「コロナの影響でこの先の経営が全く見通せません…
苦しい状況ですが、この状況を乗り越えるためには、のれん分け制度を導入するしかないと考えています」
これは、先日のれん分け制度導入でご相談に訪れたベーカリーチェーンを営む企業経営者の言葉です。
新型コロナウイルス感染症の影響により多くの企業が影響を受ける中、のれん分け制度の導入に動く経営者が増加しているように感じます。
弊社への問い合わせやセミナー申し込みも、ここ最近増加傾向にあります。
相談者やセミナー参加者のお話を伺うと、のれん分け制度を導入する狙いが、コロナ危機前後で大きく変化しているようです。
具体的には、コロナ前の のれんわけ制度 の導入目的といえば「人手不足対応」が圧倒的大多数でした。
のれん分け制度を導入し、従業員のキャリアに“独立”という選択肢を用意することで、働く場としての魅力を高め、採用競争力や定着率の向上を実現する、というものです。
一方、コロナ危機発生後の導入目的は「環境変化への対応力向上」が大半となっています。
コロナ危機により企業業績に大ダメージを受けた企業経営者が、中長期的な事業の継続、発展に向け、自社の経営力強化のために、のれん分け制度を導入しようとしているのです。
なぜ、のれん分け制度を導入すると環境変化への対応力が向上するのか。
今回は、その理由をご紹介いたします。
なお、のれん分け制度つくりや成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
(1)独立者の“仕事に対する意識の変化”による店舗経営力の向上
1つ目の理由は、独立者の立場が“雇われ社員”から“経営者”に変わることによって仕事に対する本気度が劇的に高まり、結果として、店舗経営力が飛躍的に向上することがあげられます。
弊社の経験則で申し上げても、既存店をのれん分け制度により独立させた後、売上や利益が下がる例は見たことがありません。
これは考えてみれば当然のことでしょう。
雇われ社員の場合、どんなに店舗の売上や利益が増えようとも、それに比例して収入が増えるということはありません。
同様に、売上や利益が減ったとしても、それに比例して収入が減ることもありません。
一方、経営者になると、店舗の売上や利益が増えれば、その分だけ自らの収入が増えることになりますし、その上限もありません。
同様に、売上や利益が減れば、その分だけ収入が減ることになります。最悪の場合、収入が0どころかマイナスになることもあります。
これは雇われ社員の立場ではありえないことです。
この前提条件の違いから、独立者の立場が「雇われ社員」から「経営者」に変わると、驚くほど仕事に対する本気度が高まることになります。
店舗責任者の仕事に対する姿勢が変われば、当然、環境変化への対応力も向上します。
今回のコロナ危機のような状況が発生した場合、そのお店に自分の人生をかけている経営者であれば、ありとあらゆる手段を講じて、売上、利益の獲得に動きます。
その動きの質と量は、雇われ社員と比べるまでもありません。
一方、雇われ社員がそこまで本気で動かないことは、皆様の会社で働いているスタッフがこの危機下でどのような行動をしているのかを振り返ってみればお判りいただけることでしょう。
のれん分け制度によりチェーン内に経営者を輩出することで、店舗経営力が高まり、結果としてチェーンの環境変化への適応力が向上するのです。
また、この店舗経営力の向上は、危機の克服だけではなく、経済が成熟化し、あらゆる商売の競争環境が激化する時代で生き残るためにも有効な要素といえるでしょう。
(2)既存店舗の経営を本部から切り離すことによる固定費負担の圧縮
2つ目の理由は、のれん分け制度を活用して既存店舗の経営を本部から切り離すことで、本部の固定費負担を圧縮できることがあげられます。
既存店を用いたのれん分け制度の独立形態には、大きく分けると「委託方式」と「譲渡方式」の2パターンがありますが、いずれの方式にせよ、当該店舗に生じる家賃や人件費といった固定費を負担するのは独立者となります。
本部の固定費負担が減少する訳ですから、当然、本部の環境変化への適応力は向上することになります。
例えば、今回のコロナ危機でいえば、店舗ビジネスの多くが、一定期間の間、営業自粛となり、売上がほぼ0となる事態となりました。
この期間でも、家賃や人件費といった固定費は発生する訳ですから、売上が0のときには、固定費分が赤字になることとなります。
本部が展開している店舗がすべて直営店の場合、店舗で生じる固定費はすべて本部負担となりますので、本部のダメージは甚大です。
一方、のれん分けした店舗の固定費負担は独立者が負うことになりますので、のれん分けをしている場合、本部の固定費負担はその分だけ減少することになります。
これは、環境変化によるチェーン全体へのダメージを、本部と独立者で分散して負担している状態ともいえます。
結果、本部やチェーンの視点で見れば、環境変化への適応力が向上するのです。
また、本部と独立者はそれぞれ異なる事業体となりますから、政府や自治体が実施する支援施策もそれぞれの事業体で活用することができます。
例えば、対象企業に200万円が支給された持続化給付金で考えてみると、直営展開だけの場合は本部が200万円の補助金を受給できるだけですが、独立者がいる場合、チェーン全体で考えれば200万円×(本部+独立者の数)分の補助金を受給することができるのです。
このことも、環境変化への適応力向上につながるメリットといえるでしょう。
なお、コロナ禍でものれん分けで成功している会社について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
まとめ
以上、のれん分け制度の導入により環境変化への対応力が向上する理由をご紹介しました。
新型コロナウイルス感染症問題は、歴史に残る大事件であることは間違いありません。
しかしながら、歴史を振り返ってみれば、同レベルの環境変化は過去に何度も発生しています。
情報化や国際化が進む現代では、今後も同様の大事件が発生することは間違いありません。
むしろ、その頻度は過去よりも多くなることが想定されます。
このような時代に企業が生き残るためには、環境変化への適応力を高めていくことが不可欠です。
そして、店舗ビジネスにおいて、のれん分け制度を導入することは、環境変化への適応力を高める有力な手段となるのです。
今こそ中長期的な事業の継続、発展のために、のれん分け制度の導入に着手すべき時かもしれません。
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