「現在フランチャイズ加盟店を募集していますが、その中で注意すべき点はありますか?」
これは、先日弊社が開催したのれん分け制度構築オンラインセミナーにご参加いただいたパソコン教室を営む経営者から頂いたご質問です。
フランチャイズ加盟店募集にあたり注意すべき点としては様々ありますが、その中の一つに「加盟店審査」があります。
フランチャイズ展開を成功させたいと考えた場合に、加盟店とのトラブルを防止することが前提条件となりますが、トラブルを防止するうえで最も大切なことが「誰を加盟させるのか」ということだからです。
そこで、今回は加盟店審査の考え方をご紹介します。
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なお、FC展開について詳しく知りたい方は、弊社YouTubeチャンネルも併せてをご覧ください。
(1)加盟審査の重要性
加盟希望者より正式な加盟申込を受けた後は本部による審査を行います。
初期段階においては、申し込みのあった全ての加盟希望者を加盟させたいと考えるかもしれませんが、加盟審査は厳正に行うべきです。
トラブル予防策として
「トラブルになっても絶対に裁判で負けないフランチャイズシステムや契約書をつくろう」
と考える経営者もいらっしゃいます。
当然、フランチャイズチェーンが発展していくためには、本部が一定の力を有している必要がありますので、これを目指すこと自体に問題はありません。
しかしながら、そのような仕組みが構築されているからといってトラブルがなくなるかというと、そういうわけではありません。
この代表例は、2019年に発生したコンビニフランチャイズの24時間営業問題です。
フランチャイズシステムや契約書を根拠として、加盟店に対して24時間営業を求めるフランチャイズ本部の姿勢は、フランチャイズを専門とする弊社からみても至極まっとうな対応です。
24時間営業について弊社がとやかくいう立場にはありませんが、少なくとも、コンビニが24時間営業を廃止するということは、従来のビジネスモデルを抜本的に見直すということです。
その影響がどうなるかはやってみなければわかりません。
仮に24時間営業を廃止したことで、コンビニの競争力が失われた場合、そこに関わる多くの方々に影響を及ぼします。
何万店舗も展開し、多くの経営者とそこで働くスタッフ、関係者の人生を預かっている本部として、24時間営業モデルはそうやすやすと変更できるものではないのです。
実際、コンビニ加盟店をメインにコンサルティングをされている仲間のお話では、24時間営業廃止に反対しているオーナーの方が多数派ということです。
24時間営業問題でコンビニが窮地に立たされた理由にはいくつかのポイントがありますが、その大きな要因の一つに、本部の理念や経営方針を十分に理解されていない人を加盟させてしまったことがあるといえるでしょう。
コンビニフランチャイズ本部が主張していることは正しいことですし、フランチャイズシステムや契約書も万全です。
にもかかわらず24時間営業問題があのような大騒動に発展してしまったのは、本部と加盟者の関係性に最大の問題があるのです。
逆に言えば、本部と加盟者間に信頼関係が構築されていれば、どんな困難も力をあわせて乗り越えていくことができるはずです。
以上のように考えると、加盟審査をきっちりと行い、信頼関係を構築できる加盟者だけを加盟させていくことが、フランチャイズ展開でトラブルを生じさせない最大のポイントとなるのです。
なおフランチャイズ本部と加盟者のトラブル防止方法について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
(2)加盟審査の着眼点
加盟審査を行うにあたっては、審査視点の偏り、抜け漏れなどが生じぬよう、あらかじめ加盟審査の着眼点を整理しておくとよいでしょう。
加盟審査の着眼点は、フランチャイズ本部によって千差万別です。
自社が望む加盟店の姿を想定し、期待するポイントをまとめていきます。
初期段階においては、以下の切り口で整理をしていくとよいでしょう。
①経営者としての資質
加盟者は本部に雇用される、もしくは本部の子会社になるのではなく、本部と対等な独立事業体として事業に取り組んでいくことになります。
ですから、他責思考や依存思考があるなど、経営者としての資質に欠けているようであれば、成功することはありえません。
特に、個人や小規模企業を加盟ターゲットとする場合には、重点的にチェックする必要があるでしょう。
②本部の経営理念やビジョンに対する理解・共感
本部の経営理念やビジョンを共有できていれば、事業を進めていく中で多少の問題が生じようとも、信頼関係をベースに乗り切ることができます。
逆に、経営理念やビジョンを共有できていないと、フランチャイズ事業が儲かるか、儲からないかだけの関係となりますから、儲かっていればよいのですが、儲からなかった場合にほぼ確実にトラブルが生じます。
加盟審査において最も重要なポイントです。
③本部事業に対する理解
加盟者に対しては、本部が展開するフランチャイズ事業のビジネスモデルについて十分な説明を行うとともに、その理解度を確認しておく必要があるでしょう。
例えば、コンビニでいえば、24時間営業やロスを恐れない品ぞろえ等はビジネスモデルの核というべきものです。
このようなビジネスモデルの核について、加盟者が正しい理解を持っているのか、厳正に見極める必要があります。
④フランチャイズシステムについての理解
一般的なフランチャイズシステムについての理解はもちろんのこと、自社のフランチャイズシステムについても適正な理解がなされているかを確認しておく必要があります。
特に、本部と加盟者の役割は重要なポイントです。
加盟店によっては、本部がすべてやってくれると勘違いしている人もいますが、そのような方は絶対に加盟させるべきではありません。
⑤加盟の実現可能性
前述の内容とは多少切り口が異なりますが、実際に加盟し、店舗を運営できるのかどうかを審査する必要があります。
具体的な項目としては、資金調達可能性、人材確保可能性、重要な関係者(法人であれば代表を含めた役員、個人であれば家族等)の同意などが挙げられます。
⑥事業や経営の経験
事業や経営についての経験は必須ではありませんが、事業や経営の経験があれば、フランチャイズ本部の立場も一定程度理解できるはずですから、経験がある場合にはプラス要素となるでしょう。
ただし、自分の価値観ややり方を貫きたい、という方もいらっしゃいます。
そのような方は、統一性が求められるフランチャイズ加盟には向いていませんので、避けた方がよいでしょう。
(3)加盟審査の方法
加盟店審査基準が完成したら、その基準をもとに加盟希望者を審査していくわけですが、ここで問題となるのが、「どのタイミングで加盟店を審査するのか」という点でしょう。
どのようなフランチャイズ本部であっても加盟の正式決定前に加盟希望者と面談を行うことになりますから、そのタイミングで審査すると考えるかもしれません。
たしかに、このタイミングは加盟審査の重要な局面ではありますが、たった1度の面談で、加盟希望者の本質を見抜くことには限界があるのもまた事実です。
ましてや、相手は審査されていることを前提に面談にのぞむわけですから、審査する側としてはより難しい問題となります。
そこで大切になるのが、加盟希望者が現れてから、本部との面談に臨むまでの一連の流れの中で、ある程度の審査をしておくことです。
例えば、加盟希望者と初めて接したとき、事業説明会に参加したとき、店舗見学に訪れたときなど、本部との面談前にも加盟希望者との接点は多々あるはずです。
このような場面のほうが、加盟希望者も構えていないわけですから、本性が表れやすいものといえます。
このためには、加盟希望者が出現してから最終面談に至るまでの一連の流れを確認し、審査が可能な接点、および各接点でどのようなポイントを審査すべきなのかを明確化しておくとよいでしょう。
なお、フランチャイズ加盟店の開発方法や考え方について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
まとめ
以上、フランチャイズ本部が知っておくべき加盟店審査の考え方についてご紹介をしました。
冒頭にも申し上げたとおり、フランチャイズ展開の成功を目指すうえでは加盟店とのトラブルを防止することが前提条件となり、そのためには加盟店審査によって加盟させるにふさわしい加盟希望者だけを加盟させることが重要となります。
フランチャイズ展開の初期段階において、希望者を全員加盟させたいと考えたくなりますが、中長期的視点からフランチャイズチェーンの発展を考えた場合には、自社のフランチャイズ加盟店としてふさわしくない人をしっかりと見極め、短期的な利益を犠牲にしてでも加盟をお断りするべきでしょう。
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