フランチャイズシステムは非常に複雑な仕組みであり、本部と加盟者の間で利害関係が対立することも往々にしてあることから、数多くのトラブルが発生しています。
そういったトラブルを防止するために、フランチャイズ契約書では様々なトラブル内容を想定し、詳細な規定を設けることになりますが、フランチャイズを規制する法律との関係もあり、契約書に記載されている内容が法的に必ずしも有効となるわけではありません。
また、トラブルが発展して訴訟となった場合に、本部担当者と加盟者との口頭でのやり取りなどが重要な要素となることもあります。
そのため、フランチャイズに関連する法律の内容を経営者はもちろんのこと、加盟店開発担当者やスーパーバイザーなど加盟者にかかわる人材が熟知しておくことは、フランチャイズ本部にとって極めて重要です。
なお、SVの役割や育成のポイントについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
フランチャイズシステムに関連する法律の代表例としては、中小小売商業振興法、独占禁止法、商標法、不正競争防止法などが挙げられますが、その中でも中小小売商業振興法と独占禁止法には、フランチャイズ本部を運営していくうえで重要な規定が設けられています。
そこで今回は中小小売商業振興法についてまとめたいと思います。
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(1)中小小売商業振興法とフランチャイズの関連性
中小小売商業振興法の目的は以下のように定められています。
「この法律は、商店街の整備、店舗の集団化、共同店舗等の整備等の事業の実施を円滑にし、中小小売商業者の経営の近代化を促進すること等により、中小小売商業の振興を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。(同法1条)」 |
もともとは、商店街の近代化等を目的に制定された法律であり、一見フランチャイズには関連しないように感じられますが、同法の中に「特定連鎖化事業」という規定があり、フランチャイズ事業はこの特定連鎖化事業に該当します。そのため、フランチャイズ本部は中小小売商業振興法の規制を受けることとなります。
特定連鎖化事業
●連鎖化事業の定義(同法4条5項) 主として中小小売商業者に対し、定型的な約款による契約に基づき継続的に、商品を販売し、又は販売をあっせんし、かつ、経営に関する指導を行う事業をいう。 |
●特定連鎖化事業の定義(同法11条1項) 連鎖化事業であって、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの。 |
なお、中小小売商業振興法が規制の対象とする「中小小売商業者」とは、「小売業に属する事業を主たる事業として営む者」と定義されています(同法2条2項)。そのため、フランチャイズ本部の中でも小売業・飲食業が対象となり、サービス業は対象外となります。ただし、サービス業においても独占禁止法は対象となります。
フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
(2)情報開示書面の開示義務
前述の通り、フランチャイズ事業は中小小売商業振興法で定められる「特定連鎖化事業」に該当するため、同法で定められた義務を果たす必要があります。同法では、特定連鎖化事業を営む事業者に対して以下の義務を課しています。
特定連鎖化事業の運営の適正化(同法11条1項)
特定連鎖化事業を行う者は、当該特定連鎖化事業に加盟しようとする者と契約を締結しようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、あらかじめ、その者に対し、次の事項を記載した書面を交付し、その記載事項について説明をしなければならない。 |
この義務が、いわゆる法定開示書面の開示義務を意味します。
これにより、フランチャイズ本部は、加盟希望者との契約締結前に、同法で定められた事前開示事項を書面で交付するとともに、その記載事項について説明する義務を負います。
この義務を怠ってしまうと、加盟後にトラブルになり訴訟にまで発展した場合に、本部にとって極めて不利な要素となります。
ですから、フランチャイズ本部としては、同法で定められた事前開示事項を法定開示書面として加盟希望者に交付し、その説明を十分にしなければなりません。
中小小売商業振興法で定められた事前開示事項は以下の通りです。この内容については最低限開示が必要な項目となる点を心がけなければなりません。
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なお、(一社)日本フランチャイズチェーン協会のサイトに加盟企業の情報開示書面が掲載されていますので、情報開示書面作成の参考にされるとよいと思います。
(3)情報開示書面の開示にあたる留意点
これまで記載した通り、フランチャイズ本部としては、加盟契約締結前に情報開示書面を開示し、加盟希望者に説明をしたうえで契約を締結することとなります。
情報開示のタイミングは、「加盟希望者に対する十分な説明」という観点では早ければ早いほど望ましいものといえますが、情報開示書面は本部の秘密情報が多く含まれていることもあり、安易に開示するわけにもいきません。
最終的な開示タイミングは本部の方針によって決定することとなりますが、少なくとも契約締結の1週間前には契約書も含めて開示し、十分な検討時間を設ける必要があるでしょう。
なお、フランチャイズ契約締結の流れや作成のポイントについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
また、残念ながら加盟者との訴訟に発展してしまった場合には、本部から加盟者に対して十分な説明、情報開示がなされたかが焦点となることが多くあります。
そういった際に本部が義務を果たしていることを証明するためにも、情報開示書面を加盟者に渡した日や説明した日、情報開示書面のすべての事項について説明を果たした旨等を明記した確認書を残しておくことが大切です。
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