コンビニの24時間営業についての問題が話題となっています。メディアでの取り扱いをみていると、24時間営業を主張するフランチャイズ本部が悪で、24時間営業の見直しを迫るフランチャイズ加盟店が正という扱いの印象があります。
私はコンビニの現場を経験したことがありませんのでこの問題についての良し悪しを判断することはできませんが、“フランチャイズの専門家”という立場からこの問題を見てみると、フランチャイズ本部が悪でフランチャイズ加盟店が正、といったような一方的な印象付けには違和感があることも事実です。
そこで、この問題に対する当社の見解をまとめてみたいと思います。
なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
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(1)フランチャイズ加盟の前提
まず、この問題を考えるうえではフランチャイズシステムの前提を理解する必要があります。
フランチャイズシステムの概要は以下の通りです。
上記のフランチャイズシステムの仕組みを簡単にまとめると以下の3つの要素に分けることができます。
①本部は「再現性のある、成功する仕組み」を開発し、それをサービス(=フランチャイズパッケージ)化して加盟者に提供する
②加盟者は、本部からサービス提供を受ける対価として加盟金やロイヤルティ等を支払う
③本部と加盟者は対等な事業者として上記①②の契約を締結する。
このフランチャイズシステムの中で特に重要なポイントは以下の点と言えます。
①加盟者は、本部の「お客様」や「労働者」ではなく、「独立した事業主」であり、本部・加盟者双方に契約書に記載のある内容を遵守する“義務”があること
②加盟者は独立した事業主である以上、加盟後に生じたことはすべて 「自己責任」となること
③フランチャイズ加盟も事業である以上、様々な事業リスクが存在すること(リスクのない事業はありえない)
本問題を考えるにあたっては、このフランチャイズシステムの仕組みを理解したうえで考える必要があります。
(2)加盟者が負うリスク
前述の通り、フランチャイズ加盟は事業であり、かつ加盟者は独立した事業者であるわけですから、フランチャイズ加盟にあたり、加盟者は当然になんらかのリスクを負うことになります。
最もわかりやすいリスクでいえば「売上が想定通りに上がらず収益を得ることができないリスク」と言えるでしょうが、それ以外にも加盟者はフランチャイズ加盟にあたり様々なリスクを負うこととなります。
例えば、チェーンに加盟することのリスクが挙げられます。
仮に、最近話題になっているSNS等の不祥事が同一チェーン内で発生した場合、自身の店舗以外で生じた問題であるにもかかわらず、加盟店の売上にマイナスの影響を及ぼす恐れがあります。
その他にも、例えばチェーンの方針が変更されることにより、加盟者が必要ないと感じていたとしても、追加投資が求められるようなこともあるでしょう。
そして、そのようなリスクの中には、加盟するフランチャイズ本部が営むビジネスモデルに関連するものも含まれることになります。
例えば、コンビニのビジネスモデルでは、24時間・年中無休営業は絶対的な原則として存在しています。
その原則を徹底し続けてきた(もちろんそれだけではありませんが)ことで、コンビニの存在価値が社会から高く評価され、国内で6万店弱を展開するまでに至っているものと考えられます。
コンビニの24時間・年中無休営業の原則を変えたときに、従来と同じ結果が出せるかどうか、それはやってみなければわからないことです。
「じゃあやってみればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、仮に営業時間・日数の変更を行った結果、顧客から見たコンビニの魅力が低下し、チェーン全体の売上が低下するような事態になったとしたら、それこそ影響範囲は甚大(業界大手のセブンイレブンで言えば、2万店舗強あります)で、取り返しのつかない事態になりかねません。
ですから、コンビニ各社は24時間・年中無休営業の原則にこだわりを持っているのでしょうし、多くの加盟店の収益に責任を持っているフランチャイズ本部として、自社のビジネスモデルには当然にこだわりを持つべきとも言えます。
ここで考えなければならないことは、コンビニの24時間・年中無休営業が原則であるということは、フランチャイズ契約を締結する前からわかっている、ということです。
24時間・年中無休営業をするということは、経営者自身が24時間働かなければならないリスクがあることは、常識的に考えてもわかります。
先にも述べた通り、フランチャイズ加盟者は独立した事業主なのですから、加盟する前にそのようなリスクがあることを十分に理解したうえで、覚悟を決めて加盟するべきとも言えます。
また、今回の問題のケースで言えば、営業時間変更前に従業員が大量退職したことで人材不足に陥ってしまったことが背景にあるようですが、必要十分な従業員を確保できないリスクは、コンビニ以外の店舗ビジネスを営む経営者であれば誰しも負っているリスクです。
また、その人手不足が、運悪く生じてしまったのか、それともマネジメントの問題で必然的に生じているのか、という問題もあります。
もちろん、独自事業であれば、人が不足しているときには営業時間を自由に変更すことができますが、ブランド力が低く、フランチャイズ加盟と比べて売上が低い独自事業の場合、人手不足により営業時間を短縮することは、経営的には致命傷にもなりかねません。
ですから、経営者としては、人手不足に陥らぬよう、様々な努力と工夫を重ねていくことが求められているものと言えます。
以上のように考えみると、フランチャイズ本部が悪で、フランチャイズ加盟店が正というような簡単な問題ではないことがわかります。
(3)トラブルを回避するために本部として取り組むべきこと
では、今回のようなトラブルの発生を防止するためにフランチャイズ本部が取り組むべきことにはどのようなことがあるでしょうか。
当社としては大きく以下の3つが重要であると考えています。
①加盟者が負う事業リスクを洗い出し、加盟希望者に十分に説明する
本部と加盟者希望者の間には、営む事業内容やフランチャイズシステムについての圧倒的な情報格差がありますから、本部としてはその情報格差を埋める努力に全力を尽くすべきでしょう。
中小小売商業振興法や独占禁止法では、本部による事前情報開示事項が定められていますが、それらは必要最低限の情報と捉えるべきです。
本部は当該事業のプロフェッショナルなわけですから、加盟者が当該事業を営む上で負うリスクは十分に想定することができるはずです。
例えば、24時間営業を原則とする本部であれば、労働者の確保・育成・定着を実現するためには加盟者の高い意識と努力が不可欠であること、いかに高い意識と努力があったとしても状況によっては人手不足問題が生じ、その結果として加盟者が長時間にわたり労働しなければならなくなるケースが生じうること、などのリスクを十分に説明する必要があるでしょう。
事業におけるリスク開示のお話をすると、ネガティブに捉える本部経営者も少なくありませんが、双方にとって望ましい未来を得るために事業リスクを十分に開示することは必要不可欠な要素と心得るべきです。
②事業リスクを負う覚悟のある加盟希望者のみを加盟させる
①に関連することですが、事業リスクなどを十分に説明したうえで、加盟希望者の姿勢や言動からそれらのリスクを負う覚悟があるかどうかを読み取り、仮に加盟希望者に当該リスクを負う覚悟がないと感じられる場合には、どんなに加盟者を確保したい状況であっても加盟させるのを避けるべきでしょう。
出店を最優先するがために、加盟希望者の見極めをおろそかにすることは、将来トラブルを引き起こす根源となりかねない点に注意が必要です。
③契約面だけではなく、加盟者の気持ちを配慮した対応を行う
どんなに①②を努力したとしても、トラブルを100%避けることは困難です。
何らかのトラブルが生じた場合には、契約内容だけを絶対視するのではなく、加盟者の立場を踏まえた対応をするべきでしょう。
今回のケースで言えば、初期対応時に違約金や契約解除の話があった(事実かどうかは不明ですが)ようで、その初期対応のまずさが問題を深刻化させたように感じます。
まずは本部と加盟者双方の立場を確認したうえで、円満に着地できる点を模索する意識が大切といえるでしょう。
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