ハンバーガーチェーン最大手であるマクドナルドの業績回復が続いています。
10月5日に発表した9月の既存店売上高は前年同月比7.3%増の結果で、既存店売上高は22カ月連続でのプラスとなったようです。
2014年に発生した期限切れチキンの問題や異物混入問題といった事故発生以前の水準には戻っていないものの、その回復力にはマクドナルドの底力を感じさせられます。
この業績回復とのれん分けには深い関係が読み取れます。
といいますのも、実はマクドナルドは日本最大級ののれん分けチェーンなのです。
その規模感は、のれん分け店舗で1000店舗を超えるほどのものです。
そこで今回は、マクドナルドの業績回復から読み取れるのれん分けの利点を考えてみます。
なお、フランチャイズとのれん分けについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
(1)統率力
まず、2014年に発生した事故以降のマクドナルドをみて最も強く感じられる点は「統率力」の強さでしょう。
事故直後のマクドナルドは連日メディアに取り上げられ、消費者からの信頼はまさにどん底状態でした。
仕事柄、ターミナル駅のファーストフード店を利用することが多いのですが、当時は新宿や池袋店舗のピークタイムでさえ、席が空いているような状況でした。
そのような状況下、一般的なフランチャイズシステムであれば、加盟店の大量離脱が生じてもおかしくありません。
ところが、マクドナルドの場合、店舗数は減ったものの、直営店舗の整理が大半で、事故の大きさと比較してフランチャイズ加盟店の減少が非常に少なかったといえます。
これは、本部による支援策(ロイヤルティ減免等)による効果もありますが、その本質は“マクドナルドが好きで、その理念や経営方針が浸透している元従業員オーナー”が多かったからこそ、厳しい状況下でもチェーンを見捨てなかったことにあるのではないかと感じます。
仮に、事故後に加盟店の大量離脱が生じていた場合、さらなるブランドイメージの低下を招くこととなりますから、現在のマクドナルドのV字回復は実現不可能だった可能性もあります。
この統率力は、のれん分けシステムの1つの強みといえるでしょう。
(2)運営力
次にあげられるが「運営力」が高かった点です。
急な環境の変化が生じ、チェーン全体の経営状況が厳しくなった際、その危機を乗り切るために最も大切なことは、各店舗の運営力が高いことです。
例えば、過去にBSE問題が生じた際、たった1日で牛肉を取り扱うチェーン店はとてつもなく厳しい環境下に投げ出されることとなりました。
発生前と比較して売上30~50%減というのが当たり前の状況です。
そのような状況下では、お客様を満足させるサービスが提供できない、適切な経費コントロールができないなどの運営力の低いフランチャイズ加盟店舗は軒並み淘汰されてしまいました。
一般的なフランチャイズシステムでは、直営店舗と比較してフランチャイズ加盟店舗の運営能力が低くなりがちであり、危機的状況下では、加盟店舗が大量閉店に追い込まれることが往々にして生じます。
ところが、マクドナルドでは、そのような危機的状況下の中でも基本QSCの見直しと店舗経費の削減を徹底することにより危機を乗り切ることに成功しました。
これは、一定の運営能力を有する元従業員に対してのれん分けを行うフランチャイズシステムであったからこそ実現できたことといえるでしょう。
(3)急な業績変動への対応力
最後に、急な業績低下に対するマクドナルド本部の対応力を上げておきたいと思います。
前社長である原田氏の時代に、マクドナルドは直営店舗の多くをフランチャイズ店舗に転換する方針を取り、FC店舗の割合はおよそ10年の間に3割から7割に上昇しました。
仮に、危機発生時に直営店舗が7割を占めていた場合、マクドナルド本部は非常に大きなダメージを受けることになったでしょう。
なぜならば、直営店舗の業績低下は、フランチャイズ加盟店舗の業績低下と比較して、本部に対してより大きな影響を及ぼすことになるからです。
チェーン全体の損失を多くのフランチャイズ加盟店舗で負担することで、本部経営に対するインパクトを抑えることができたのです。
直営店をフランチャイズ加盟店に転換していくマクドナルドの戦略には否定的な意見が多いことも事実ですが、危機的状況への対応といった観点ではプラスに働いたことは間違いありません。
マクドナルドは、この危機下でフランチャイズ加盟店に対して多くの支援を実行しましたが、そのような対応策がとれたのも本部の経営体力を残すことができたからといえます。
このように、のれん分け・社員独立制度導入は、従業員に対してのメリットだけではなく、本部経営に対しても大きなメリットをもたらすこととなるのです。
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