「加盟店に対して本部から商材を卸す場合の注意点などはありますか?」
これは過去に弊社にフランチャイズ本部構築のご相談に訪れたラーメンチェーンを営む経営者からのご質問です。
フランチャイズ本部の中には、
・商品・サービス品質の安定化
・大量一括購入による仕入れ単価の低減
・本部の利益確保
などを目的に、加盟店で提供する商品・サービスの原材料や資材等を、本部もしくは本部指定業者経由で提供することがあります。
特に、「本部利益の確保」という観点では、ロイヤリティ等と異なり、本部がどの程度の利益を得ているかが加盟店からは見えないため、ロイヤリティほどの負担感がない点がメリットとして挙げられます。
とはいえ、何でもかんでも本部から購入するよう加盟店に義務付けられるわけではありません。
加盟者に対して、本部または本部指定業者からの買い取りを義務付けようとする場合には、最低限以下のポイントを踏まえて制度設計を行うべきといえます。
なお、フランチャイズ展開の手順と成功のポイントを詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
FC展開について詳しく知りたい方は、弊社YouTubeチャンネルも併せてをご覧ください。
本部又は指定業者から仕入れる必然性
FCシステムは、独占禁止法、正確にいうと「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え」の規制対象となります。
※詳細は「フランチャイズ構築時に知っておきたい法律②独占禁止法」を参照
この独占禁止法の中に「優越的地位の濫用」というものがあります。
優越的地位の濫用とは、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、取引先に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える行為をいいます。
一般的なフランチャイズチェーンでは、フランチャイズ本部が加盟者に対して優越的な地位にいますから、フランチャイズ本部がその立場を利用して、原材料や資材等の仕入れ先を加盟店に対して不当に強制することは、独占禁止法に定められた優越的地位の濫用に該当するリスクがあります。
例えば、ビールを本部から購入するよう義務付けているフランチャイズ本部があるとします。
仮に、加盟店の隣にある酒屋から同じ商品を購入した方が価格が安かったとしたら、普通に考えれば、隣の酒屋から買いたいと思うはずです。
このようなケースで、正当な理由なくフランチャイズ本部からの購入を義務付けるような行為は、優越的地位の濫用に該当するものと考えられます。
一方、
- 発注作業負担や仕入れコストの低減といった加盟店にとってのメリットがある
- 本部が提供する商品やサービス品質を担保するためには、当該原材料等の使用が必要不可欠
といったように、本部又は指定業者からの仕入れを義務付けることに必然性があるのであれば、優越的地位の濫用には該当しないものと考えられます。
ですから、フランチャイズ本部としては、本部又は指定業者からの仕入れを義務付けようとしていることに客観的な必然性があるのかどうかをよく検討した上で、制度設計を進めていくことが求められます。
独占的供給業者としての責任
加盟店に対して、本部からの仕入れを義務付ける以上、加盟店からすれば、本部からの仕入れがストップすれば、商売が成り立たなくなる可能性があるわけですから、本部は加盟店に対して一定の供給責任を負うこととなります。
仮に、本部からの供給が止まって加盟店が損害を被った場合、その損害賠償請求を受ける可能性もあるでしょう。
本部から商材を提供することは、本部が卸事業をはじめることと同義です。
卸事業主として責任を果たせるよう、十分な供給体制を整備しておくことが求められます。
まとめ
以上、フランチャイズ本部から加盟店に商材供給する際の留意点についてご紹介しました。
「商品・サービス品質の安定化」「大量一括購入による仕入れ単価の低減」「ロイヤリティに次ぐ本部の利益確保」等のメリットを考えると、特に中心となる商材については、加盟店に対して本部からの仕入れを義務付けたいところでしょう。
とはいえ、前述の通り、商材を卸すには相応の責任がともないますし、相応の理由も必要です。
自社のビジネスモデルや、商材仕入を義務付けることのメリット・デメリットを踏まえ、適切な制度設計をしたいものです。
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