先日、のれん分け制度を構築した経営者から「そこまで考えて社員にのれん分けを勧めることが必要なのでしょうか…」という言葉をいただきました。
それは弊社コンサルティングの最中に「のれん分け制度を利用した社員が、融資を受けて、さらにその返済金を返せるかどうか、そこまで考えて欲しい」ということをお話しした際のことでした。
弊社がその経営者へお伝えした趣旨は「返済金を返せるかどうかを本部が保証してください」ということではなく、「独立者に独立したらどうなるのかを考える機会を与える」「本部と独立者との情報格差をなくしてほしい」ということでした。
具体的には、のれん分け制度を利用して独立した場合、生活していけるだけの利益の確保や独立に当たって借り入れたれた融資元本の返済が、「どのくらいの売上や利益を出せば可能なのか」、事前にシミュレーションさせてから独立させてほしいということをお願いしたのです。
なお、のれん分け制度における資金調達手段について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
事前シミュレーションなしにのれん分けしている独立者が多い現実
表立ってサービスメニューには入れていませんが、弊社にはのれん分けで独立した個人事業主やフランチャイズ加盟者・フランチャイズ加盟企業からの「フランチャイズチェーンからの脱退」に関する相談もあるのです。
そしてそのご相談に乗ってわかったことは、世間一般ののれん分けでは「経営者やフランチャイズ本部から、メリットだけを強調されて独立に踏み切る従業員が多い」という現実でした。
もちろん経営者が本心から話している「独立して経営者になることのメリット」に嘘は無いと思います。
実際にご自身が創業社長として挑戦し、成功されてきた実績に基づいているからです。
しかし弊社セミナーでお伝えしているとおり「のれん分けを利用して独立する人は、自分の才覚を信じて自分の人生を積極的に切り拓こうとする人」ではないのです。
むしろ「自分にもできるのかな」「興味はあるけど、経営者のようにはできないかもしれない」という不安を抱きつつ、それでも将来を真剣に考えて独立に踏み切る人が大半なのです。
そんな人だからこそ、尊敬する経営者の言葉を信じ、人生をかけて多額の融資を受けて独立するのです。
ですから、せめて経営者には「経営者の先輩としてできることは全てしてあげよう」という想いを持って、従業員の背中を押していただきたいのです。
独立者との情報格差をなくすことが本部を守ることにつながる
弊社では、コンサルティングで作成したフランチャイズ契約書には、何がどのような意図をもって書いてあるか、どのような条項を入れればビジネスモデルが守れるのか、細かく経営者の方には説明します。
たとえその説明の間、経営者が退屈そうにしていても、必ずご説明してご理解いただくよう、しつこいくらいに確認させていただいています。
それは弊社の職業倫理でもあり、弊社のビジネスモデルを守ることでもあります。
同様に独立者に対して、経営者が「この契約はどういうことなのかを説明すること」、またこのビジネスモデルで独立した場合に事業計画はどうなるのかを、売上保証こそしないものの、「自己責任で事業計画を考える機会を提供すること」は、ゆくゆく経営者とその本部を守ることにつながるのです。
過去の判例からも、誠実に情報格差をなくそうとしたフランチャイズ本部に対しては、その履歴や状況証拠を鑑みて、加盟者からの「本部の説明責任に対する信義則違反や本部の義務に対する債務不履行」の訴えを裁判所は棄却しています。
なので、独立者を思いやるという心情的なことはもちろん、本部を守る観点からも、経営者や本部の持っている情報の開示や、独立後の事業計画をメリットだけでなくデメリットも伝えて独立者に考える機会を与えることを、「のれん分け制度」構築の際には意識していただきたいのです。
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