「おかげさまで、今期は増収増益を達成することができました!来期も引き続き増収増益を目指して頑張りたいと思います」
これは、弊社が店舗展開のサポートをしている鍼灸整骨院チェーン経営者の言葉です。
どのような企業の経営者であれ、決算がくると、その期の経営成績について振り返りを行うことと思います。当社も8月末決算となりますので、今まさに、前期の経営成績等についての振り返りが終わり、来期も1年間頑張ろうと決意を新たにしたところです。
1年間の成績や取り組みを振り返るタイミングはそうありませんから、決算のタイミングで行う振り返りは、企業にとって非常に重要なものといえるでしょう。
ところが、この大切な振り返りを、誤った考え方で実施している経営者も少なくありません。その代表例が、売上と利益の結果だけを振り返ることです。このようなことを言うと「売上と利益を振り返って何が悪いんだ!」などとお叱りを受けるかもしれませんが、誤解を恐れず申し上げれば、売上と利益だけを振り返っているのだとすれば、その行為は全く意味のないものとさえいえます。なぜならば、売上と利益はあくまで“経営活動の結果”でしかないからです。この点について、分解して考えてみたいと思います。
仮に、売上と利益だけを振り返る場合、その組み合わせには以下の4通りがあります。
➀増収増益
②増収減益
③減収増益
④減収減益
売上と利益だけを振り返った場合、この中で最も望ましい結果が、➀の「増収増益」といえるでしょう。売上が上がり、利益も増えるのですから、経営状況としては非常に順調な様子に感じられます。逆に、④の「減収減益」となったとしたら、経営状況的には大問題と感じられるかと思います。
しかしながら、注意しなければならない点は、売上と利益はあくまで経営活動の結果として生じたものに過ぎず、その結果の良し悪しを判断するには、その結果を生み出す企業活動にも目を向けなければならないという点です。
例えば、増収増益を達成した飲食店があるとして、その増収増益の要因が、自社が努力をしたわけではなく、たまたま近隣に集客力のある買い物施設がオープンしたことであったとしたら、その増収増益は望ましいことといえるでしょうか?
普通に考えれば、そのような施設が近隣にオープンしたのは偶然の産物ですから、自社にとって幸運と捉えることができても、それが自社の力によるものと捉えることには無理があります。そう考えると、このケースにおける増収増益は、企業にとって確かに良いことではあるものの、決して望ましいものとは捉えられないこととなります。
今度は逆に、減収減益となってしまった飲食店があるとして、その要因が、新しい成長の柱を築くために従来には無い新しい業態を開発・展開し、その新店舗の業績が思うように伸びなかったことにあるのだとした場合、その減収減益は企業にとって望ましくないことといえるでしょうか。
確かに、チャレンジした結果とはいえ、それが要因で減収減益になったとしたら、企業にとっては良いことではないでしょうし、決して望ましい結果とはいえないでしょう。しかしながら、経営活動の観点から考えた場合にはまた違ったものが見えてきます。
現代は、これまでにないスピードで環境変化が進んでいます。今流行しているものが、1年後には全く見向きもされていない可能性がある時代です。そのような環境下において、何のチャレンジもなく、従来の延長で経営をしている企業は、ほぼ間違いなく毎年衰退をしていく時代です。このような環境下の中であれば、仮に結果が上手くいかなかっとはいえ、新しいことにチャレンジした姿勢は、企業として望ましいものといえるのではないでしょうか。
何の努力もせずにただの偶然で増収増益を達成することよりも、新しいことにチャレンジして減収減益となってしまった方が、今の時代の経営活動としては健全である、と弊社では考えています。
このように考えていくと、売上と利益だけを振り返る行為が、いかに意味のないことかがお分かりいただけるかと思います。大切なことは、売上・利益といった結果に対して、企業がどのようなチャレンジをして環境変化に適応しようとしたのか、環境変化の波を乗り越えようとしたのか、ということなのです。仮に現時点での業績が好調であったとしても、環境変化に対応するためのチャレンジを怠っていれば、近い将来、企業存続の危機に陥る時代であることを心得なければなりません。
上記のような考えから、当社では、関係先の企業様に対しては、売上と利益の振り返りを行うことに加えて、その年のチャレンジを振り返ることを推奨しています。売上・利益といった結果要素と、環境変化に対応するためのチャレンジを踏まえて、総合的にその期の経営を振り返ることが大切です。
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