「サブリースという言葉をよく耳にするのですが、どういう仕組みなのですか?」
これは、過去に弊社ののれん分け制度構築セミナーにご参加いただいた鍼灸整骨院チェーンの経営者からの質問です。
「独立者への資金調達支援の考え方」では、独立者に対する資金調達支援の一手法として“サブリース”を活用する方法をご紹介しました。
のれん分け制度を導入する企業の中には、独立者への資金調達支援の一環として、“サブリース”を活用することがあります。
サブリース方式とは、本部が保有する店舗資産を独立者に貸し付け、独立者からは施設使用料として家賃+αの代金を回収する方法です。
のれん分け制度における資金調達手段について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
サブリース方式を活用することにより、独立者の店舗資産に対する初期投資が不要となり、少ない自己資金でも開業することができるようになります。
必要資金が最小限で済むため、独立者を輩出しやすい点はサブリース方式の大きなメリットといえます。
一方、サブリース方式の活用には注意しなければならない点があることもまた事実です。
そこで、今回はサブリース方式の活用について、そのメリット・デメリットや制度設計上の留意点等をご紹介いたします。
(1)サブリース方式とは
サブリース(sublease)とは、簡単に言うと又貸しや転貸のことを意味します。
のれん分けによるサブリース方式とは、本部が所有する店舗資産を独立者に対して貸し出し、その対価として店舗資産の使用料を徴収する仕組みです。
サブリースでは、店舗資産だけでなく、本部が不動産オーナーから借りている店舗物件自体も独立者に貸し出すことになります。
店舗については、本部が不動産所有者から賃貸しているものですから、サブリース方式では、本部が借りている店舗物件を独立者に対して又貸しすることとなります。
不動産所有者との賃貸借契約はあくまで本部となりますから、サブリースによるのれん分け実施後も、本部は不動産所有者に対して従来通り家賃を支払っていくこととなります。
この家賃は当然独立者が負担すべきものですから、独立者が本部に支払う使用料は「テナントの家賃+店舗資産の使用料」となります。
余談ですが、一般的な賃貸借契約では、第三者への又貸しは禁止されていることが多いため、サブリース方式を活用する場合は、事前に不動産オーナーへ相談することが必須です。
持続的な経営を考えると、不動産オーナーとの関係性は非常に重要なポイントとなりますから、オーナーには無断で又貸しを実施してしまうような行為は慎むべきでしょう。
(2)サブリースのメリット
独立者がサブリース方式を利用する場合、多額の初期投資がかかる店舗の内・外装等は本部が既に用意してくれているため、独立者の店舗設備等への初期投資がほとんど必要なくなる点が最大のメリットです。
自分で店舗を持とうと思えば、普通は最低でも1000万円程度の資金が必要となりますから、金融機関からの借り入れを踏まえても、300~500万程度の自己資金が必要となります。
しかしながら、この資金を独立者が独力で用意するのは至難の業といえるでしょう。
その点、サブリース方式であれば、独立者は運転資金さえ用意すれば独立することができることになります。
このメリットは非常に大きく、独立者が初期投資資金を独力で用意できない問題を解消するための手段としてサブリース方式が用いられることが多くみられます。
また、前述の通り、独立者の初期投資に係る資金の問題が解決されますので、本部としては、より多くの従業員をのれん分け制度の対象者とすることができるようになります。
(3)サブリースのデメリット
メリットがあればデメリットもあることが世の中の常です。
一つ一つ確認していきましょう。
①独立者のデメリット
まず、独立者視点のデメリットを考えてみます。
サブリースを行うことによる独立者の最大のデメリットは、独立者に生じる月々のランニングコストが非常に高額となる点です。
これはサブリースの仕組みを考えれば当然のことでしょう。
たしかに、サブリース方式を利用すれば独立者の初期投資額は少額で済みますが、それは、独立者が初期投資すべき分を本部が肩代わりしているものです。
本部としては、投資した分を独立者から得る収入で回収しなければなりませんから、肩代わりして投資した店舗資産について、その使用料を独立者に対して請求することとなります。
使用料の考え方は様々ありますが、本部の収益性を考えれば、最低でも貸し出した資産の減価償却費分程度はまかないたいところです。
そうでなければ、本部が赤字になって独立者の経営を支援していることになってしまうからです。
むしろ、サブリース方式を採用することで、本部は大きなリスクを背負うことになります。
そのことを考えれば、一般的なビジネス感覚で考えても、店舗資産の使用量は、減価償却費+αを徴収しなければ、本部が割に合わないでしょう。
このように、サブリース方式では、その仕組み上、独立者に生じるランニングコストが高額になる傾向にあります。
このランニングコストは、独立者からみれば固定費となるわけですから、サブリース方式では、独立者の売上が低迷した際に、急激に採算が悪化することとなります。
サブリース方式を導入するにあたり、この点は十分に認識しておくべきでしょう。
②本部のデメリット
続いて、本部のデメリットを考えてみます。
サブリースを行うことによる本部の最大のデメリットは、独立者店舗で発生した問題の責任を負わなければならないリスクが一定程度生じる点です。
例えば、具体的なリスクの一例としては以下のような内容が考えらえます。
- 独立後、当該店舗の経営が赤字となり、独立者が本部に対して家賃や店舗使用料を払うことができなくなってしまっても、本部は不動産オーナーに対して家賃を支払う必要があるし、金融機関への借り入れ返済もしなければならない。
- 独立者の故意・過失により店舗で事故を発生させてしまった場合や、近隣住民、事業者とのトラブルを引き起こしてしまった場合等に、借主としての管理責任を果たすことを求められる可能性がある。
- 何らかの問題で独立者が店舗経営を継続することが困難になった場合、残った店舗については、本部が経営を引き継ぐ、または撤退コストを負担して閉店するなどの対応が求められる可能性がある。
このように、サブリース方式を活用することで、本部には一定のリスクが生じます。
この点も踏まえて、問題発生時にも本部が困ることが無いよう、制度設計をしておく必要があるでしょう。
のれん分け制度で成功するための秘訣を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
まとめ
以上、サブリースを活用したのれん分け制度についての考え方や留意点をご紹介いたしました。
サブリース方式には大きなメリットがありますが、その一方で、デメリットがあることもまた事実です。
そのデメリットを踏まえて、適切な対応を行っておくことが大切でしょう。
独立者視点でいえば、長期的に高額な店舗資産使用料を本部に対して支払うことになります。
独立者がサブリースの仕組みを理解せず、支払いだけに目を向ければ、「本部に搾取されている」などといった誤った認識を持たれる恐れがあります。
このようなことが生じぬよう、サブリースの仕組みについて、十分に説明したうえで独立をさせる必要があるでしょう。
また、本部の視点でいえば、店舗で何らかの問題が生じた際に、そのリスクをできる限り回避できるよう準備を進めておくべきです。
例えば、独立者都合の中途解約に対して違約金を課す、初期投資を減らす代わりに一定額の保証金を徴収する、などの方策が考えられます。
開業資金の問題を解決するためとはいえ、安易にサブリース方式を採用することは避けるべきでしょう。
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