のれん分け制度構築において、本部が提供する4つの代表的な機能として、①商標使用許諾、②商品・物品の供給・仕入れ、③開業指導、④経営指導の4つがあります。
現代ののれん分け・従業員独立支援制度は、導入している企業によって多様な進化を遂げており、決まった形があるわけではありませんが、多くの場合、この4つの基本機能を基準に、自社の特徴や目指すべき方向性に応じて設計されています。
ここでは、飲食業界においてよく見られる「のれん分けフランチャイズパッケージ=本部提供機能の組み合わせ」を紹介します。
なお、のれん分け制度における本部の提供機能について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
(1)フルパッケージ型
フルパッケージ型とは、いわゆるフランチャイズモデルを意味します。
具体的には、商標使用許諾、開業サポート、開業後の継続的な経営指導、の3つが揃っているモデルです。
本部はただ屋号とノウハウを提供するだけではなく、事業計画作成や立地選定、資金調達等の開業サポートから開業後の経営サポートまで幅広く支援を行います。
きめ細かいサポートを行うため、本部視点ではチェーン店としての一定水準の品質を担保しやすいメリットがあり、独立者視点では開業リスクを抑制できるメリットがあります。
ただし、支援が手厚い分、本部の人的・金銭的な負担が大きくなりますから、フルパッケージ型ののれん分け・従業員独立支援制度を導入する場合は、本部にもそれなりの体制整備(例えば、開業支援や経営指導を行う人材の確保、本部機能運営に必要な資金力の確保等)が求められます。
多少のコストがかかろうともチェーン店として一定品質を保ちたい本部に向いているモデルといえます。
(2)商材提供型
商材提供型とは、独立店舗に対して食材などを供給するモデルを意味します。
他の本部機能は提供せずに商材のみ提供するパターンもあれば、他の本部機能と組み合わせて提供するパターン(例えば、「プルパッケージ型+商材提供」「商標使用許諾+商材提供」「開業コンサルティング型+商材提供」など)もあります。
商材提供機能を持つことにより、本部は商標使用や経営指導の対価となるロイヤルティに加え、商材販売による利益を得ることができます。
また、独立店舗が増えていけばスケールメリットの発揮による仕入れ価格低減が実現できるなどの利点もあります。
ただし、独立者からみて本部から仕入れることに客観的合理性のない商材の仕入れを強制することはできません(独占禁止法に定められた優越的地位の濫用に当たる恐れがあります)し、そのようなことが仮にできたとしても、本部と独立者がWIN-WINにならないような制度設計で上手くいくはずもありません。
商材提供機能を導入する際には、独立者からみても客観的合理性がある(例えば、その商材をつかわなければチェーン店の強みが発揮できない、チェーン全体で商材を一括仕入れすることにより仕入れ価格を低減できる等)ものに限定すべきでしょう。
(3)開業コンサルティング型
開業コンサルティング型とは、独立開業時のサポートだけを行い、その後の経営は独立者に委ねる(商標使用許諾や開業後の経営指導は行わない)モデルです。
独立者が開業した時点でサポートが終了となりますから、ロイヤルティは徴収せず、独立後、本部と独立者はそれぞれ独立した事業主となります。
飲食業界では、商材提供型と組み合わせて用いられるケースが多い印象です。
開業コンサルティング型は、本部視点で見ると「手離れがよい」「独立者の店舗運営の影響を受けない」等のメリットがありますが、手間がかからない分、ロイヤルティ等として本部が受け取る収入も減ることとなります。
開業コンサルティング型では商標使用許諾を行わないため、厳密にはのれん分け制度とはいえず、あくまで従業員独立支援制度の一類型といえます。
そのため、開業コンサルティング型は、企業が人材募集を円滑に進めるための一つの手段として多く採用されています。
(4)旧来のれん分け型
旧来のれん分け型とは、昔ながらののれん分け制度のことで、商標使用許諾は行うものの、開業後の経営指導は行わないモデルをいいます。
ただし、商品・物品の供給・仕入れや開業指導が組み合わされるケースもあります。
旧来のれん分け型では、独立後の経営指導がないため、本部視点では開業コンサルティング型と同様に手離れがよい利点があります。
また、商標を使用させるため、商標使用の対価としてロイヤルティを徴収することもできます(ただし、ロイヤルティの額は、経営指導がある場合等と比較して一般的に低額になります)。
一方、独立者にブランドを使用させるわけですから、本部は独立者の店舗運営の影響を大きく受けることとなりますが、経営指導を行わないため、独立後の店舗運営品質を担保するためには独立者選定が極めて重要な要素となります。
したがって、旧来のれん分け型を導入する際には、独立者選定についてしっかりとした仕組みを構築することが不可欠といえます。
「本当に信頼できる従業員にのみのれん分けを認める」といった方針の本部に向いているモデルといえます。
以上、飲食業界において採用される代表的なのれん分けフランチャイズパッケージを紹介しました。
どのモデルにも一長一短がありますので、自社の特徴や目指すべき方向性に応じて必要な機能を組み合わせることが重要です。
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