今回はjSTAT MAPのリッチレポートを活用した商圏分析方法を実際に行っていきたいと思います。
(1)基本分析
① 年齢別人口構成比
参考:jSTAT MAPのリッチレポート
上記は商圏の「年齢別人口構成比」です。東京との比較や新宿区との比較の一目で確認することができます。この表を活用することで商圏のターゲットとなる客層の分布を確認することができます。
上記の地区は新宿区西早稲田1丁目エリアです。ほかの地区と比較して20~24歳の人口比が多いことが分かります。ですから若者をターゲットとした商売に向いている地区であるといえます。
② 人員別世帯構成比
参考:jSTAT MAPのリッチレポート
上記は「人員別世帯構成比」です。リッチレポートから、単身世帯が多い地区であることが分かります。ですから単身世帯向けのお弁当屋さんやコンビニエンスストアなど向きの立地であることが分かります。
(2)周辺地図
参考:jSTAT MAPのリッチレポート
上記は商圏の周辺地図です。新宿区西早稲田1丁目エリアには早稲田大学だけではなく、学習院女子大、日本女子大といった大学が多いことが分かります。ですから、大学生をターゲットとした商売に向いていることが分かります。
(3)かかる小地域
「かかる小地域」では商圏の人口分布を見て取ることができます。
参考:jSTAT MAPのリッチレポート
小地域の分析レポートから以下のことを読み取ることができます。
① 人口総数
人口総数から、商圏における単純な人口分布を読み取ることができます。
② 従業者数
従業者数から、オフィス街が多い地区が分かります。オフィス街を対象とした業種の場合はこちらの従業者数に機軸を置いて商圏分析を行うと効果的です。
③ 世帯総数
世帯総数と人口総数を併せて読むことで、単身者世帯の多い地区と2人以上の世帯が多い地区が分かります。業種に見合ったターゲット層が多い地区を探すのに便利です。
④ 密度
人口密度が高い地区は人口が狭い範囲に集中しているため、集客しやすく商売向きの地区であるという特徴があります。
(4)年齢別人口
① 総人口
参考:jSTAT MAPのリッチレポート
② 男性人口と女性人口
参考:jSTAT MAPのリッチレポート
年齢別人口では5歳区切りでの細かい人口構成比を見ることができます。ですから事業のターゲットが存在する立地を見つけることができます。
具体的にはコンビニエンスストアやお弁当屋さんなど主に男性の単身世帯が多い立地に有利な業種であれば、若い男性の人口比が高い地区が有利になります。逆にスーパーマーケットなどの場合は、主婦層が多い地域が立地的に有利になります。
このように男女別の人口構成比をチェックするだけでも業種に見合った立地であるのかを分析することができます。
また表では細かいことが確認しにくい場合、リッチレポートでは下記のようにExcelに詳細な人口が記載してあるのでそちらを参考にして分析していきましょう。
参考:jSTAT MAPのリッチレポート
(5)世帯数
参考:jSTAT MAPのリッチレポート
上記は新宿区西早稲田1丁目エリアの「世帯人員別一般世帯数」と「住宅の建て方別世帯数」を表したグラフです。
「世帯人員別一般世帯数」のグラフから、東京都の平均より単身世帯数がおよそ20%ほど高い地域であることが分かります。
また「住宅の建て方別世帯数」から一戸建ての割合が東京都の平均の半分以下であり、共同住宅世帯数が多い地域であることが分かります。
上記から、新宿区西早稲田1丁目エリアは単身世帯をターゲットとした商圏であることが分かります。
(6)経済センサス
① 産業別事業所数
参考:jSTAT MAPのリッチレポート
「産業別事業所数」では第1次産業・第2次産業・第3次産業の事業所数の割合を表しています。エリア内ではおよそ85%が第3次産業の事業所であり、第1次産業の事業所はほぼ存在していないことが分かります。
② 第2次産業内訳
参考:jSTAT MAPのリッチレポート
上記から商圏での建設業の割合が東京と平均と比較して少ないことが分かります。
③ 第3次産業内訳
参考:jSTAT MAPのリッチレポート
上記は商圏内の第3次産業内訳を詳細な数値のレポート付きで掲載しています。ここではエリア内の産業の特徴を具体的に分析していきたいと思います。
エリア内事業所数 | エリア内従業者数 | 東京都事業所数 | 東京都従業者数 | |
情報通信業 | 201 | 3,594 (17.6人) | 22,591 | 833,221 (36.8人) |
学術研究,専門・技術サービス業 | 226 | 2,489 (11.0人) | 43,070 | 474,795 (11.0人) |
宿泊業,飲食サービス業 | 453 | 6,188 (13.6人) | 92,96 | 7 890,005 (9.5人) |
教育,学習支援業 | 124 | 14,924 (120.3人) | 21,291 | 468,565 (22.0人) |
第3次産業内訳ですが表で見るとほかエリアと比較して特別な要素はないように見えます。
しかし、リッチレポートのExcelで表視される数値を分析していくことで商圏エリアの特徴を分析することができます。
ⅰ 従業者数を事業所数で割る
従業者数を事業所数で割ると1事業所内の従業員数が分かります。
情報通信業
エリア内では1事業所あたり17.6人、東京都の平均では1事業所あたり36.8人です。このことからエリア内の情報通信業の事業所は小規模な事業所が多いことが分かります。
学術研究,専門・技術サービス業
エリア内・東京都の平均ともに1事業所あたり11.0人です。学術研究,専門・技術サービス業は東京都の平均レベルの事業所が多いことが分かります。
宿泊業,飲食サービス業
エリア内では1事業所あたり13.6人、東京都の平均では1事業所あたり9.5人です。このことからエリア内の宿泊業,飲食サービス業の事業所は比較的大規模な事業所が多いことが分かります。
教育,学習支援業
エリア内では1事業所あたり120.3人、東京都の平均では1事業所あたり22.0人です。このことからエリア内の教育,学習支援業の事業所はかなり大規模な事業所が多いことが分かります。
これはエリア内に複数の大学が存在することからも分析することができます。
このように詳細に分析することで、ライバル業者の傾向を読み取ることができます。
④ 従業者規模別
参考:jSTAT MAPのリッチレポート
「従業者規模別」の表です。この表からは東京都の平均とあまり大差ない規模であることしか読み取れません。第3次産業内訳で行ったように詳しい分析は詳細なデータを使って自分で行う必要があります。
(7)人口・世帯数増減
参考:jSTAT MAPのリッチレポート
上記は立地の将来性を分析する上で重要な「人口・世帯数増減」を示しています。急激に人口が減少している地域では、長期的に事業を行っていくことはできません。ですから「人口・世帯数増減」を分析することは事業を長期的に継続させるためにも重要であるといえます。
今回はjSTAT MAPのリッチレポートを実際に使ってどのような商圏分析ができるのかをご紹介してきました。事業において立地は成功のカギを握る重要な要素です。他人任せにせず、自分で簡単な商圏分析を行っていきましょう。
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