人材育成

社員を継続的に動機づける人材育成に効果的な方法とは

自発的人材の育成は、短期間でできるものではありません。
社員のよいところを伸ばしながら、自ら考え行動できるように習慣づけることが必要だからです。

そして習慣化のためには、「始めるためのモチベーション」と「継続させるためのモチベーション」の2種類を意識した動機づけが重要になります。
今回は、その2つのモチベーションを意識した動機付けを行うことで、キャリアを考えると同時に、人財育成につながる取り組みを考察します。

自発的人材育成を成功させるためには工夫が必要

自発的人材の育成は、短期間でできるものではありません。
社員のよいところを伸ばしながら、自ら考え行動できるように習慣づけることが必要だからです。

行動が習慣づくということは、新しい取り組みを始めようとする気持ちを持ってから、興味を持って継続的に取り組むことができるようになるまでですので、一定の時間がかかります。
これは多くの経営者の方が日頃から実践しているPDCA管理(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善)と似ています。

計画を立てて実践しようとすることが新しい取り組みであり、毎日の業務を回しながら、その取り組みが売上げ向上やコスト削減などに貢献しているのか評価し、迅速に次のアクションへとつなげる継続的な取り組みだからです。
この継続的な取り組みが、経営に変化を与え、会社をより強い体質へと変化させます。
つまり、自発的人材育成もPDCA管理のように、社員が継続的に取り組めるようにする工夫が必要になります。

モチベーションには2種類ある

以前興味深い調査結果を見たことがあります。
あるダイエットの継続期間の調査によると、1カ月続く人は始めた人のうち半分弱で、2カ月以上続く人は、さらにその半分程度でした。

これは継続することが難しいことを示す調査結果でした。
一方、その調査は、1年以上続く人が一定の割合でいる、ということも同時に示唆していました。
ダイエットに限ったことではないと思われますが、この調査結果から、動機づけには、何かを始めるためのモチベーションとそれを継続させるためのモチベーションの2種類があると考えられます。

1つ目のモチベーションは、きっかけ、つまり、始めるための動機づけです。
人は何かを始めるときには動機づけが必要です。

それまでやっていなかったことを始めるということは、現状を変えて新しいことにチャレンジしようと気づいたからです。
好奇心を刺激されたり、問題に気づいたため改善や解決をしたいという気持ちの現れであり、ゼロを1にするための欲求です。

2つ目は、始めた取り組みを継続させるための動機づけです。
始めるための動機づけとは異なる種類の動機づけとなります。

思いつきや瞬間的な気づきというより、少しずつ目標に近づきながら、一歩一歩進むための動機づけです。
継続することで、もっと改善したい、成長したい、目標に近づきたいなどの気持ちの現れであり、1を10や100にするための欲求です。
継続することで行動が習慣化され、頭と身体にしみこんでいきます。

社員を継続的に動機づける人材育成に効果的な方法とは

社員をこの2種類の動機づけによってやる気にさせることが、長期的に自発的に行動できる人材を育てるポイントです。
短期的にやる気にさせるには、例えば、昇給やボーナス支給などのインセンティブを与え、十分に満足してないことを解消することで動機づけることができます。

しかし、これらは一時的な効果はありますが、長続きしません。
インセンティブをもらって満足してしまい、その状態にすぐ慣れてしまうからです。

子どもに宿題をやる気にさせるためにアメをあげれば最初のうちは頑張りますが、それが当たり前になってしまい、アメがなくなれば、やる気を失い元に戻ってしまうことと同様です。
アメを与え続けることはキリがありませんし、長期的に約束できるものではありません。

そこで、社員を継続的に動機づける人材育成に効果的な方法は、社員にキャリアを考えさせることです。キャリアを考えるということは、社員自身が将来どのような仕事をしたいのか、どのような役職につきたいのか、どのようなワークスタイルバランスで働きたいのか、将来どのような人物になりたいのか、といったことを考えることです。

将来の自分のなりたい姿を描くことは、仕事や生活に目標を与えます。
自分で設定した目標ができれば、その将来の姿を実現するためのキャリアプランを立て、今できることやしなければいけないことを」具体的に着手しやすくなります。

例えば、将来、配偶者と共働きをしながら子どもを育て、年に1~2回程度家族旅行をして、子どもの教育はできるだけサポートしたいと将来像を描いたなら、仕事でどのようなキャリアを歩み、どれくらいの収入を得ていくべきかが見えてきます。

そこで、会社が、将来の役職や給与など可能なキャリアパスや条件を示し、一緒に考えることで、頭の中のイメージを具体的な計画に落とし込むことが可能になります。
具体的な計画がわかれば、行動するのは「今」ということに気づきますので、自主的に取り組みを始めるための動機づけとなります。

そして、開始した取り組みを継続させるために、具体的な行動の進捗を2週間や1カ月単位でモニタリングします。
その進捗を追いかけながら、毎日の取り組みや課題を明確にし、結果を次の行動に活かします。

ダイエットを継続するのに、毎日体重計に乗り体重を測定するのと似ていませんか?
進捗や変化が目に見えるようになれば、継続するための励みになります。

取り組みが長続きする人は、自分の特徴を理解しており、この点に関する工夫にたけているのではないでしょうか。
計画を立てたら終わりにせず、会社経営と同様人材育成も、PDCA管理のサイクルを回すことが大切です。

しかし、取り組みがいつも順調とは限りません。
ときには、取り組みがマンネリ化したり、結果がよくなかったりするかもしれません。

そこで、経験のある経営者が社員に寄り添い、日頃から対話を心掛けサポートするようにします。
社員は親身のサポートを感じることができれば、それが安心感へとつながり、たとえ難しい課題に直面しても、相談をしながら乗り越えることができます。
この一つひとつの小さな積み重ねが成功体験となって自信を深め、継続する原動力となります。

まず、1カ月、次に3カ月、そして半年続けられるように支援しましょう。
1年程度継続できれば、自発的に課題に取り組む姿勢が習慣化されてきたと判断できます。

取り組みを開始する前とは、異なる考え方と行動になっているはずです。
経営者から見ても、社員自身から見ても成長した姿を実感できると思います。

このように、モチベーションには2種類あることを理解し、人材育成にキャリアをうまく利用することで、継続的な取り組みを行うことにつなげます。
キャリアを考えることと人材育成が同時に実現し、一石二鳥の取り組みと言えるでしょう。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

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