多店舗展開

人材成長の壁を乗り越える方法とは

人手不足が将来にわたり見込まれるなか、他社と差別化しながら会社を成長させるために、自発的に考え行動できる、いわゆる自発的人材を育成しようとお考えの経営者の方が増えています。

先日お会いした飲食店の経営者は、店長クラスの人材を求人募集し、時間と手間をかけましたが、なかなか入社まで結びつきませんでした。
そして、やっと入社した人材が、教育もしたのに本人の都合で辞めていってしまったそうです。

そこで、筆者からのアドバイスにより、社内の有望な人材を店長に育成しようと方針転換し、部下の育成を始めました。
その部下は、現在の接客の主任を当社で1年、他社で2年務めたキャリアがありました。

ところが、その店舗では、店長育成の取り組みをしてこなかったため、なかなか期待通りに成長しませんでした。
そこで、筆者から、もしかすると「その部下は”成長ステージの壁”に当たっているのではないか?」とお話ししました。
今回は人材成長の壁の乗り越え方について考察します。

なお、多店舗展開を加速するための人材育成システムについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。

多店舗展開を加速する人材育成システムとは

(1)人材成長にはステージがある

人材は誰でも成長の可能性を持っています。
入社当時は社会人として新人で、社会人としてのマナーや作業の内容など、何もわからなかった社員が、数年経って立派に主任や店長として、活躍することがあります。

成長には、本人が成長したいという向上心、会社や上司による指導、働く環境の3つが大きく作用します。
そのため、これらがうまくかみ合わないと、会社の期待通りに成長しませんし、本人も歯がゆい思いをしてしまいます。

人材育成の際、理解しておきたいのは、人材は一本の直線のようには成長しないということです。
成長には社員自身による試行錯誤の繰り返しが必要であり、成果が表れるのには一定の時間がかかるからです。

成長のイメージは階段状です。
また、会社が求める役割も階段状です。

会社はたいてい社員が1つ上のランクの職務をできるようになることを望みます。
ステップアップです。
このことから、人材成長には、ステージがあると考えられます。

具体的な成長のステージは、以下の通りです。

・新人:作業指導を受けながら業務を遂行(入社1年目)

・スタッフ:決められた業務を1人で遂行(入社2~3年目程度)

・主任・チーフ:担当業務範囲において指導的立場

・店長:舗内をまとめ、店舗経営をする。マネージャー・管理職

・エリアマネジメント・経営陣:会社全体の経営戦略を担う。経営者

このため、社員も会社もステージ変化を意識して、人材育成に臨むことが必要です。
次のステージ進むには、乗り越えるべき壁があるのです。

(2)人材成長ステージにおける問題と対応策

このステージの違いを意識しないで業務を続けるとどのような問題が起こるでしょうか?
例えば、スタッフが主任クラスを目指すにあたっては、以下のようなことが考えられます。

・部下が自分がよいと考えている行動をするが、それが他の社員や他の業務にどのように影響するのか考えが及ばない。
・先輩社員として新人のメンター(お世話係)を期待されても、新人の行動にまで配慮が及ばない。
・指示待ちのままで、自分で解決しようとしない。

このような問題が生じるのは、部下の仕事に対する経験や考え方、性格、これまでの周囲とのかかわりなどさまざまな要素が関係していると思われますが、それらを整理すると、次の3つの背景に分類できそうです。

これらは、どの人材成長ステージにおいても当てはまりうる原因です。
そこで、期待通りに成長しないと考えられる背景を意識して、問題を解決していきます。

①期待されている役割に気づいていない

期待が大きくなるということは、任される業務の範囲が広がります。
そのことに気がつかず、従来通り自分本位の仕事の仕方をすると、他の社員の業務を混乱させたり、十分な成果が出ない場合があります。

このような問題が起こる原因の大半は、期待される役割が明確にされていない、そしてそれが部下に伝えられていないことのようです。
上司は期待する役割を明示して、それを伝え、役割に対して部下の行動はどうだったのか、どうすべきなのかPDCA管理サイクル(計画⇒実行⇒評価⇒改善)を回すことが解決につながります。

②期待されている役割を担いたくない

また、新たな業務や責任を担いたくないと考える場合もあるでしょう。
この場合は、日頃の業務に対する感謝を伝えるとともに、期待を述べます。

具体的には、上司は部下が真摯に仕事に取り組んでいる姿勢を言葉で表すことで、現在の部下の行動を承認します。
そして、この先10年程度の社内キャリアの見通しを、職務や職位、モデル報酬などと一緒に説明するのです。

新たな業務や責任だけを担わせるのではなく、会社の主要メンバーとして報いる気持ちが上司や経営側にあることを、言葉や姿勢で部下へ伝えることが大切です。

③期待されている役割を果たすことができない

部下が期待される役割をわかっていても行動できない場合は、原因を明確にします。

達成度や完成度が不十分であれば、一定期間OJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)をしたり、社外の研修などに参加させたり、必要なスキルを高める支援をします。
課題に取り組む時間がないようであれば、業務配分などを見直し、部下が課題に集中できる環境を整えます。

(3)人材成長ステージを意識した人材育成をする

このように、部下がなかなか育たない背景には、理由があるはずです。
部下の伸び悩みという課題に対して、漠然と対応したり、部下任せにしたり、個性の問題にしていては、一向に解決しません。

課題は人それぞれにあるはずですが、それらについて、上記の3つの視点から、具体的に原因を探り、解決策を施すことで、部下の成長を手助けすることができます。

人材成長には、求める役割ごとにステージが存在するのです。
ステージ変化を意識することで、その前に立ちはだかる壁を、上司が部下と一体になって乗り越えていくことができるでしょう。

壁を乗り越えることは容易なことではないかもしれませんが、だからこそ、部下が成長を遂げれば、部下との信頼感が増し、部下の会社に対する帰属意識もますます高まります。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

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