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欲しい人材を獲得するために必要なこと

ここ最近、業種業態に限らず、人手不足についての相談が急増しています。飲食業界では、特に体育会系のイメージがある業種、具体的にはラーメン、串焼き(焼き鳥・やきとん)、大衆居酒屋店などにおいて問題がより深刻なようです。
人手不足問題が深刻化の一途であることは間違いありませんが、安定して人材を採用できている企業が存在することも事実です。大企業だけでなく、中小規模の企業にもそのような企業が多く存在します。人手不足に悩む企業、安定して人を確保できている企業の人材募集活動をみていると、それぞれに共通する点が浮かびあがります。

(1)ほしい人材が採用できない要因

近年、飲食業界に限らず、人手不足の問題は深刻化の一途です。平成29年4月時点での有効求人倍率は1.5倍弱まで上昇しています。これは求職者1名につき1.5件の求人が存在することを意味しています。仕事を探す人(働き手=需要)よりも求人(雇い手=供給)の方が多いわけですから、どこかで必ず人材不足が生じる状況となっています。すなわち、人材採用についても企業間で競争をする時代になっているのです。
需要よりも供給が上回る環境においては、供給者間での競争を勝ち上がっていくための努力が求められます。例えば、飲食店経営については、数十年前から供給(飲食店が求める顧客数)が需要(実際の顧客数)を上回り、企業間で競争する時代に突入していますが、そこでは各社がターゲットとする顧客を具体的に想定した上で、それらの顧客に満足していただけるようマーケティング戦略を考え、実行することが当たり前になっています。
ところが、人材採用の話になると、そのような活動、具体的には採用したい人物像を具体的に想定した上で、それらの人材に働きたいと感じてもらえる戦略を考え、実行している企業はそれほど多くありません。人手不足の問題で悩んでいる企業の大半は、この前提条件で躓いている印象です。
採用についても企業間で競争する時代ですから、何の考えもなく、ただやみくもに求人サイトに掲載しているような状況では、人材を採用できないのは当然のことといえます。

(2)発信すべき情報

企業間で競争をする時代になっている以上、企業は求職者に対して“自社で働くことが他社で働くことよりも魅力的であること”をアピールしなければなりません。人材不足に悩む企業の多くが、どのような媒体で募集するかばかりに気を取られ、前述の点を見落としてしまっている印象があります。
では、自社で働くことの魅力をアピールするためにはどのような情報を発信すべきでしょうか。これは、企業の特徴や採用ターゲットによって変わりますが、一般的に中小規模の飲食店が正社員を募集する場合には以下の要素が必要と考えられます。

経営方針・経営目標

給料や福利厚生の面で中小規模の飲食店が大企業と対等に勝負することは至難といえます。もちろん可能な企業もありますが、待遇には上に再現が無い上、待遇に惹かれて入社してくる人材は、自社よりも良い待遇の企業が現れるとそちらに移ってしまうようなことが往々にして生じます。ですから、人材採用においては待遇面以外の点で勝負をすることが原則です。
人が仕事を探す際、「どのような待遇が得られるか」という点は極めて重要な要素となりますが、「その会社が将来どうなっていくのか」はそれと同じくらい大事なことといえます。ラーメン店で働きたいと思っている人でも、同じお店で一生ラーメンの調理をし続けたいという人は少ないのではないでしょうか。
したがって、会社が5年後、10年後に目指す姿がどこにあるのか、会社経営を通じて何を成し遂げたいのか等を明確に示し、求職者が自社で働くことに夢や希望をもてるような情報を提供してあげることが大切です。

求職者にとって当社で働くメリット

次に、求職者が当社で働く魅力を端的にアピールするべきでしょう。あまりたくさんアピールすると、一つ一つの印象が薄くなってしまいますので、ポイントを3つ程度に絞って丁寧に解説するのがおすすめです。
働く魅力は採用ターゲットによって異なりますので、採用ターゲットの気持ちになって必要な情報を検討、整理します。例えば、学生であれば「楽しさ」「得られる経験」などがアピールポイントになるでしょうし、30歳以上の経験者であれば「自分のお店が持てる」「店舗経営が体験できる」等がアピールポイントになるでしょう。採用ターゲットを具体的に想定し、対象人材の心に刺さるメッセージを発信することが求められます。

仕事の内容

あたりまえのことですが、仕事の内容についてもアピールポイントの一つとなります。例えば、ラーメン店の場合、従業員の仕事は「ラーメンをつくること」や「接客をすること」だけでしょうか。企業によっては「店舗経営に責任を持つ」「新店舗の立ち上げをする」「新しい業態を開発する」など、求職者にとって魅力的な内容があるはずです(もちろん、この内容も採用ターゲットによって変動します)。こういったポイントも、求職者を惹きつける重要ポイントとなります。

先輩社員の声

いま働いている先輩社員の声を掲載することも有効です。文章には人柄がでますので、先輩社員に、仕事の満足度や感想、将来目指していることなどをまとめてもらい、顔写真等とあわせて発信することで、求職者の共感を誘うことが期待できます。

代表者メッセージ

代表者から求職者に対してのメッセージは必須条件です。働き手にとって、代表者がどのような人物であるかは極めて重要な要素となります。経営に対する想い、将来の目標、求職者に期待することなどを経営者自身の言葉で整理します。また、経営者の顔写真は必ず掲載すべきでしょう。求職者の印象を左右する重要なポイントとなりますので、柔らかく親しみをもてる表情のものを採用すべきです。

求める人材像

欲しい人材像のイメージがあるのであれば、その点も明確にアピールしておくべきです。経営者の相談で「求める人材と異なる人材が応募してくる」というものがありますが、その大きな要因は求める人材像を明確に示せていない点にあるように感じます。もちろん、求める人材像を明確に示したとしても、そのような人材ばかりがくるわけではありませんが、明確に示しておくことで、その考えにに共感を持つ人が応募してくることも期待できます。

募集要項

以上の情報を発信した上で、最後に募集要項を掲載します。これは必要最低限の情報であり、企業間の競争に有効なものではないことを認識するべきでしょう。

(3)情報発信のポイント

以上、発信すべき情報を列挙しましたが、企業間の競争を打ち勝つうえで重要なことは、できる限り具体的な情報を発信することに尽きます。例えば、社員独立支援制度をアピールするのであれば、対象者はだれか、入社してからどのようなステップを経て独立できるのか、入社から独立までの平均的な期間や開業に必要な資金はどの程度かなど、可能な範囲で具体化していきます。
社員独立支援制度を導入している企業は多くありますので、その中で差別化をするためには、どれだけ具体的に表現できているかが鍵となるのです。

(4)求職者が求人に応募するまでの流れ

最後に、求職者が求人に応募するまでの流れを考えてみることが大切です。一般的には、求人サイトや雑誌等の求人媒体を通じて当該企業の求人を知ることになります。問題は、その次の行動です。求人サイトで当該企業の求人が出ていることを知った求職者は、そのままその求人に応募するでしょうか。おそらくそのまま応募をする人は稀な方でしょう。多くの場合、その会社のホームページを閲覧したり、実際に店舗を見ることで、当該企業のことをより深く知り、慎重に検討をしたうえで、求人に応募するかどうかを最終決断するのではないでしょうか。
上記の流れを考えると、現場の印象がよいことはもちろんですが、それに加えてしっかりとした自社ホームページを整備し、(2)で紹介した情報を丁寧に発信することが不可欠となります。ここでポイントとなるのが一定品質のホームページを整備する、ということです。どんなに素晴らしい情報を発信していたとしても、ホームページの品質自体が古臭かったり、チープな印象であれば、求職者は企業に対してそのような印象を持ってしまうからです。人手不足問題が深刻化する現代においては、発信する情報内容に加えて、情報発信の方法や媒体自体も差別化のポイントとなっていることを認識すべきでしょう。

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