多店舗展開

支援型リーダーシップに取り組むための心構えとは

「社員の様子があまり元気ないようで心配なんです・・・。」
これは先日お会いした小売業の経営者の方の言葉です。
以前は会社の雰囲気で特に気になるところはなかったようですが、この数か月で何となく変化を感じると言うのです。

具体的には、「私に対する発言が減った」、「行動が消極的になったような気がする」、「顔色をうかがうような感じ」といったことがあったようです。
そこで、ご自身に変化がなかったか伺ったところ、少し考えながら、「そういえば、コロナウィルスの問題が発生してから、売上げが減少し、何とかしなければいけいない思いから、言動が厳しくなり過ぎていたかもしれない」とのことでした。

そこで改めて、現代を取り巻く社会環境の変化について、この経営者と共有しました。
日本は少子高齢化に直面し、大きな経済成長が望めない成熟した社会になっています。
このようななか、IT技術の発展などにより、どこにいても様々な情報に接することができると同時に、情報があふれ、コントロールが難しくなっています。

さらに、コロナ禍で現在は停滞していますが、人やモノの動きも含めたグローバル化や、個人の権利や個の尊重などの人権意識の高まり、多様性を受け入れる意識の高まりなどが起こっています。
このような社会の変化は、一時的ではなく、今後も続くものであり、まさに、企業経営にとって、不確実性の時代が到来しました。
そこで今回は、この不確実性の高まった時代に必要なリーダーシップについて考察します。

なお、多店舗展開を考える上で経営者に必要な取り組みについて詳しく知りたい方は、こちらのコラムをあわせてご覧ください。

3店舗の壁で躓く企業と超えていく企業の違い

支援型リーダーシップの必要性と特徴

このような社会環境において、経営に求められることは、多様な意見を受け入れ、試行錯誤しながら、正解を見つけていく取り組みです。
これには、従来のトップダウンで目標を達成する支配型リーダーシップよりも、支援型リーダーシップが適しています。
支援型リーダーシップとは、組織の目指すビジョンや目標を示した上で、部下の能力を肯定的に認め、信頼関係のもとに、部下の成長を支援することにより、組織目標を達成しようとするリーダーシップスタイル です。

そして、その特徴は以下の通りです。

特徴

解説

部下を支援することで組織の目標を達成する支援型リーダーシップの最大の特徴であり、支配型リーダーシップとの大きな違い
目標達成後の部下の満足度が高くなる支援型リーダーシップの最大の効果
部下を信頼感で動かす信頼があってこそ、部下の自発性が高まる
上司と部下とコミュニケーションは、双方向かつ回数を意識する風通しがよくなることを意味する
リーダーの成長は、部下からの影響によってもたらされる部下を成長させることで、上司も同時に成長する
成果の評価について、部下の評価を重視する部下が成果を出せるように支援したことや成長させたことが、上司の評価と考える
リーダーはPDCA管理(*)の管理サイクルを迅速に回すことに注力するたとえ取り組みがうまくいかなくても、影響を最小限にして、次の取り組みに活かす
リーダーは、失敗を受け入れる用意がある自らの考え方や取り組みに固執することなく、失敗から学ぶ姿勢を持っている

同時に、多様な意見を尊重する、試してみる、失敗を受け入れる、レビューするといったことに寛容な組織風土を醸成することに努める

(*:PDCA管理とは、Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善の一連の取り組みのこと)

支援型リーダーシップに取り組むための心構えとは

特徴を見ると、支援型リーダーシップがいかに個や自主性を尊重する現代の社会環境に適しているかがわかっていただけると思います。
それでは、このようなリーダーシップはどのように実践すればよいのでしょうか?

これまで、会社の立ち上げから軌道に乗せるまで、多くの中小企業の経営者は、自ら先頭に立って、会社を引っ張ってきたはずです。
これは、ある意味支配型のリーダーシップです。

それにもかかわらず、これまでの行動と異なるような行動を簡単にできるでしょうか?
答えはNoです。

しかし、これからのポストコロナの社会において、会社を心から成長させたいと考えるのであれば、支援型リーダーシップへの取り組みは必須と言えるでしょう。
そこで、筆者は、経営者が以下のような心構えを持つことを勧めています。

まず自社が「どのように社会に貢献したいか」を考えます。
会社は売上げや利益を生み出すことを求められますが、そのためには、社会の課題の解決が必要です。社会の課題とは、環境や人々の生活など、人に直接的、もしくは、間接的にかかわるものです。

そのために、不確実性の時代において、従来のような自らがトップダウンで経営する支配型リーダーシップには限界があると考えます。
これまで誰もが経験したことがない社会が到来していることを受け入れます。

次に、自分には知らないことがあると考えます。
具体的には、いくら経験を積み知識を吸収しても、自分一人では、わからないことがある、想定外のことが起こる、人々の意見は異なると考えることです。
自分がすべてを知っているという思い込みをなくします。

そして謙虚な姿勢を心掛けます。
自分の考えや行動は、間違うことがあり、つねに正解を出せるとは限らないと考えます。
謙虚な姿勢とは、おどおどしたり、自信をなくしたりすることではありません。
自分の考えは持ちながらも、相手の考えを受け止め、理解する姿勢を示すことです。

最後に、人の意見に積極的に耳を傾け、理解しようとします。
そのために、人材の多様性に目を向けます。
また、会社のため、自分のためにアドバイスしてくれる人に対して、その人の年齢や地位、性別、経験などにかかわらず、感謝する気持ちを持ちます。

結果として、自分の不完全さを受け入れ、自分を大きく見せようとはしません。
これまで多くの経営者は、経営者として、悩んだり、迷ったりする姿を見せることを拒んできました。
しかし、威厳を誇示するかのように振る舞う必要はなく、ありのままに振る舞うことです。

支援型リーダーを実践できるようになると、部下からの信頼が高まり、必然とリーダーとしての人格が表れるものです。
そして、これらの心構えを持ちながら、部下をどう支援するか考えることで、支援型リーダーシップの行動に結びつくようになります。

このように、支援型リーダーシップを発揮するためには、心構えから見直す必要があります。
これは簡単なことではないかもしれません。

しかし、現在直面している不確実性の時代は、これからも日本が直面し続ける社会です。
また、人権意識の高まりや人材尊重の流れは後戻りすることはないでしょう。

このようななか、経営者が、会社のビジョンや自身の経営スタイルを見つめ直し、支援型リーダーシップスタイルを活用して、社員を自発的に行動できるように成長させることが必要とされているのです。社員の成長が会社の成長や発展とともにあることで、社員自身も成長をより実感でき、仕事に対する満足度が増して、社員と会社の両者に利益をもたらすことになります。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

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