経営者の中には、リーダータイプの性格の方で、パワフルな積極性で事業を拡大させてきた方がいらっしゃいます。
しかし、社員の育成も同じやり方で進めようとすると、経験を重ねた社員とはこのやり方でうまくいっても、若手社員とはうまくいかないことがあるようです。
現代の若者は、中堅社員と比べて、育った時代も環境も異なります。当然、育成のあり方も異なるものになるのです。
そこで今回は、経営者が若手社員と接する際に工夫するとよいポイントについてまとめます。
なお、多店舗展開を加速する人材育成について詳しく知りたい方は、こちらのコラムも合わせてご覧ください。
(1)力強いリーダーシップについてこない若手
「最近、今までのやり方では、ちょっと無理かなと思うようになったんです」
これは先日お話したサービス業の経営者の方の言葉です。
タイプとしては、ぐいぐい引っ張っていくリーダータイプの性格の方です。
社員の育成を進めていますが、これまでのやり方に疑問を持つようになったそうです。
この経営者の方は、とても人にやさしく面倒見のよい面も持ちながら、持ち前のパワフルな積極性で事業を拡大させてきました。
社員や取引先から多くの信頼を集めています。
変化が多い近年の市場環境のなかで中小企業を経営していくには、このくらいの力強さが必要ではないか、と思わせるような方です。
経験を重ねた社員とはこの経営手法でうまくいっていました。
ところが、同じように若手にも接していたところ、社員の反応がわかりづらく、仕事の進め方や作業方法など伝えても仕事ぶりがよくならない、と感じ始めたということです。
(2)若手社員との接し方で工夫するポイント
具体的にお話を伺うと、若手社員との日頃の接し方について、特に、業務が忙しい時などは時間の余裕もないため、作業指示などつい言葉が厳しくなる場合があるようでした。
さらに若い社員にとても期待していることもわかり、これも合わさって、つい力が入ってしまっていたようです。
今の中堅社員は、叱咤激励することで、「よし次はやってやろう」と前向きにとらえ、仕事ぶりを改善し、成長してきたようです。
ところが、現代の若者は育った時代や環境が異なるので、中堅社員と同じような対応では、同様の成果は望めないのです。
そこで次のように少し接し方を工夫したらどうでしょう、とお話しました。
メリハリをつける
この経営者の方の良いところ、強みは、持ち前のリーダーシップです。
これを大きく変える必要はありません。
ですから若い社員と接するときには、従来のやり方に加え、「支援型リーダーシップの要素」を取り入れるのです。
支援型リーダーシップとは、社員の持つ力を最大限に発揮させること第一に考え、その環境づくりを行うことです。
ポイントは、対話を心掛ける、社員からのフィードバックに耳を傾ける、フォローアップする、一人ひとりとの接し方をそれぞれに合わせて調整することです。
上司や経験者として上からの目線だけではなく、横からバックアップし勇気づけるイメージです。
接し方にメリハリをつけることで、言葉が社員の心に届くようになります。
双方向にコミュニケーションする
対話をする際には、一方的にならず、双方向になるように気を配ります。
作業指示などは、上司や先輩など経験者からする必要がありますが、必ずわかったのか理解の程度を確認します。
どんなに正しい方法やよい方法で作業を伝えたと思っても、社員にそれが伝わっていなければ意味がありません。伝わったことが伝えたことです。
また、業務以外でも休憩時間や移動時間など積極的に対話を持つ機会を設けます。
コミュニケーションの回数を増やすことで、社員との距離が縮まりやすくなります。
ご自身の経験談や失敗談を語り、思わぬ一面を知ってもらったり、社員が考えている業務改善案を尋ねてみたり、社員の興味があることや週末の過ごし方などを聞いたりして、対話の半分以上の時間を、社員の話を聞くことに費やします。
さらにオンとオフの両方の会話を意識します。
社員にとって話を聞いてもらうことは、信頼感の醸成につながります。
フォローアップする
業務の対話をしたら、必ずフォローアップします。
気づきを与えたとしても、そのままにしてしまっては、あの時だけだったのか、と社員は思ってしまいます。
社員に、置き去りにされている、認められていないのではないか、など疑心暗鬼の気持ちを持たせないことです。内向的な人ほどそのような気持ちを持ちやすいと言います。
疑念の気持ちは不安とつながり行動を消極的にします。
社員との間に必要な信頼感や安心感と対極のものです。
人材育成の目標は、社員が仕事に対するモチベーションを高め、自主的に考えて活動し、成長することです。心理的な安心感が積極的で自発的な行動へとつながります。
もし、つい厳しく言い過ぎてしまったなどと感じたときは、必ずフォローアップをします。
その時は忙しくて時間がないとしても、その後必ず時間を見つけて、なぜそれを伝えたのか、冷静に客観的に説明します。
また、社員一人ひとりと接し方をそれぞれに合わせて調整することも必要です。
もし社員が日頃から対話しやすい先輩社員などがいる場合は、先輩社員の力を借りることもよいでしょう。
例えば、先輩社員から、この前社長が君のことをほめていたよ、とか、仕事の仕方に感心していたよ、といった承認する言葉をかけてもらうことは心に響きます。
このような気配りにより、社員を動機付けるのです。
(3)やり方を変えようとするのはなく柔軟に対応する
年配の経営者の方ほど、やり方を変えることは難しいことかもしれません。
変えようとしても、無理が生じたり、長く続かないものです。
そこで、やり方を変えようとするのではなく、接し方を少し工夫することで、若手社員にうまく接することができるようになります。
持ち前の力強いリーダーシップの良い点を活かしながら、人材育成することができます。
つまり、柔軟に対応することです。これは、変化の激しい現代の市場環境において、変化に対応しながら、柔軟に対応策を繰り広げることと同じです。
人材育成も本日お伝えしたような少しの柔軟さが効果的なのです。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
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