし、現在信頼関係があるからといってその信頼関係が未来永劫維持できるわけではありません。
むしろ、時間の経過とともに信頼関係は薄まっていくと考える方が自然でしょう。

ですから、当社としては、本部と独立者との信頼関係を前提として安易な制度設計をおこなうことは避けるべきことと考えています。
実際、のれん分け制度によるトラブルは、ほぼ100%、当初の信頼関係が失われてきたことで勃発しています。
信頼関係があれば、トラブルになる前に事前の話し合いなどで解決できるはずです。

いかに信頼のおける元従業員に対するのれん分けであったとしても、のれん分け契約書は後々トラブルが生じぬよう、または発生してもいいよう、細心の注意を払って作成しておくべきでしょう。

なお、のれん分け制度で生じるトラブルの回避方法を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

のれん分け制度で失敗する本部に共通する点とは

(2)のれん分け契約書作成時の留意点

以上の通り、のれん分け制度の導入・運用に当たっては完成度の高いのれん分け契約書を作成することが大切です。
契約書を作成する際のポイントは様々ありますが、最低でも以下を抑えた計画書の作成が望まれるでしょう。

①ビジネスモデルやフランチャイズパッケージを踏まえた内容とすること

前述の通り、本部として独立者や加盟者に遵守してほしい事項はすべて契約書に明記しておく必要があります。
すなわち、あるべきのれん分け契約書とは、当該本部のビジネスモデルやフランチャイズパッケージが集約されているものといえます。

逆に、ビジネスモデルやフランチャイズパッケージの内容が反映されていない契約書は、本部として独立者に遵守してほしい事項が曖昧であったり、または漏れがあったりします。
このような契約書では、仮に独立者の経営がうまくいっていない場合などにトラブルに発展する可能性が高くなります。

例えば、のれん分け契約書に定められる事項の一つに「販売促進活動」があります。
フランチャイズシステムでは、チェーンとしての統一性を維持することを目的に、独立者による独自の販売促進活動を禁止するケースが多いですが、本部によっては、独立者の主体的な活動を促すことを目的に、一定の範囲内で販売促進活動を認めるような事例もあります。
この場合、販売促進活動を認める範囲と認めない範囲を契約書に明記しておく必要があります。

このように販売促進一つとっても、本部の考えやビジネスモデル、フランチャイズパッケージの内容によって、定められる事項が大きく変化します。

完成度の高い契約書とは、すべての条項が「本部としてどうあるべきか」という点から詳細な規定が定められています。
このような契約書であれば、本部や独立者の義務が明確となりますから、後からトラブルになるリスクを低減することができます。

インターネットで公開されている、または販売されているような契約書をそのまま使用している企業の多くは、このビジネスモデル、フランチャイズパッケージの反映が不十分なケースが多いようです。
また、法律の専門家に依頼しているケースであっても、当該専門家のビジネスモデルの理解が不十分な場合には、同様の問題が生じる可能性がある点には注意が必要です。

②本部と独立者の対等な関係性を実現すること

のれん分け制度でトラブルを予防しようと考えたときに、
「何か問題が発生しても本部が裁判で負けない契約書をつくろう」
と考えられるかもしれません。

たしかに、のれん分け契約書で本部が有利な立場となるよう独立者に厳しい制約を課すことも考えられれますが、過度な制約は、むしろ余計なトラブルを生むリスクがあります。

その最たる例が、最近発生したコンビニフランチャイズ本部の24時間営業問題です。
フランチャイズ契約書を根拠として、加盟店に対して24時間営業を求めるフランチャイズ本部の姿勢は、フランチャイズを専門とする弊社からみても至極まっとうな対応です。
にもかかわらず、24時間営業問題はあれだけの大騒動となり、コンビニ本部は世論からも批判を受けることとなりました。

コンビニ本部が窮地に立たされた理由にはいくつかのポイントがありますが、その大きな要因の一つに、フランチャイズ契約書をたてに強制的に加盟店を従わせようとしたフランチャイズ本部の姿勢があるのではないかと感じます。

フランチャイズものれん分けも、成功の本質的な要因は、本部と独立者・加盟者の信頼関係です。
一方的に本部有利な契約書を作る行為は、この信頼関係を破壊に誘います。

このようなことにならないよう、のれん分け契約書作成時も、本部と独立者が対等な関係となることを念頭に、作り込んでおくべきといえます。

③ノウハウや顧客基盤を保護するための規定を設けること

仮に本部と独立者間で何らかの問題が生じた場合、本部として絶対に守りたいものは、ノウハウと顧客基盤です。

これらが流出するような事態になれば、本部は大きな損害を受けることとなりますから、ノウハウや顧客基盤を保護するための規定は絶対に盛り込んでおくべきでしょう。

代表的な規定としては、「競業避止義務規定」があげられます。
これは、独立者に対して契約期間中または契約期間終了後も一定期間は同種又は類似の事業を行うことを禁止する規定です。

競業避止義務規定がなければ、契約期間中や契約終了後、独立者は本部のノウハウや顧客基盤を用いて、自分の事業を営むことができることになってしまいます。
仮に、本部と独立者間でトラブルが発生すれば、高い確率で、独立者は独自の事業を開始することでしょう。

そのようなこととなれば、本部の被害は甚大です。
ですから、そのようなことをあらかじめ防止できるよう、のれん分け契約書には競業避止義務規定を盛り込んでおかなければならないのです。

そのほかにも、秘密保持義務規定、顧客情報の帰属・取り扱い規定など、本部のノウハウや顧客基盤を保護する規定を盛り込んでおくべきでしょう。

なお、のれん分け契約書に盛り込むべき具体的な内容を知りたい方はこちらをご覧ください。

のれん分け契約書に盛り込んでおきたい条項例。絶対に入れなければならない8条項

まとめ

以上、のれん分け契約書を作成する際の留意点をご紹介しました。

これ以外にも留意すべき点は山ほどありますが、今回ご紹介した内容は、最低限、押さえておかなければなりません。

前にもご紹介した通り、しっかりとしたのれん分け契約書をつくることは、のれん分け制度の成功要因にはなりえませんが、これにより不要なトラブルを予防できることは疑いの余地がありません。

のれん分け制度の導入で成功したいと考えるのであれば、時間をかけて、自社に最適化されたのれん分け契約書を用意するべきでしょう。

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