多店舗展開

考える習慣を身につけさせるスキルアップ支援

「言われたことはしっかりやってくれるが、それ以外のことはなかなかやってくれなくて・・・」
「進んで現場の改善をしてくれると助かるのですが・・・」

上記は、最近お話を伺った鍼灸整骨院チェーンを経営する経営者の言葉です。
残業時間の上限規制や年休取得など働き方改革が推進され、従業員一人ひとりの働き方に関する意識が変化しています。加えて、人手不足の状況は変わらず、経営者やマネージャーへの人的な負担はますます高まっています。法改正により、残業時間の上限規制などが順次会社の義務とされていきます。業務の本質が改善されなければ、経営者やマネージャーなどの管理職にそのしわ寄せがきてしまいます。経営者といえども、一日24時間働けるわけはなく、経営者の長時間労働によるその場しのぎの対応では、会社の経営を長続きさせることはできません。
そのような中、従業員を人財と考え、自ら問題点を発見し、改善策を考え、行動して、問題解決をする自発的人材の育成が重要になってきます。自発的人材が経営改善の一助となることで、人材不足問題が解決するだけでなく、会社の持続的な成長につながります。

能力評価シートを活用して、従業員に考える習慣を身につけさせる

自発的人材育成を実施するには、キャリア形成支援により、従業員の中長期的なキャリアアップを見通すことを支援し、仕事に対する自発性を高めます。その上で、スキルアップ支援 を行います。(図1参照)。なぜなら、先行き不透明な世の中において、自分自身のキャリアを見える化し、何があっても生きていける能力を身に着けることが、従業員のモチベーションアップに不可欠で、それが、自発的人材育成の前提となるからです。

図1 自発的人材育成の考え方と仕組み

従業員が決められた業務をできるようになるだけではなく、進んで現場の改善をするなど従業員の自発的な行動を期待するには、従業員自身に業務内容を考えさせて取り組ませる、スキルアップ支援が必要です。そのためのポイントは、以下の通りです。

・部下の課題を踏まえて、目標を上司と部下ですり合わせて設定
・具体的に取り組むことを、部下が考えて設定。それを上司がレビューして適正な内容に変更

上記を踏まえることで、部下は自ら考える習慣が身についていきます。上司がただやるべきことを指示するのではなく、自らが抱える課題を解決するための取り組みを考える機会を提供します。その考え方に対して上司が指導することで、考える能力も高まります。また、目標達成に向け具体的に取り組むことを明らかにすることで、取り組み後に行動の振り返り(達成できたか、達成できなかったか)が可能になります。結果として、自ら考え、行動できる人材が育つことにつながります。

具体的に、外食産業のレベル2(経験年数1~3年目)、接客の場合の能力評価シートを例に話を進めます。(表1参照)

表1 外食産業の能力評価シート例

例えば、テーマ1.ホスピタリティでは、目標を“「お客様に尽くす」というおもてなしの気持ちで接客を行う”と設定しました。この目標は部下の行動のあるべき姿ですので、この目標を達成するために具体的な取り組み内容を考えさせます。そして、“適切な身だしなみや丁寧な言葉遣いで接客を行う”や、“開店前に身だしなみをチェックする”などを部下が考えて設定します。このほかに、部下によっては、“お客様の前では笑顔で接する”や、“壁・テーブル・イスなど汚れがあるかチェックする”、“テーブルごとにフォークや箸、調味料などを過不足なく配置する”などが出てくるかもしれません。
この際に、上司は、部下から自発的に出てくる取り組み内容を尊重することが大切です。多くの取り組みが出てきた場合は、望ましいことですので、すり合わせを行い、実行の優先順位をつけます。一方、もし的外れな内容がでてきた場合は、頭ごなしに否定してはいけません。開店前にできることは?先輩社員を見て気づくことは?自分がお客だとしたら、どう接客されたら気持ちよく感じるか?などと自発的な考えを促します。その上で、月次など定期的に取り組みの成果を上司と部下でレビューすることによって、スキルアップにつながり、さらに、次に取り組むべき行動を考える習慣が身につくようになります 。

スキルアップ支援を自発的人材育成につなげる

新しく入った従業員は、作業マニュアルにもとづく指導や先輩社員のOJT(On the Job Training)により、指導された業務を体得しますが、それ以上の業務をできるようにはなりません。従業員のタイプは千差万別であり、積極的な人もいれば、保守的な人もいます。そこで、自ら考える習慣を身につけるスキルアップ支援を一定期間繰り返すことによって、初めはできなかった自発的な行動ができるようになります。さらに、勤務3年以上を経過し、リーダーなど部下を育成する立場になれば、部下に自発的行動を指導することになり、リーダー自らが自発的人材へと成長します。このようなスキルアップ支援の仕組みによって、自発的人材育成が可能になるのです。

(参考文献)厚生労働省 職業能力評価基準

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)


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