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メニューブックをつくる①掲載商品を決める

前の記事「メニューブック作成前に準備すること②商品別の売上・粗利を分析する」では、単品メニューの売上・利益を確認し、実績を基にランク分けする方法を紹介しました。さらに、ランク毎の基本的な考え方を示しました。今回は、そのランクを基にメニューブックに掲載する商品を選ぶポイントを紹介します。ただし、飲食店のメニューは、単純に売上・粗利だけで判断できるものでもありません。そこで、売上・粗利のランクだけでは判断できない選択基準についても紹介します。

ランクによる掲載商品の決定

クロスABC分析によって分類されたランクによって、メニューに残すべきか削除すべきかを判断する基本的な基準は以下の通りです。

売上A粗利A

お客様にとっても、お店にとっても価値ある商品です。商品を残すのはもちろんのこと、さらなる売上向上を目指すことが基本方針となります。ラインナップの強化による品ぞろえの充実、情報発信の強化などが考えられます。ラインナップを広げるには、味の種類を増やす方法やサイズの種類を増やす方法があります。

売上A粗利C

お客様にとって価値のある商品です。ここに位置する商品は、お店にとっては負担となりますから、方向性検討の基準はお客様の満足度や集客に直結しているかどうかとなります。目玉商品・集客商品としての役割があり、その効果が出ているのであれば、残す価値がありますが、そのような明確な役割がない場合は、値上げをするか、削除するかを検討しなければなりません。値上げをする場合は、ただ価格を上げただけでは注文数は減ってしまいますので、盛り付けやポーションを変えるなど、商品価値を高める工夫が必要となります。

売上C粗利A

お店にとって価値のある商品です。お店の利益が出ているメニューですので、お店にとっては残したい商品となります。ただし、品質の悪い商品ではないことが前提です。このランクに位置する商品は、今までと同じメニュー掲載方法では売上は伸びませんので、お客様に商品を認識してもらうための告知・掲載方法を考えていく必要があります。

売上C粗利C

お客様にとっても、お店にとっても価値の無い商品です。基本的にはメニューから削除することになります。その商品でしか使っていない原材料がある場合や、オペレーションに負荷がかかる商品である場合には、真っ先に削除した方が良いでしょう。ただし、コンセプトとの関連性が強い商品、これから伸ばしていきたい商品、世間で話題になっている商品などは残すことも検討します。

上記以外のランク商品も、それぞれの選択基準を決めてメニューへ残すか削除するかを検討します。

クロスABC分析

ランクでは判断できない選択基準

たとえ上位のランクにある商品でも、ランク以外の理由でメニューブックから削除した方が良い場合があります。メニュー入れ替えにあたっては、以下の観点も踏まえて意思決定を行うことが大切です。

お店のコンセプトとの適合性

店のコンセプトに合っていない商品はメニューから削除すべきです。「メニューブック作成前に準備すること①コンセプトを決める」でお伝えした通り、コンセプトに合わない商品があると店舗全体の統一感が崩れてしまいます。常連のお客様がそのメニューを要望するのであれば、裏メニューとして、お声がけいただいたお客様への特別対応で良いでしょう。

調理時間や調理の手間

掲載する商品を決める際には、調理する時間や調理の手間も考慮する必要があります。盛り付けに手間がかかるなど、調理に手間と時間がかかり、提供に時間がかかる商品は、忙しい時間にオーダーが重なるとオペレーションが乱れ、店の満足度を下げるおそれがあります。いかにランクが高かろうとも、オペレーションに著しい負荷がかかる商品は削除を検討すべきでしょう。

食材の共通利用

先ほども触れましたが、食材の視点から掲載商品を決めることも大切です。その商品でしか使わない食材は廃棄となる場合も多くなり、利益を悪化させるおそれがあります。このように、ロス発生の原因となるメニューについても削除を検討すべきでしょう。

メニューのバランス

ランクだけで商品を決めると商品が偏ってしまう場合があります。例えば、こってりした商品ばかりが残り、あっさりした商品がなくなってしまう場合などです。この場合は、こってりした商品を減らし、あっさりした商品を残す必要があります。全体のバランスを考慮して商品を選択することも大切です。

商品の総数

あれも残したい、これも残したいとなった場合、メニューブックの掲載数が多くなってしまうことがたびたび起こります。商品数が多くなれば、食材の在庫が増え、また店のオペレーションに負荷がかかるおそれがあります。事前に最大メニュー数量を決め、オーバーした場合は何らかの商品を削除する、などのルールを定めておくとよいでしょう。

店主の想い

店主が商品に込める想いも大切です。たとえ、売れていなかったとしても、原価が高かったとしても、調理が大変だったとしても、店主がどうしても売りたい商品は残しておくことをおすすめします。なぜならば、そういった想いが込められた商品こそ、将来のキラーメニューになる可能性がある商品だからです。これは理屈で説明できるものではありませんが、ヒット商品の多くがこのような熱い想いから生まれています。

バランスの良い削除商品の考え方

以上のように、メニューブックから削除する商品は、単純に商品の売上や利益だけで決めるべきものではなく、多様な視点から検討すべきものといえますが、これは口で言うほど容易なことではありません。また、経営者の考え方などによって、重視する視点も異なってきます。そこでおすすめしたい方法が、考慮すべき視点を洗い出した上で、各視点毎に点数付けをしていく方法です。具体的には、以下のようなチェックシートを作成して、視点毎に1~5点等で点数付けを行い、得点の下位のものを削除対象とする考え方です。
削除商品チェックシート
この方法であれば、多様な視点をバランスよく評価することができますし、重視したい視点に応じて重みづけ(例えば、1.5倍として評価するなど)を行うことで、経営者の意図も適正に反映させることが可能となります。売上・利益だけで評価するよりも、よりバランスのよいメニューとなることが期待できます。

以上、メニューブックに掲載する商品の選択基準について紹介してきました。
客観的なデータは大変重要ですが、データではわからない部分にも注意を払い商品を決めていくことが大切です。

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