(1)求人方法の種類
今回は求人方法を考えてみます。求人方法はとても多様化していますので、採用したい人材の人数や専門性(経験度)、採用にかけられる時間、コストなどを勘案して選択することになります。求人方法の全体像を以下の表1に示しました。
求人方法 | 主な内容 |
---|---|
媒体活用(紙・Web) | Webの求人サイトや求人誌などに求人情報を掲載。 関連するサイトや検索エンジンなどのWebや新聞などの情報誌などに求人広告を出す。 |
ハローワーク | 求人情報を企業の所在地を管轄するハローワークに申し込む。 |
人材紹介 | 転職エージェントとも呼ばれる人材紹介会社から人材を紹介してもらう。 |
人材派遣 | 人材派遣会社に登録している人を派遣してもらう。 |
縁故・口コミ | 家族・親戚、友達や従業員など関係者から紹介してもらう。 |
学校 | 学校に訪問するなどして求人票を掲載してもらう。 ショッピングセンターなどの掲示板に求人情報を掲載。 |
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス) | FacebookやTwitterなどのSNSを通じて、求人や会社情報を発信。 |
自社Webサイト | 自社サイトを通じて、求人や会社情報を発信。 |
合同説明会 | 就職や転職フェアなどの合同説明会にブースを出して参加。 |
ご覧の通り、とても多くの求人方法があることがわかります。例えば、各求人方法の特徴として、媒体活用やハローワーク、SNSなどは露出度が高く、多くの人にリーチできます。人材紹介、人材派遣、縁故・口コミ、学校は、求人に専門の人材会社や信頼できる関係を活用できるため、採用したい人材を確保できる確率が高いと言えます。自社Webサイトや合同説明会では、就職を希望する人に直接コンタクトが可能です。
(2)求める人材の明確化
求人方法ごとに採用しやすい人数や人材の質、採用にかかるコスト、時間や手間などが異なりますので、採用方法の特徴の具体的な話に入る前に、求める人材を明確化しましょう。求人を開始するにあたり、どのような人材をいつ何人必要なのかなどの求める人材に関する求人情報を明確にし、多様な求人方法から適切な求人方法の選択につなげます。
例えば、飲食店で多店舗展開を図るには、経営者が一人で見ることができる範囲は限られるため、店長として、店舗の経営とオペレーションを任せることができる人材の確保が必要になります。店長の業務としてはマネジメントですが、適切な人材配置・育成と管理、業務の割り振りや標準化など業務管理、調理器具やトイレなどの店舗設備メンテナンス、メニュー開発、仕入れや売上げの損益管理など多岐にわたります。
そのため、広範囲に対応できる人材を求めるのか、経営者や店舗リーダーと業務をすみわけして、必須の能力として、人材管理などの人事面なのか、店舗業務などのオペレーション面、営業面なのかなど、重要な点を具体的に絞り込むことが必要です。採用後に任せる業務と新規採用者の得意分野のミスマッチを防ぎ、長く勤務してもらうためです。
また、店舗スタッフを求める場合は、業界・業務経験の有無や勤務可能時間・勤務開始時期などを明確にして、経営資源の少ない中小企業としては、Webや紙の媒体、SNSなどを活用して短期間にあまりコストをかけず募集・採用をしたいところです。
求める人材像を明確化する際には、要件を具体的にすることとその要件が必須なのか要望なのかを区別することがポイントです。その上で、要件を整理して、Webや紙の媒体とハローワークを利用するのか、人材派遣を活用するのかなど、適切な採用方法を選択します。
複数の採用方法を利用することも効果的ですが、方法を増やせばコストや手間は増えますので留意してください。また、タイミングよく条件にあう求職者を採用できればよいですが、なかなか対象者が見つからず一定期間過ぎた場合は、求める要件の緩和や見直しをしたり、店舗リーダー募集に対して、社内の人材を育成してリーダーに抜擢し代わりに未経験者を採用する、といった当初の採用計画を変更するなどして、状況に応じた柔軟性のある対応が大切です。
(3)まとめ
厚生労働省が2018年5月29日に公表した4月の有効求人倍率は1.59倍と前月と同じく高水準でした。また、正社員の有効求人倍率は1.09倍と前月比0.01ポイント上昇し、調査開始(2004年11月)以来過去最高になりました。企業活動が活発になっており、特に正社員については、求人が増加しました。
人手不足問題は落ち着く気配をみせません。その中で、外部から人材を採用する場合には、求める人材像を明確にして適切な採用方法を活用することで、採用にかかるコストや時間の効率化や新規採用者の定着率を高めることにつながるでしょう。同時に、優秀な人材を確保するために、会社が目指すビジョンを従業員と共有したり、従業員の努力や能力を適正に評価する仕組みを構築するなどして、働きやすさと働きがいを高める取り組みを継続して行うことが必要です。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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