人材育成

人材育成方法の見直しの必要性とポイントとは

人材育成方法は、変化する環境や社員に応じて現場でのチェックや見直しを定期的にすることが大切です。
これを行わないと人材育成が属人的になり、会社全体での人材のレベルアップにつながりませんし、現場で望ましくない育成方法が日常的に行われてしまうかもしれません。

変化が激しく何が正解かわからない現代において、自ら考え自発的に行動できる社員を一人でも多く育成することは、会社の大きな課題の1つであり、会社を成長させるためには欠かすことができないものです。
そこで、見直しのポイントとして、個人に頼らず組織的に対応すること、経営層、管理者から教育をすること、そして、後輩社員からフィードバックを受けることについて、ご説明します。

なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。

事業拡大したい経営者必見!のれん分け制度をつくる7つの手順と、成功の3つのポイント

(1)後輩社員を厳しく指導する先輩社員

先日ドキッとする場面に出会いました。夕食のために近くのスーパーに買い物に行った時のことです。夕方でしたので、多くの買い物客でいつものようにお店は忙しそうでした。するとどこからか

「この前またダメだったから、今度はしっかりやれよ。いつになったらできるようになるんだ」

と叱責するような言葉が聞こえてきました。
それを耳にしたとたんハッとして、買い物の手を止めてその方向を見てしました。

先輩店員が後輩を作業指導している様子でしたが、それは明らかに指導の領域を超えているようなものでした。
また、大きな声でしたので、私の周りの買い物客にも聞こえていました。

その先輩はそれで後輩が業務をできるようになると思っているのでしょうか?
もしくは、厳しく指導するところをあえてお客に見せることで、しっかりした社員教育をしているところをアピールしたいのでしょうか?

私はとてもビックリしてしまいました。
後輩が仕事をできるようになり、一人前に育つためには、まったくの逆効果だからです。
よく行くスーパーでしたが、その日はそこで買い物をする気がなくなり、別のスーパーに行きました。

また、その数日後の週末に駅の近くの洋菓子店に行きました。
この地域で数店展開する手作り感のあるケーキやお菓子を提供するお店です。

その日は大阪からお客様がくるので、手土産を探していました。
お店に入りお菓子を探していると、カウンターで後輩社員が先輩社員にケーキの包装の仕方について聞いていました。

ところが、その先輩の指示がとても厳しい口調だったため、後輩社員はおどおどしながら包装をしていました。
まだわからないことがある様子でしたが、それ以上怖くて聞けない感じでした。
この先輩社員はとても怖い先輩に映っているでしょう。

このお店は、ケーキのショーウィンドウがL字型にあり、壁の棚にいくつかの焼き菓子が飾ってあるだけのこじんまりしたお店です。
店員やお客の話声は、誰の耳にも入ります。そのなかでの出来事でしたので、私はドキッとしてしまいました。
これでは、後輩社員は委縮をするばかりで、十分に業務を習得できるようになりません。
また、辞めてしまうかもしれません。
とても好きな洋菓子店でしたので、少しがっかりしてしまいました。

これらのことがちょうど立て続けに起こりました。
現在多くの会社で人材育成に力を入れ始めています。
しかし、今回私が目にしたのは、まだまだ現場には、人材育成の望ましい取り組みというのが、浸透していない様子でした。

(2)人材育成方法の見直しのポイントとは

本コラムをお読みになってくださっている経営者の皆様の会社はどうでしょうか?
お伝えしている内容をご理解いただいていれば、このようなことは決して起こっていないと思います。

しかし、人材育成方法は、変化する環境や社員に応じて現場でのチェックや見直しを定期的にすることが大切ですので、振り返りをすることをお勧めします。
その際、見直しは次のように進めるとよいでしょう。

個人に頼らず組織的に対応する

人材育成は組織的に対応することが必要です。
実際の現場では、大企業ではない限り指導専門の社員はいませんので、ほとんどの現場で先輩社員による後輩社員へのOJT(=オン・ザ・ジョブ・トレーニング。現場での実践を通じた教育方法)が行われています。

先輩と業務をしながら実務を覚えることは最も簡単で早い習得方法ですが、指導マニュアルなどが整備されていない場合は、成果は先輩社員の仕事をこなす能力と指導力次第になります。
これでは人材教育が属人的になってしまいます。
これをある一定期間以上続けていくと、店舗間などで作業が異なるようになり、同じ効率での業務や顧客への同じサービスができなくなってしまいます。

そこで、人材育成を経営方針の1つに加え、社内で重要性を周知した上で、店舗間での交流や情報共有制度、オンライン研修など具体的な対応策を立案し、組織として対応するようにします。
対応策を立案、実行するまではたいへんかもしれませんが、しっかり策定できれば、とても効果的で効率の良い人材育成方法になります。

経営層、管理者から教育をする

組織的に人材育成を行うには、はじめに経営層や管理者を教育します。
人材を育成するためには、望ましい心構えや方法があります。

私が遭遇したケースのように、先輩社員が教育ということを十分理解していない場合があります。
そのため、もし経営層や管理者の教育を行っていないのであれば、その教育からスタートをします。

人材教育には、心構えや方法に加え、一定のコミュニケーション能力、問題解決能力、マネジメント能力、評価能力などが求められます。
勤務経験のある先輩社員といえども、これらが身についている人は多くはありません。

教育を受けさせることで、人材育成に必要なことを理解させ、求めるレベルに高めることが可能です。
部下を人前で叱責すること、しかもお客様の前で自尊心を失わせるような言動をすることは、決して部下を成長させたり、モチベートしたりしません。
また、管理者としての教育を受けさせることで、指導者としての自覚も出て、日頃の業務もさらによくなる効果があります。

後輩社員からフィードバックを受ける

上記2つを確認、実施した上で、部下からフィードバックを受ける機会を設けます。
つまり、取り組んだ内容について実際部下がどう感じているか、業務ができるようになったのか、指導方法についてさらに気づくことがないかなどをヒアリングします。

これらがないと、人材育成方法を導入することが目的になってしまい、成果が出たかがわかりません。
人材育成の効果を知るには、部下の働きぶりに注目することと部下に確認することです。
部下から定期的にフィードバックを受けることで、人材育成の取り組みや店舗の課題などを把握し、社内制度を見直して継続的によりよい仕組みとしていきます。

これは、商品やサービスを提供した顧客の声に耳を傾けることと同じです。
顧客からのフィードバックを経営に活かすことで、会社の商品やサービスがより魅力的で競争力の高いものへとなります。

(3)人材育成方法を振り返り会社の成長へとつなげる

人材育成は自己流ですぐにできるものではありません。
個人に頼ったままでは、いつになっても会社全体での人材のレベルアップにつながりません。

会社を成長させるためにはビジネスの機会を逃さず強みを活かすことが必要ですが、それを実現するのは人材であり、そのベースとなるのは人材の能力アップです。

変化が激しく何が正解かわからない現代において、自ら考え自発的に行動できる社員を一人でも多く育成することは、会社の大きな課題の1つです。
部下の教育がうまくいっていない場合は、仕組みに改善の余地があるということです。
人材育成方法を定期的に振り返ることで、会社の足腰を強くすることができるでしょう。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

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