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【FC本部構築決定版:第2回】フランチャイズ展開するビジネスモデルを確立する

 

事前準備が完了したら、いよいよフランチャイズ本部立ち上げプロジェクトがスタートします。
最初に取り組むことはフランチャイズ展開する標準店舗モデル=プロトタイプモデルを明らかにすることとなります。

プロトタイプモデルとは、フランチャイズ展開を開始する際の“原型”を意味します。
自社の標準店舗モデル、ビジネスモデルをプロトタイプモデルとしてまとめ上げておくことにより、フランチャイズ加盟店の成功の再現性を確保できるとともに、フランチャイズ展開時の出店スピードを高めていくことができます。このプロトタイプモデルの品質が、フランチャイズ展開の成功を左右することは言うまでもありません。
第2回目は、フランチャイズ展開前に確立すべきプロトタイプモデルの各要素を紹介します。


<目次>

<シリーズ>
第1回:フランチャイズ展開をはじめる前に準備すべきことを知る
第2回:フランチャイズ展開する標準店舗モデルを確立する
第3回:加盟店に提供するフランチャイズパッケージを作り込む
第4回:本部が受け取る加盟金やロイヤリティを設定する
第5回:フランチャイズ契約書類を整備する
第6回:加盟店開発戦略を策定する
第7回:フランチャイズ本部のスタッフを育成する
第8回:フランチャイズ本部立ち上げを成功させるためのポイント

なお、FC展開について詳しく知りたい方は、弊社YouTubeチャンネルをご覧ください。


 

(1) 事業ドメインを明確化する

事業ドメインとは、自社が勝負する事業領域のことで、コンセプトともいわれます。
成長経済時代には、幅広い顧客ニーズに対応(例えば居酒屋事業であれば総合居酒屋)した企業が顧客から選ばれる傾向にありましたが、経済が成熟し、激しい競争環境にある現代においては、特定のニーズに事業範囲を絞り込み、自社の経営資源を集中的に投下していくことが求められています。

フランチャイズ本部は、その性質上、ビジネスモデルをブラッシュアップし続ける義務があり、その際の基準になるものが事業ドメインです。
ビジネスモデルの軸がぶれてしまっていては、今の時代、競争に勝ち残ることが難しいことは明らかです。ですから、フランチャイズ展開を開始する前に、自社の事業ドメインを明確化し、以降の事業展開の道しるべとしていく必要があります。

事業ドメインを整理するにあたっては、以下の3つの観点から整理をしてみるとよいでしょう。

①ターゲットとする顧客のニーズ

「どのような顧客のニーズを対象にするか」を明らかにします。

以前は「40代の主婦層」等といったように、顧客の性別や年齢、職業等でターゲットを絞る風潮がありましたが、現代では、同じ性別・年齢・職業であっても、ニーズは様々ですし、同じ人でも状況によってニーズが変化します。
例えば、「お酒を飲む」といっても、自分一人で軽く飲むのか、交際相手と飲むのか、友人と飲むのか、家族と飲むのか等によってニーズが変わり、選択するお店も変わるはずです。

ですから、顧客の性別や年齢、職業等でターゲットを絞ることは、現代においてはあまり意味がありません。あくまでも、顧客のどのようなニーズを対象とするのかを明らかにする必要があります。
前の「お酒を飲む」例でいえば、「落ち着いた雰囲気で会話を楽しみたい」「センスの良いお店を知っていることを交際相手にアピールしたい」「できるだけ安価に、それなりに美味しい料理やお酒を楽しみたい」等のイメージです。
ニーズで考えるのが難しければ、顧客が感じている悩みや不満から想像してみるとよいでしょう。

②顧客に提供する価値

ターゲットとする顧客ニーズに対して、自社が提供する価値を明らかにします。
具体的な商品やサービスではなく、あくまで価値ベースで捉えることが大切です。

現代はモノ消費ではなく、コト消費が求められている時代です。飲食店で言えば、美味しい料理を提供することは当然のことで、飲食店として顧客にどのような食体験を提供するかを明らかにする必要があります。
例えば、スターバックスのコンセプトの中には「お客様のサードプレイスとしてより豊かで潤いのある時間を提供する」という文言があります。まさに、顧客に提供するものをモノではなく、価値で捉えている典型例といえます。

スターバックスのお店の在り方を見てみれば、すべてがこのコンセプトに基づいて設計されていることが読み取れるはずです。
このように、自社が顧客に提供するものを価値ベースで捉え、何をするにも、それを基準に考えていくことで、魅力的で一貫性のあるチェーンを構築することができるのです。

③競合企業に対する差別化要素

競合企業に対する自社の差別化ポイント=絶対に負けないポイントを明らかにします。
飲食店でいえば、接客の品質に設定する企業もあれば、提供メニューのコストパフォーマンスに設定する企業もあります。

基本的には、顧客に提供する価値を高めていく上で最も重要なポイントを差別化要素として設定し、それが継続的に実現できるよう、必要な仕組みを整備していくことになります。
例えば、接客品質を差別化要素とするのであれば、それを実現するためにどのような教育研修システムやマニュアルを整備するか、等となります。

単純に今の強みを上げるのではなく、顧客ニーズや提供価値を踏まえて、今後長期的に磨いていくべきポイントを明らかにするとよいでしょう。

 

(2)基準となるマーケティング戦略を策定する

設定した事業ドメインに基づき、自社が展開する業態の基本となるマーケティング戦略を整理していきます。
業種業態によって切り口は若干異なりますが、おおむね以下のような視点を整理しておくとよいでしょう。

①商品・サービス

フランチャイズ展開を志向するほどですから、提供する商品やサービスはおおむね固まっていることでしょうが、商品・サービスによってはフランチャイズ展開に向かないものもあります。
例えば、提供するのに高い技術が必要で、技術を習得するまでにそれなりに時間がかかるようなものをフランチャイズ加盟店に提供させてしまうと、店舗によって提供品質にばらつきが生じ、結果的にチェーン全体の競争力を引き下げることになりかねません。

また、一般的に、本部よりもノウハウや経験が少ないフランチャイズ店では、直営店に比べて収益性が低くなる傾向にあります。フランチャイズ店の場合、ロイヤリティ等の追加コストがかかることを考えると、現状の直営店では十分に収益を確保することができていたとしても、フランチャイズ加盟店はそういうわけにはいかないかもしれません。
そうなると、より収益性を高めるための商品・サービス導入が必要かもしれません。

以上のような観点から既存の商品・サービスを見直し、フランチャイズ店に導入する商品・サービスを固めていきます。

②立地条件

事業が成立する立地条件を明らかにします。

店舗ビジネスでは、「成功するかしないかの7割は立地で決まる」といわれるほど、出店立地は重要な要素となります。
ですから、立地条件については妥協することなく、成立する条件を細かく洗い出していく必要があります。

基本的には、現在展開している直営店のうち、モデルとなる店舗を選出し、そのモデル店舗を基準に設定していきます。
切り口としては、最低限、以下内容は整理しておくべきでしょう。

ア)立地タイプ

  • 駅前、繁華街、住宅地、商店街、オフィス街、郊外ロードサイド、ショッピングセンター内など、展開する業態が成立する立地タイプ。

イ)商圏の範囲と規模

  • 店舗の商圏範囲はどの程度の広さになるか、またその商圏内にどの程度の市場規模が必要か。
  • 商圏範囲は、既存顧客の情報があれば、地図にプロットしていくとよい。
  • 市場規模は、「商圏内のターゲット顧客の人口・世帯数×家計調査の品目別支出金額」にて算出可能。

ウ)主要導線との関係性

  • 近隣主要導線からどの程度の距離である必要があるか
  • 近隣にあった方がよいものとその条件(駅から徒歩●分以内、大学と駅の導線上にある等)

エ)建物の条件

  • 適正な面積、視認性の条件、ビルイン店舗の場合は階層、坪あたり賃料の目安、駐車場の有無 等

③店舗内外装

店舗内外装のイメージを統一することは、チェーン店にとって非常に重要な要素となりますので、店舗内外装の標準形を明確化し、フランチャイズ加盟店にも遵守してもらう必要があります。
店舗内外装のデザイン、看板のイメージ、使用する什器備品や機械設備など、細かく設定していきます。
なお、店舗内外装の設計については、フランチャイズ店舗にまかせず、本部が実施することが一般的です。

④販売促進

店舗が独自で実施でき、かつ効果が見込める販売促進活動を明らかにします。

どのようなビジネスモデルにもライフサイクルがあり、好調な時もあれば、不調な時もあります。
また、店舗展開の進展に伴い、思った通りに売上を上げられない店舗はどのような好調なチェーンでも必ず現れてきます。

そのようなときに、フランチャイズ加盟店の自助努力によって業績を立て直せるよう、フランチャイズ本部はノウハウを蓄積しておくことはもちろんのこと、それを整理して加盟店に示せる必要があります。

⑤その他

営業時間、スタッフの体制、店舗運営の方法など、本部が展開するビジネスで一定の成果を出すために必要な項目を洗い出し、基準を明確にしておくことが必要です。

 

(3)投資・収益モデルを設定する

最後に、フランチャイズ展開する業態の投資・収益モデルを設定します。

投資・収益モデルはフランチャイズ加盟店が加盟検討する際に最も重要な要素となります。
安易な設定は不要なトラブルを生むリスクを内包します。
不要なトラブルを回避するためにも、既存店舗を徹底的に分析し、根拠を持って設定することが大切です。

①初期投資

標準的な店舗を出店する際に必要となる初期投資資金を明らかにします。

どのようなものに投資が必要かは業種業態によって異なるかと思いますが、一般的には、店舗内外装工事、機械設備、什器備品、人材採用費、宣伝広告費、物件取得費、加盟金などの加盟コスト等が該当します。
加盟者の加盟判断を左右する重要な要素となりますから、漏れなく正確に洗い出すことが大切です。

物件取得費等のように、ケースによって大きく変動するものは、標準値を盛り込み、ケースによって変動する可能性があることを資料に明記しておくとよいでしょう。

②収益モデル

標準的な店舗における月の売上、主要経費、営業利益の額と率を設定します。

ここで設定する収益モデルは、フランチャイズ展開時の基準となります。
いい加減に設定してしまうと、フランチャイズ展開後にトラブルの原因となる可能性があります。
例えば、実態よりも高い収益モデルを設定した場合、それを実現できなかった加盟店から訴訟を起こされる等が考えられます。

実際、フランチャイズ関連のトラブルの大半は、想定通りの収益が上げられないことに起因します。ですから、チェーン内で収益性が標準的な既存店舗をモデル店舗として設定し、そこに、前項のマーケティング戦略を踏まえて微調整する流れで進めていくとよいでしょう。

また、加盟店が正しい経営判断が下せるよう、ビジネスモデルに応じて必要なデータを用意することもフランチャイズ本部の役割といえます。
例えば、学習塾等の会員制サービス業は、立ち上げから黒字化までに一定の期間を要します。この赤字は、実質的には投資額となりますから、黒字化までに要する標準的な期間や黒字化するまでに見込まれる赤字累計額を明示しておいた方がよいでしょう。
このようなイメージで、自社のビジネスモデル上、開示すべきデータを用意します。

なお、収益モデルを加盟者に提示する際には、不要なトラブルを避けるためにも「当該収益モデルは、本部が運営する標準的な直営店舗の実績をモデル化したものであり、本部が当該収支を保証するものではありません。」等のように、収益モデルの性質を明示しておくとよいでしょう。

③投資回収

設定した初期投資と収益モデルから、加盟者の投資回収期間(初期投資÷償却前営業利益)を逆算します。

投資回収期間とは、加盟者が投下した資金がどの程度の期間で回収できるかというもので、投資回収期間を3年以下で設定できると、他のフランチャイズと比較しても見劣りしないでしょう。
これが、3年以上になる場合には、マーケティング戦略を見直して収益性を高める、投資内容を見直して初期投資金額を引き下げる、などを検討してみるといいでしょう。

とはいえ、投資回収期間は短ければいい、ということではありません。
一般的に、個人を加盟対象にするような小規模型のフランチャイズは投資回収ができる限り早い方が好まれますが、法人を加盟対象とする大型フランチャイズの場合には、投資回収期間が多少長くとも、長期間にわたり安定した需要が見込まれるのであれば、それほど問題にはなりません。

自社が展開するビジネスモデルの特徴や加盟ターゲットを踏まえて、適切な設定をすることが大切です。

 

まとめ

第2回目のフランチャイズ本部構築決定版では、フランチャイズ展開する標準店舗モデル=プロトタイプモデルの考え方を解説しました。
プロトタイプモデルの品質は、フランチャイズ展開の成否を左右します。確立せずとも形上はフランチャイズ展開を進めることができますが、プロトタイプモデルの確立が不十分な状態で、そのフランチャイズチェーンが長期にわたり反映することはありません。

フランチャイズ展開ははじめることがゴールではなく、長期にわたりチェーンとして反映することがゴールです。それを実現するためにも、プロトタイプモデルの確立には力を入れており組んでおくべきでしょう。
第3回目は、フランチャイズ本部から加盟者に提供するサービスの設計方法について解説します。

【FC本部構築決定版:第3回】フランチャイズパッケージを作る


執筆者プロフィール

株式会社 常進パートナーズ 代表取締役 高木 悠
千葉県生まれ。立教大学経済学部卒。大手外食フランチャイズチェーンに入社後、店長、マネージャー、フランチャイズ担当等を歴任。15年以上にわたり外食・フランチャイズ業界に関わっており、店舗ビジネスや大手チェーン・フランチャイズ本部の実態を熟知している。
独立後は「店舗ビジネスを営む企業とそこで働く社員の社会的地位の向上」を実現すべく100社以上の企業支援に携わっており、支援先の中には2年間で売上274.6%UPを達成した企業や、創業後5年以内に30店舗展開を達成した企業があるなど、その実践的なコンサルティングには定評がある。
著書として「フランチャイズマニュアル作成ガイド(同友館 共著)」「飲食店「のれん分け・フランチャイズ化」ハンドブック(アニモ出版 共著)」がある。
経済産業大臣登録 中小企業診断士。

<シリーズ>
第1回:フランチャイズ展開をはじめる前に準備すべきことを知る
第2回:フランチャイズ展開する標準店舗モデルを確立する
第3回:加盟店に提供するフランチャイズパッケージを作り込む
第4回:本部が受け取る加盟金やロイヤリティを設定する
第5回:フランチャイズ契約書類を整備する
第6回:加盟店開発戦略を策定する
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