キャリア構築とは武器を持つこと
不確実性が高い時代において、会社においても個人においても、強みを維持・強化することはとても大切です。
会社の強みを磨くことは、経営者の方々はすでにお気づきのことと思います。
一方、経営者として社員のキャリア構築について、どれだけ多くの皆さんが真剣に考えたことがあるでしょうか?
ご承知のとおり、市場の変化とともに、社員の雇用環境はますます流動的になってきています。
社員はすでにそのことに気づいており、現在勤務している会社に勤めることで、どのようなキャリアを構築できるか常に考えています。
従って、会社にとって、社員を自社の貴重な戦力とするとともに、社員の定着率向上を図るためには、キャリア構築を支援することがとても大切なのです。
飲食店におけるキャリア構築支援の着眼点
本コラムをお読みになっている経営者の皆さまは、何を意識してキャリアを構築したでしょうか?こだわりのポイントがいくつかあったのではないかと思います。
社員のキャリア構築を支援するにあたり、筆者がまず強調したいのは、“これには自信がある”という強みを社員に持たせることです。
これにより、社会人として“やればできる”いう自信を獲得させることができます。
その上で、強みを支える柱の強化を図ります。
飲食店の例では、調理や接客、調達、販売促進や広報、メニューやサービスの企画、経理、人事などの業務があります。
もし、ある社員の強みが調理であれば、のどごしにこだわった手打ちうどんや独特なスパイスの組み合わせのカレーのレシピなど調理について、一層深化、進化させます。
一言に調理といっても、その範囲は広く深いものです。
例えば、材料の厳選、材料の鮮度や保存、仕込み、火の通し方、味付け、盛り付け、提供方法など直接調理に関係することから、材料のコスト意識や廃棄ロスなど効率に関するところまで、多岐に渡ります。先輩社員とのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング、現場で実務を経験させることで行う従業員教育法)や外部の研修などを通じて、社員に気づきを与えることができます。
その際、受け身にならないように、この教育や研修で何を習得したいのか事前に確認しておきます。
他の業務の着眼点については以下のようなものがあります。
飲食店では、提供する料理が顧客から高い評価を得ることはもちろんですが、それだけでは、お店を繁盛させることはできません。
接客は料理とともに、直接顧客に接するコンタクトポイントです。
顧客が来店してから会計してお店を後にするまで、顧客が快適に過ごし、満足していただけるように工夫しなければいけません。
それには、顧客が来店する前段階の店の雰囲気づくりやサービス提供の準備、来店中の接客、次回また来店していただけるような仕掛けが必要です。
つまり、接客についての知識や経験の充実を図ることを支援することは、店舗で働く社員にとってとても役立つはずです。
調理や接客以外でも、大切な業務がたくさんあります。
調達は、料理の味や魅力を決める材料を決定づけるものです。
また、調達の仕方次第でコストが決まり、料理の提供価格や収益力に大きな影響を与えます。
仕入れ先や調達頻度、支払い方法など、多くのことが店舗経営に関係します。
販売促進や広報も重要です。
どんなによい料理と接客を提供しても、顧客にお店のことを知ってもらい、来店してもらわなければなりません。
それには待っているだけではなく工夫が必要です。
多くの店舗が頭を悩ますところです。顧客ターゲットをどこに絞るのか、広告の媒体としてWebのHPやSNS、チラシなどをどのように活用するのか、戦略が必要です。
販売促進や広告にはコストがかかりますので、費用対効果をよく検討しなければいけません。
メニューやサービスの企画は、そのお店の経営そのものです。
料理や接客、販売促進方法などを通じて提供するサービスは顧客の満足度を左右しますし、お店の収益性に影響を与えます。
企画は誰にでもできることではありませんが、経営者とともに一緒に考えさせることで、将来の幹部候補に成長させることができます。
経理は、資金繰りや納税など、会社経営の基本であるとともに、売上げやコストの情報を活用することで、お店の収入や収益向上に役立てることができます。
財務諸表を分析できることは、人間の身体でいえば、健康診断の結果を読めることであり、数字という客観的な情報にもとづいて、冷静な判断と対応策を考えることができるようになります。
キャリア構築支援は相談に乗ることから
このように、飲食店を例にしても、さまざまな業務があります。
社員のキャリア構築を支援する際に、強みの強化を第一に考えながら、社員が興味を持っている業務の充実を図ります。
そこで、社員が今後1年から3年、5年、10年先を見据えたキャリアプランのなかで、どの業務を自分の武器にしていくのか、どの業務にチャレンジしたいのか、じっくり考えさせましょう。
もしかすると、将来に漠然とした不安はあっても、自身のキャリアについてじっくり考えたことがある社員は多くはないかもしれません。
このような場合は、経営者が自身の経験談や社員の強み、上記の着眼点などを話かけながら、一緒に相談に乗ります。
考えるきっかけを与えることで、自身のキャリアについて興味が湧いてくるはずです。
将来を見通しづらい社会において、社員に“やればできる”という大きな自信を手に入れさせることは、会社経営にとってとても大切なことです。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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