「のれん分け制度って魅力的だけど、後からトラブルが生じることが心配だよね…」
これは、先日人事評価制度構築のサポートをさせていただいている企業経営者からのお言葉です。
のれん分け制度では、信頼関係のある元社員とフランチャイズ契約をすることになりますので、基本的には、第三者を対象としたフランチャイズシステムと比較してトラブルになるリスクは格段に下がります。
しかし、それでもトラブルになっているお話を伺うことはよくあります。
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制度導入後にトラブルが生じる3つの要因とは
では、なぜこのようなトラブルが生じてしまうのでしょうか。
当社がこれまでのれん分け制度や社内フランチャイズ制度についてのご相談を受ける中で、制度導入後、トラブルが生じる要因の大半は、以下の3つに起因することが判明しています。
(1)本部企業と独立社員との対等な関係性を構築することが困難であること
のれん分け制度を成功させる絶対条件は、本部企業と独立社員との対等な関係性を築くことです。
極めてシンプルな理屈ですが、現実には、この関係性を築くことが思いのほか難しいことが判明しています。
多くの場合、社員への恩返しや意欲向上を目的としてのれん分け制度を導入する企業が多いですが、そのような企業の経営者とお話をさせていただくと、社員に対する強い思いやりをお持ちであることを感じます。
このこと自体は素晴らしいことだと思いますが、そのような社員に対して思いやりのある経営者の場合、無意識のうちに、社員にとって一方的に有利な制度設計をしてしまう傾向があります。その結果、社員の自己実現は果たせても、本部にとってメリットはない、それどころかデメリットが生じるようなケースが多くあります。
これでは、いくら社員の意欲や会社への帰属意識が高まろうとも、本部と独立者でLose-Winの関係となってしまうのですから、制度を継続することは困難です。
逆に、本部有利な制度設計を行った結果、独立社員の経営が立ちいかなければ、そもそも独立希望者が現れません。
本部企業と独立社員が対等な関係でない制度は、遅かれ少なかれ破綻することになります。このバランスを保つことは一見簡単なように見えますが、当社のこれまでの経験では、当事者が独自に制度構築をする際には最も難しいポイントとなっているように感じます。
(2)のれん分け制度構築には極めて高度な専門知識が求められること
現代ののれん分け制度はフランチャイズシステムを活用しています。
そのため、制度構築にはフランチャイズに関する専門知識が不可欠です。
なお、フランチャイズとのれん分けについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
フランチャイズシステムに関連する法律は独占禁止法、中小小売商業振興法、民法など多岐にわたることから、法律知識についても高い専門性が求められます。
なお、フランチャイズシステムに関連する法律について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
また、自社に最適な制度設計を進めていくためには、自社のビジネスモデルについての深い理解が不可欠です。
このように、自社に適したのれん分け制度を構築するためには、フランチャイズ、法律、経営の3分野について、高い専門性が求められることになります。
この点を認識せず、安易な考えで制度設計を進めた結果、トラブルになっているケースを多く目にします。
なお、のれん分け制度の構築手順と成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
(3)のれん分け制度の専門家が極めて少ないこと
このコラムをお読みになっている方々は、もしかするとインターネットでのれん分け制度について検索をしたことがあるかもしれません。
実際に検索してみていただけると感じられるかと思いますが、のれん分け制度について高い専門性を有している専門家は極めて稀な存在です。
そのため、制度を構築している企業の多くは、顧問税理士や知り合いの助言を仰ぎ、制度を作り上げているようです。
そのような場合、当然ですが助言をされている方はのれん分け制度の専門家ではありません。そのため、前述の①や②の落とし穴にはまった制度ができてしまうケースが多いようです。
ですから、のれん分け制度の構築について専門家に相談をして制度構築する場合であっても、自らもしっかりと情報収集を行い、ある程度の専門知識を身に着けておくことが大切です。
なお、のれん分けで失敗しないためのポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
まとめ
のれん分け制度は、正しく活用すれば社員の自己実現と本部企業の事業拡大を両立させることができる、極めて優れたシステムです。
しかし、その使い方が正しくないがために、不要なトラブルが生じている現状は非常に残念です。
のれん分け制度の導入で失敗しないためには、上記3つの落とし穴を回避することがポイントとなります。
制度構築の際には、上記ポイントを踏まえ、落とし穴にはまらぬよう注意して進めていかなければなりません。
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