人材育成

自発的人材が育つ土壌を作るための人事管理制度とは

最近の環境変化により、求職者は、会社のスキルアップやキャリアアップ支援にとても関心が高くなり、人材育成に力を入れない会社には人材が集まりにくくなっています。

そこで、自発的人材が育つ土壌を作るために、人事管理制度の採用、配置、評価と報酬、育成の4つを総合的に設計するための留意点をご紹介します。

なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。

事業拡大したい経営者必見!のれん分け制度をつくる7つの手順と、成功の3つのポイント


(1)求職者の業界や会社を見る目が大きく変わった

コロナウィルスは働き方に対する価値観を大きく変えています。
テレワークなどの積極的な導入により、職場にいなくても仕事ができる業種や職種が明確になりました。

また、フレックス制度や短時間勤務制度などの活用により、介護や育児との両立が可能になる柔軟な勤務制度がいっそう求められています。

さらに、コロナ前であれば、旅客、輸送、宿泊、旅行などの業界の会社は新卒の学生から人気があり、外国からの旅行客が増え大変活気づいていました。

しかし、誰もが想定できない事態が起こり、昨今では求職者の業界や会社を見る目が大きく変わりました。

(2)自発的人材を育成するために採用、配置、評価と報酬、育成の人事管理制度に一貫性を持たせる

このような不確実性が高まった社会においては、多くの求職者は会社に頼らず働きながら自律する力をつけようとしています。

この結果、会社のスキルアップやキャリアアップ支援にとても関心が高くなり、人材育成に力を入れない会社には人材が集まりにくくなるでしょう。

そのため、人材育成に力を入れる会社が増えているのですが、人材育成とは教育・訓練だけに注力すればよいものではありません。

会社の人事管理制度全体と一貫性を持ちバランスをとることが重要です。
人事制度の最終目標は、社員が活きいきと働き、会社に貢献できる自発的な人材に成長するようにすることです。

そこで、一般的な人事管理制度の採用、配置、評価と報酬、育成の4つを総合的に設計するための留意点をご紹介します。

採用

はじめに、会社の経営理念や方針を理解した人材を採用します。
ホームページや求人票などで、自社の目指す姿や社会への貢献の仕方をしっかり示します。

経営理念や方針に共感して入社した社員は、その会社で成長し活躍しようと前向きな気持ちを持っています。
同じ方向性や似たような考え方を持った先輩や社員と働くことは組織に対する帰属意識を高め、離職率の低下につながります。

入社前にしっかり自社を理解してもらうことで、入社した後の気持ちの齟齬(そご)をなくすことができます。
コロナ禍の今自社の経営理念・方針とは何かということを改めて見つめてみましょう。

そして、しっかりと社内外にアピールします。
共感を得られる目標であれば、多くの人材が集まってきます。

配置

次に、社員の志向とスキルと必要な業務を考慮し、適材適所に配置をします。
自発的に行動するためには、社員が行動の目的を理解し、心のなかから動機づけられることが必要です。

そのためには、社員の志向とやる気を重視します。
すべては社員の思い通りになりませんが、社員が納得したうえで職場に配置をします。

希望の職種に対してスキル不足であれば、その業務をできるように研修やOJT(=On the job training, 現場での経験者による職業訓練)などで知識や経験を習得させます。
まずしっかり業務をこなせるようにすることが大切です。

また、希望の職種に空きポジションがなければ、他の店舗や勤務地を提案したり、近い将来担当できるように、そのために今取り組むべき業務などの代案を提示します。

配置は現時点だけではなく社員の将来も見据えます。
今は興味があっても同じ業務ばかりをしていたのでは気づきや成長がなくなってしまいます。

業務に習熟してきた時点で、会得した経験やスキルを活用できる次の業務へチャレンジさせます。
このような前向きなコミュニケーションや配置転換(異動)が社員をやる気にさせ成長させます。

評価と報酬

仕事を任せたら適切な評価をします。
公正で透明な評価が社員のやる気を持続させます。

社員が興味や好奇心などから自発的に業務に取り組んだとしても、アウトプットやそのアウトプットを出す過程が正しく評価されなければ、すぐにやる気を失ってしまいます。

そこで、公正で透明な評価制度とするために、評価の仕組みや基準をあらかじめオープンにしておきます。
職能や職種などに応じて求められるレル(達成目標)を文章で明確にしておき、その達成度合いを評価します。

目標は測定しやすいように売上げや回数などできるだけ定量的に設定します。
しかし、すべての業務が定量的に測れるものではありません。

仕事に対する姿勢や取り組み具合、工夫した点など定性的な項目も加え業務を達成するための過程も重視します。
短期間で成果がでない業務やチームワークなどもフォーカスされるため、組織が活性化するとともに、自発的な行動を促すようになります。

そして、評価結果と報酬を連動させます。
評価によって得られる成果を事前に公表し開示しておくことは人事制度の透明性を高めるうえで重要です。

育成

人は短期間で容易に成長しませんので育成計画を立案します。
育成計画では、育成の基本である研修とOJTの計画を体系化します。

例えば、新入社員が入社してからリーダークラスやマネジメントクラスになるまでを職種別に作成します。
時系列に受けるべき研修やOJTの内容を明確にして、その準備をしておきます。

一方、中途採用者に対しては、体系化した計画には固執しすぎず、知識や経験の有無や能力度合いに応じて、不足部分を補うようにするなど個人別にカスタマイズします。

そして、計画実行後、必ず半年や1年で計画の進捗や結果を社員とともにレビューします。
計画を立ててから時間が経てば、社員は成長し社会のニーズも変化します。

状況に合わせて柔軟に育成計画を見直すことが大切です。
また、社内の他の店舗や部署との交流や社外の業界団体や他社が参加する会同、セミナーなどへの参加、業務のモデルケースを使用した事象の分析や業務の深掘りなど、仕事内容にいっそう興味が持てるような機会を提供します。

人は内面から動機づけられない限り自発的に考えたり行動したりしません。
業務内容を習得させるとともに、関心や探求心、好奇心などのより物事を知りたいという人間が本来持っている気持ちを刺激するように努めます。

(3)自発的人材が育つ土壌がある会社に人が集まる

このように求職者に選ばれる会社になるために、採用、配置、評価と報酬、育成の人事管理制度が一貫性を持つように総合的に設計します。
そして、人材育成に力を入れている会社であることを積極的に社内外にアピールします。

社員を大切にしない会社はブラック企業ではないかと疑われたり、離職者に口コミサイトにひどい書き込みをされてしまうリスクもあります。

人材育成に力を入れるということは、人の可能性を信じることであり、その取り組みが自発的人材を育成される土壌を作り、社内外に伝わることで人が集まる会社となります。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

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