通信環境が発達して、ほぼ誰もがスマホを持ち歩き、情報の検索や人とのコミュニケーションが容易になりました。
今後もこのツールの変化はさらに加速することでしょう。
モノが便利になれば、今まで不可能なことが可能になったり、効率的になったりして、生活が豊かになります。
一方、使い方次第では、負の側面もあります。
先日ある飲食店の経営者が次のようなことを、お話していました。
「人手不足なので、今いる社員をできるだけ育てようと思っています。ところが、おとなしい部下が多くて、なかなか積極的に行動しようとしないのです。」
ご相談があった経営者の飲食店は、和食を提供しています。
地域の新鮮な素材を活かした調理法で、地元では人気があり、最近ではネットを見たお客が地域外から訪れる場合もありました。
今のところお店の評判はよいのですが、近隣に競合店も多く、また、地域の食材は手に入るものの価格変動や顧客の好みに合わせたメニューの提供など外部環境の変化に対応していく必要があります。
そのようななか、数店舗を展開しながら、どの店でも満足のいくサービスを提供し続けるため、社員を自発的に行動できるようにすることが大切であるとその経営者は考えています。
今回は、内向的な部下に対する育成方法について考察します。
なお、多店舗展開を加速するための人材育成システムについて詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
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(1)内向的と消極的とは同じ意味ではない
最近では、スマホでのコミュニケーションに慣れているせいか、表向きはおとなしく内向的と見える若者が少なくありません。
SNSなどには頻繁に投稿をしますが、対面でのコミュニケーションが積極的でない場合があるようです。
友人など親しい人以外と接することが得意ではない、と言うことができます。
一方で、内向的と思われる人が、積極的ではない、ということではありません。
内向的の反対の言葉は、外交的であり、社交的と言い換えることができます。
これらは、性格の一部であると考えられ、突然内向的な人が外向的になったりはしないでしょう。
しかし、積極的とは、考え方や行動の特徴を表します。反対の言葉は、消極的です。
つまり、内向的と消極的は、同じ意味ではありません。
自発的に問題を認識し、解決策を考え、問題解決するような人材を育成するには、積極的な行動が必要です。
自発的な考えや行動が目に見える形で出てくる必要があります。
内向的な人が、外向的な人に比べて、仕事ができないとか、自発的人材として向いていない、ということでは決してありません。
(2)内向的な部下に対する3つの取り組み
それでは、内向的な人をどのようにしたら、積極的な行動をとれるようすることができるでしょうか?それには、上司の日常からの関与が重要であり、対話のポイントは次のようなものです。
①1対1での対話
内向的な人は、大勢でのミーティングで自分の意見を発言したり、発言を促されることを得意としていません。
また、大勢のミーティングでは、上司などの司会者が参加者のさまざまな意見を取り入れようとしない限り、どうしても声の大きい人の意見が通りがちです。
内向的な人は、このようなミーティングの傾向を良しとしていません。
そこで、上司と1対1での対話の機会を作ります。
内向的な人は、思慮深い傾向があり、すでに職場の問題点に気づいたり、改善策を思いついたりしている場合があります。
内向的な人も、その対話のなかで、質問形式で問題点や改善策を求めるようにすれば、普段考えていることを話しやすいでしょう。
うまく引き出してあげるイメージです。
②会社への貢献に感謝し、良い面をほめる
内向的な人で、積極的に行動していると見えない人でも、指示した仕事や決められた仕事をしっかりやっているのであれば、会社へは立派に貢献しています。
そこで、これは内向的な人に限った話ではありませんが、転職が容易な労働環境のなか、毎日自社に勤め、業務を遂行し貢献していることを言葉で伝えましょう。
感謝の気持ちを伝えるのです。
そして、日常の仕事ぶりなど良い面を具体的に評価します。
内向的な人は、懐疑心が少し強い場合がありますので、感謝し、ほめることで、その懐疑的な気持ちが和らぎます。
いつもの行動が会社に貢献していることを実感できれば、おのずと行動が前向きになるでしょう。
③考え方や行動を事前に確認する
頭の中でしっかり考えていることでも、何らかの理由で行動をためらっているかもしれません。
そのため、対話により考えている問題点や解決策などを引き出したら、次にする行動を事前に確認しておきます。
それにより、内向的な部下にとっては、事前に行動のお墨付きをもらったように感じますので、行動がしやすくなります。
失敗などを気にしていたとしても、上司と話した結果ですので、安心感があります。
そして、後日行動の結果を必ず両者で確認し、成果をフィードバックします。
このサイクルがうまく回りだすと、部下が相談を持ち掛けてくるようになるなど、以前と比べものにならないほど、行動が積極的になることに違いありません。
(2)部下の性格ではなくて、行動を変える
会社を立ち上げ、苦労して忙しく事業運営している経営者からすると内向的な部下は、とてもおとなしく、物足りなく見えるでしょう。
しかし、別の見方をすれば、外向的な部下ばかりであれば、うまくいくのでしょうか?
外向的な人はコミュニケーションがうまいなど、長所もたくさんありますが、一方で、自己主張が強すぎたり、外向的な経営者と意見の対立など摩擦が生じる可能性があります。
経営者とタイプの違う内向的な人ほど、経営者と異なる視点で経営を見ることができるかもしれません。
また、おとなしく見えるのは、表面上だけかもしれません。
実際は、心のなかで多くのことを考えているでしょう。
そこで、日頃の部下の行動の観察と対話を通じて、部下の仕事に対する考えや行動を引き出すのです。
人の性格は簡単に変わるものではありませんが、人の行動は変えることができます。
部下の行動を自発的に変えることができれば、会社にとって、これ以上とない財産になります。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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