先日、大企業の人事部門で責任ある立場の人と話す機会がありました。
20年来の知人であり、社会人としてスタートした頃から現在までの公私に渡る紆余曲折も知っているため、友人同士のざっくばらんな語らいといった感じでした。
その中で、印象に残ったのが「若手社員にこの会社に入ってよかったと思ってもらうためにはどうすればよいか考えている…」という言葉でした。
名の通った企業であり、恐らく新入社員は、第一志望かどうかはともかく「入りたい」と希望した人がほとんどだと思われます。
そのような企業でも、入社数年経つと「この会社で何が身につくのか」という思いを持つようなのです。
この話を聞いた時に、業界は違うものの、ある企業の新入社員から聞いた「この会社には3年くらい勤める予定です。その後はキャリアアップのために転職したいと考えています」といった言葉を思い出しました。
その時は「外資系だから自然とそういう雰囲気になるのかな」とも思っていました。
なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
(1)安定した組織の中でも危機感を持つ世代
しかし冒頭の企業は、比較的安定した顧客基盤を持つ企業であり、「将来潰れるかもしれない」という不安要素は、今のところ外部からは見えません。
なので、会社に対する不安ではなく、「個人のキャリアに対する不安」が大きいのではないかと思えました。
そしてこれは、今どきの若手社員に共通する「キャリアとは自分の身に着けて運ぶポータブルなもの」という意識が、業種や企業規模に関わらず世代共通の認識として浸透しているということなのでしょう。
もうこれからは、どんな企業も「働き手のキャリアデザイン」に無関心ではいられない、そんな時代だということなのかもしれません。
(2)店舗ビジネスにおけるキャリアデザインとは
それでは店舗ビジネスでのキャリアデザインには、どんなものがあるでしょう。
弊社では、のれん分け制度構築時に、社員向けの制度説明資料に「店舗ビジネスにおけるキャリアの選択肢」として、3つの方向性を説明するシートを入れます。
1つ目は、企業の中でオペレーションのスペシャリストとして働き続ける道、2つ目が企業の中でマネジメント層を目指す道、そして3つ目が独立を目指す道です。
こういったキャリアの選択肢を示すことの目的は、独立したいと思っている人を発掘することもありますが、それよりも「店舗ビジネスでのキャリア」を考えたことのなかった社員に「キャリアとは何か」「自分はどうしたいのか」を考えるきっかけづくりなのです。
そしてそれは「会社は働く皆さんのキャリアデザインを考えている」「実現したい方向性を支援する」というメッセージでもあるのです。
さらに制度説明資料では、続けて「経営者の基本思想」や「なぜ今のれん分け制度を導入するのか」といった、「経営者の想い」を伝えていただきます。
そうすることにより、将来独立者の芽が出てくる組織の土壌を耕すことになるからです。
(3)将来への不安は「考えて動く」原動力になる
今回の冒頭の企業の話からも、今の日本で「将来的にもずっと安泰」という生き方はもう望めないということを、働き手はわかっているのでしょう。
その厳しい現実が、コロナ禍により明らかになったということです。
だからこそ、その不安になかで真剣に自らの将来を考え、将来に向かって自分から動こうとしている人も増えています。
実際に創業者といわれる、独立開業者からの相談は体感的には増えています。
つまり自分の仕事を自分で作りだし、経営者としてコントロールしていきたい人が増えているということです。
これは店舗ビジネスにおいても同じでしょう。
これまで通りに店に行けば働けて給料がもらえる…のが当たり前ではないことに、多くの働き手が気づいたのではないでしょうか。
先ほどの「店舗ビジネスにおけるキャリアの選択肢」を、コロナという外部環境変化により、否応なしに考えざるを得なくなったのです。
店舗ビジネスにおいては、まだまだコロナの影響が強く、不安で将来が見通せない時期ではありますが、経営者として将来における「会社と社員の関係性」「社員のキャリアの方向性」、さらに「社員をのれん分けで経営者にする道」を真剣に考えるタイミングが、今なのではないでしょうか。
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