多店舗展開

経営計画を作って変化を起こす行動のきっかけにする(後編)

(1)重要度が増す経営計画策定

環境変化が急速に進む現代において、変化することの重要度が増しており、故にその行動のきっかけとなる経営計画策定の重要度も増しています。事業を継続させていくためには、計画を策定して自ら変化を起こす行動をすることが大切です。
前回までの本コラムで、経営計画を作成する意義や構成、経営理念、経営方針などについては触れましたので、今回は戦略と具体的施策からポイントを解説します。
前回コラム「経営計画を作って変化を起こす行動のきっかけにする(中編)」はこちら 

戦略と具体的施策

戦略と具体的施策は、経営計画策定期間における達成すべき目標と対応策です。販売、生産、商品・サービス、技術開発・設計、人事、財務など、いくつかの取り組む領域にわけて作成します。例えば、環境分析の結果、飲食店が事業拡大するために店舗展開が必要な場合、戦略として課題とともに具体的な目標を示し、達成するための具体的施策を策定します。

[具体例]
・戦略
・課題:店舗展開
・目標:5年間で5店舗新規出店する
・具体的施策:
・店長やリーダー候補など人材育成と新規採用
・人事評価制度の確立
・店舗の立地や物件の調査・契約
・店舗設計と工事、調理器具や備品の調達と設置
・メニューや調達先の見直し
・業務マニュアルの整備(接客と調理)
・宣伝や広告など集客計画、開店イベント
・出店計画に基づく資金調達 など

目標は、期間内で楽観的、悲観的になりすぎず、難易度としてある程度背伸びをしたものにしましょう。全く達成不可能な目標では、社内外の関係者に対して約束を守れませんし、従業員はやる気を失ってしまいます。また、実現が簡単な目標ではすぐに達成してしまい、計画としてふさわしくありません。
具体的施策は、達成条件と実行時期、実行責任者を具体的に設定することがポイントです。これらが揃っていないと、絵に描いた餅の計画になってしまったり、すべてを経営者が背負い込んでしまいかねません。経営者は、計画達成の最終的な責任者ですが、すべて一人で対応できるものではなく、任せられるところは幹部社員やリーダーに任せ、具体的施策の進捗や達成度合いを確認したり、人材の配置を変えるなど、マネジメントに集中する体制にすべきです。特に店舗ビジネスでは、多店舗展開が進むにつれ、経営者のマネジメント範囲が加速度的に広くなる特徴があります。経営者が各店舗に細かく関与することは実質的不可能となりますから、マネージャーや各店舗責任者が、会社目標の達成に向け主体的に取り組む体制を構築することが極めて重要となります。
そのために、幹部社員などを含めて定期的にブレーンストーミングをして、内部・外部環境についての認識を統一・共有するとともに、実行しながら施策の成否をレビューし、方向や施策の修正をするようにしましょう。これらの取り組みが、会社目標の達成に向け主体的に取り組むリーダーの育成につながります。
また、中小規模企業は経営資源や時間が限られていますので、具体的施策をたくさんあげればよいわけではなく、経営への影響度の大きいものから優先順位をつけることが大切です。実行することと同時に、何をしないか、を決めることが戦術に集中するために重要な経営判断になります。

損益計画

損益計画は、利益計画と資金計画をたてましょう。損益計算書の実績をベースにして、将来の利益計画を作成します。
売上高は、計画を実行しない場合の既存の売り上げの推移を見込んだ上に、今回検討した具体的施策による売り上げ増加分を反映します。前述の飲食店の新規出店の例であれば、既存店舗の売り上げが横ばいとすると、新規出店により出店ごとに売り上げの伸びを加算します。この売上高も実行後にレビューすることができるように、可能であれば、ある程度具体的に想定することが望ましいです。単に毎月の売上高200万円とするのではなく、来店客数や平均単価などにもとづいて計画できていれば、売上高を達成できていない場合、原因が来店客数なのか、平均単価なのかなどの分析が可能になります。
次に、コストである売上原価と販売費および一般管理費ですが、まず売り上げの変化に応じた増減する材料費などの変動費を計算します。その上で、家賃、水道光熱費、人件費や設備投資による減価償却費、広告宣伝費などを反映し、売り上げとコストの整合をとります。そして、営業利益がプラスであればよいですが、マイナスの場合は、売り上げを上げるか、コストを下げるか、計画の練り直しを行います。営業外については、借入金の支払い利息を忘れずに考慮します。
利益計画を作成したら、資金計画を作成しましょう。利益計画にもとづき、売上債権の回収と材料費や人件費などの支払いを考慮した運転資金と、出店時の設備投資などに必要になる投資資金を合わせます。資金計画までできていると金融機関に対して資金繰りの相談がしやすくなりますし、とても説得力のある計画となります。
損益計画を作成したことがない場合は、少し時間がかかるかもしれませんが、幹部社員を巻き込みながら作成すると、作成した経営計画の理解度が大いに高まりますのでお勧めです。
なお、売上や利益などの損益計画(目標)だけを作成している企業を目にすることがあります。損益計画は大切なものですが、損益計画単体で作成していてもあまり意味がありません。なぜならば、計画の達成未達成に関わらず、そこに具体的な行動が伴っていなければ、その結果はただの偶然に過ぎないからです。損益計画は、それを達成させるための具体的な取り組みが伴ってはじめて意味を持つことを認識することが大切です。

(2)経営計画を活用する

経営計画は、作成して終わりではなく、作成することがスタートです。経営計画により目指すべき方向への対応策を明確にして、事業環境が急速に変化する中、会社を変化させる行動のきっかけにしましょう。変化に対応するため経営計画の重要度が増しています。経営計画は、経営理念策定⇒内部・外部環境分析⇒経営方針⇒具体策という戦略策定プロセスとなりますので、変化を利用して会社の成長につなげることや、経営の方向性を見誤るリスクを小さくすることができます。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

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