弊社のれん分けコンサルティングをご利用いただく経営者の方は、「自社の従業員のキャリア構築の道筋を考えたい」という方がほとんどです。
今回は飲食業界での事例を見ながら、従業員に「キャリアを考えさせる重要性」やそもそも「キャリア」とは何か、をまとめてみたいと思います。
店舗ビジネスが抱える“社員のキャリアの限界問題”を克服する方法を詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
(1)キャリアを構築する目的とは
飲食業を中心に客足はコロナ前には残念ながら戻ってはいませんが、東京都内は開発ラッシュです。
東京駅周辺や渋谷などでは新しい建物が次々と建設されています。
このような大きな開発ではなくても、街のところどころで、老朽化したビルの建て替えや店舗のリニューアルなどを見かけます。
これらに入居する飲食店やサービス業の多くは、街の人々をワクワクさせ、ニーズにあったサービスを提供することで、成長をしてきました。
それでは、このような事業の成功は、どのように成し遂げられたのでしょうか?
一見華々しく見える店舗でも人目につくようになるまでには、多くの課題を乗り越えてきています。
ビジネスの成功は、一朝一夕ではできません。
一般的に、事業を成功させるためには「ヒト、モノ、カネ、情報の経営資源を、効果的かつ効率的に使って強みを発揮し、顧客ニーズに対応すること」が重要だと言われています。
そのための市場分析手法やサービスの提供の方法、会計や財務知識などは、ビジネス書を見れば、独学で知ることができます。
しかし、これらを読んだからといって、すべての人がビジネスで成功できるわけではありません。
そのことは、実際に会社を経営している方はよくご存じと思います。
大切なことは、こういった理論や定石とともに、現場経験を積みながら失敗と成功を繰り返し、知識と経験、直感(判断力)をフル活用して、経営者として行動できるようになることです。
つまり、地頭力と行動力が必要になります。
加えて「将来の経営者としてあるべき自分自身の姿を想像」し、経営者として行動できるような力を身に着けるために、「意識してキャリアを構築すること」が求められます。
つまり「行動を変えていくために、キャリアを意識することが重要であり、その意識の差によって、今後の生き方が変わってくる」ということを、自社の従業員のキャリア構築の道筋を考えたい経営者には、ぜひご理解いただきたいと思います。
(2)「鳥貴族」を成功に導いた創業者 大倉忠司氏のキャリア
ここで、顧客獲得競争が激しい飲食業界において、安くておいしい焼鳥屋「鳥貴族」を成功に導いた創業者の大倉忠司氏のキャリアを見てみたいと思います。
いくつかの報道資料によれば、大倉氏は、高校2年生のときに、ビアガーデンでアルバイトを始めたことをきっかけに、飲食業の面白さに気づいたそうです。
そして、高校を卒業後、調理師専門学校に入学し、料理の基本を修得しました。
その後、一流ホテルのイタリアンレストランに入社し、接客など飲食・サービス業に必要な経験をしました。
この頃、地元の全品均一料金の居酒屋によく通ったことが「鳥貴族」のヒントになったそうです。
このように大倉氏は、将来を想定しながら、知識と経験、直感(判断力)を養い、思いを膨らませていきました。
もともと直感の鋭さなどをお持ちだったかもしれませんが、それだけで、この成功が成し遂げられたわけではないことが、おわかり頂けると思います。
(3)キャリアとは単に過去の経歴のことではない
キャリアとは、よく世間で使われる言葉ですが、一般的に経歴とか職歴を指すこと多いようです。
英語のCareerからきていますが、車が通ったところを意味する”Car”から派生し、Careerが経歴という意味の言葉になったといわれています。
つまり、キャリアという言葉自体が持つ意味は、現在から振り返った過去のものです。
このように、キャリアを文字通り過去のものと捉えてしまうと、過去の経歴は、その人の歩んできた道を単に示すにすぎず、この意味するところは、本人が昔を懐かしむ以上の価値がなくなってしまいます。
そこで、キャリアという言葉に重要な意味を持たせるには、現在から過去を見るのではなく、現在から将来を見て、自身のキャリアを計画、デザインし、歩もうと考えることです。
どういった過去を歩んできたかではなく、これからどういった道を進むのかを見据えるのです。
従って、キャリアとは、「キャリアプラン」であると考えます。
キャリアプランとは、将来のキャリアの全体計画のことであり、将来なりたい姿をキャリアビジョン、それを実現するために、いつ何に取り組むかを計画することをキャリアデザイン、その道筋をキャリアパスなどと呼びます。
(4)キャリアの視点を変えることが将来の成功を導く
このように、キャリアは、現在から過去ではなく、現在から将来を見ることで、次の行動につながり、自分に役立てることができます。
過去ばかりをいくら見ても、過去は変えることができません。
変えることができるのは、今であり、将来です。
将来なりたい姿を想像し、そのために、今何をすべきか、3年後、5年後、10年後に何をすべきか、取り組むべき課題を明確にします。
現在の延長線上で毎日過ごしていても、なりたい姿には到達できないでしょう。
つまり、従業員に自分のキャリアを考えさせる際に、必要なことは、「過去を振り返りつつ、将来の
なりたい姿を想像し、そのために今何をするべきか」を明らかにすることと言えます。
それがキャリアプランです。
そのキャリアプランにもとづいて習得した知識や経験を、社内で活かすのか、もしくは会社が経営者になる道を用意して独立者になっていくのか…その出発点が「従業員にキャリアを考えさせる」ことであり、視点を過去から将来に変えることで、「今」の従業員の行動が変わってくるでしょう。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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