企業は成長するに従い、業容を拡大します。
飲食店やサービス業が拡大するときには、展開する店舗や地域が段階的に増えていきます。
創業時であれば、店舗の規模や商圏が限られており、経営者が自らオペレーションを回すことが可能でした。
それでは、雇用する社員や展開する店舗が増えても、同じように経営することができるでしょうか?
新型コロナウィルスが広まる前に相談を受けたサービス業の経営者の方は、「目が回るほど忙しい」と話していました。
「働き方改革法案」が施行され、社員の年休取得や残業時間の制限などに中小企業も取り組まなくてはいけなくなりました。
一方、経営者はこれまで通り、自身で時間管理を行い、会社を経営しながら、健康を維持しなくてはいけません。
経営者も、いつまでも多忙な状況が続いては、身体が持ちませんし、会社を持続的に成長させることができません。
経営者は次第に、もう少し先の目線で、経営理念や経営方針、経営計画について、時間を十分にとって作戦を練り、実行をしていくことが必要になってきます。
会社の成長には、状況が異なるステージがあるからです。
今回は、会社を成長に導くために、経営者に求められる行動について考察します。
(1)会社の成長ステージは4段階
それでは、会社の成長ステージとはどのようなものがあるのでしょうか?
これを発展の段階でとらえると、以下の4つになります。
1. 創業期
2. 拡大期
3. 安定期
4. 成熟期
会社を創業し軌道に乗ってきた経営者がまず直面するのは、創業期から拡大期です。
拡大するにあたり、会社を引っ張ってきた経営者と幹部だけでは限界が訪れます。
拡大の内容は、業種によって異なりますが、飲食店やサービス業であれば、商圏や店舗の拡大が中心になります。
事業が拡大していくと経営者がすべてに目を行き届かせることは不可能となるため、経営者が注力することは「自らが現場を引っ張ること」から、「人材を活用して成果を出すこと」に転換する必要が生じます。
現場を任せられる自発的に行動できる人材を育成することに時間を使うようにするのです。
具体的には、経営者が自ら行っていた業務を、信頼できる部下に任せていくことです。
同時に、拡大がある程度続くと、どの店舗でも同じ品質のサービスを提供することが課題になります。
お客様はどの店舗に行っても同様のサービス品質を期待しますし、それがかなわないと、逆に会社に対する信頼を損なってしまいます。
また社内的には、各店舗に配属されている社員を、会社として同じ基準で評価するための公正・公平な人事管理制度が必要になります。
つまり、会社として一貫性のある戦略を立案し、同じ業務内容で経営することが重要になるのです。
会社が安定期に入ってきたサインです。
この変化を意識しないで拡大を続けると、その無理がサービス品質に対するお客様からのクレームや社員の会社への不満につながってしまいます。
このステージでは、経営戦略や人事政策が重要になってきますので、経営者は計画策定に注力することです。
大局的・長期的な視点で策定する戦略と、現場でオペレーションを回す戦術とは、異なるものです。
なお、多店舗展開を加速するための人材育成システムについて、詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
(2)成長ステージを理解し、時間の使い方を変える
このように、会社の成長にはステージがあります。
誰もが名前を知っている大企業でも必ずこの成長のステージを経験してきました。
この成長ステージを乗り越えてきたからこそ、大きくなれたのです。
しかし、毎日を現場で忙しくしている経営者にとっては、そのステージの違いに気づきづらいものです。なぜなら、成長というのは、急に実現するのではなく、市場やお客様のニーズに応えながら、会社は次第に大きくなるからです。
これは、温泉の湯船の温度変化に似ています。
入り始めはぬるくても、徐々に温度が上がってくるとその変化に慣れてしまい、お湯が熱くなっていることを意識しなくなってしまいます。
ところが、後から入った人は、そのお湯が熱いことにすぐ気づきます。この違いです。
そのため、成長を目指す経営者は、まず自社が今、成長ステージのどこにいて、1年後や3年後などの将来にどこまで成長することを目標とするのか、しっかり見定める必要があります。
事業拡大計画を成長ステージに合わせて立案し、どの地域に何店舗出店して、どのようなサービスを提供し、どのくらいの売上げと利益を目指すのかを具体的に考え、言葉や数字で表現します。
その上で、成長に必要なヒト・モノ・カネ・情報の経営資源を見極め、順次準備を始めるのです。
とりわけ人材は重要です。
現代の目が肥えたお客様は、ニーズにあったものを、必要なときに、必要なだけ、便利な方法で手に入れることを求めています。
社員を増やすだけでは、お客様の高度なニーズに応えることはできませんし、労働集約的で生産性が低いままでは、利益もでません。
これを解決するには、経営者とともに経営者の意図を理解して行動できる人材、すなわち、自ら問題を発見し、対応策を考え、実行できる自発的人材を育成することなのです。
立案した事業拡大計画にもとづき必要な人材のレベルと人員数、時期を明確化し、計画的に人材育成を進めます。
このように、経営者が会社の成長ステージを理解して時間の使い方を変え、計画立案や人材育成に十分な時間をかけることから始めることが大切です。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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