若い社員のなかには、成長意欲が乏しいと感じさせる社員がいるようです。
しかし、ある調査によれば、入社から2年以内での短期での離職の理由には「報酬に不満がある」や「成長や学習機会が乏しい」といった回答が少なくありません。
つまり、成長意欲が乏しいというよりは、将来をうまく見通せず、仕事でどのように満足感や充実感を味わえばよいか、よくわからないのではないでしょうか。
そこで、仕事にやりがいを感じさせ成長を実感させるためのポイントについてご紹介します。
なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
成長意欲が乏しい若手社員
「最近の若手は成長意欲が乏しいのではないかと思うのですが。」
これは先日伺った飲食店を経営する方の言葉です。
この飲食店は都内に数店舗を構え社員数は10人前後です。
その中心は20~30才代なのですが、成長意欲が乏しいことが以前から気になっていたようです。
仕事はしっかり真面目にするのですが、将来について話をすると「普通の生活ができればいいんです」と話す若い社員がいるそうです。
会社としては、優秀な社員が成長し自発的に行動できるようになって会社の発展に貢献してほしいと思っています。
これから順調に店舗の拡大が続けば、そういった優秀な社員に店舗や経営の一部を任せなくてはなりません。
しかし、すべての若い社員がそうというわけではないようですが、この方はこのような若手社員の気持ちが気になるようです。
他の世代と異なる価値観を持つミレニアム世代
現在の20~30才代の若者はミレニアム世代と言われています。
特徴として、デジタル機器が身近に存在しているのが当たり前の世代であること、SNSを重用し共感を大切にすること、個性やコストパフォーマンスを重視すること、働き方へのこだわりがあることなどがしばしば言われます。
また、経済環境的にはリーマンショックから現在まで経済成長が乏しいいわゆる平成の「失われた20年」に育った世代であり、経済発展の実体験の少なさが考え方に影響を及ぼしているようです。
あるコンサルティング会社の調査によると、ミレニアム世代の人生の目標として、経営幹部になる、自分のビジネスを始める、社会に好影響をもたらすなどは高くない結果でした。
また、世界の同世代と比較しても、日本のミレニアム世代は、世界を旅行するという回答も割合が低く内向きな傾向が伺えます。
このような特徴を持つ現代の若者ですが、本当に成長意欲が乏しいか、というとそうとも限らないとも言えます。
育った環境から保守的な面はありつつも、ある調査によれば、入社から2年以内での短期での離職が多いと言われますが、その理由には「報酬に不満がある」や「成長や学習機会が乏しい」といった回答が少なくありません。
つまり、成長意欲が乏しいというよりは、将来をうまく見通せず、仕事でどのように満足感や充実感を味わえばよいか、よくわからないのではないのかと筆者は考えます。
仕事にやりがいを感じさせ成長を実感させるためのポイントとは
そこで、仕事にやりがいを感じさせ成長を実感させるためのポイントについてご紹介します。
目標を達成させる
簡単なことですが、人は目標を達成できると充実感を味わうことができます。
できないことやしたことがないことができるようになることは誰にとってもうれしいものです。
よくある例では、子どもの学習塾や習い事では、習熟度や達成レベルに応じてクラスや級を設けています。
学習や練習を繰り返すことは大変な時もありますが、クラスが上がったり進級したりすることは、節目にもなり成長を実感できます。
会社ではこのようなクラスや級はありませんが、目標を小刻みにしてマイルストーンを多く設けたり、スキルの習得度に応じてポイントを与えるなど、取り組み方を工夫することで、モチベーションを高めることができます。
このような達成の喜びが成長への意欲へとなります。
承認する
自分が目標を達成できたことを実感することに加え、周囲から承認されることでより自信が深まります。周りから褒められたり、認められたり、資格を与えられたり、頼りにされたり、責任ある仕事を任されたりするなど周囲から承認されたと感じることが、より気持ちを充実させます。
これは、自分で直接コントロールできず周りからしか与えられない貴重なものだからです。
若い人のなかには、このような周りから仕事で認められた経験がない方がいるかもしれません。
部下が目標を達成できたら、言葉や態度で明確に示すことが重要です。
また、直接ではなくても、先輩社員などを通じて「○○店長が褒めてたよ!」などと第3者経由で承認されることもうれしいものです。
感謝する
さらに、業務や仕事をやり遂げることで「ありがとう」と言われるほどうれしいことはありません。
仕事で感謝を示されるということは、その仕事が相手や会社、社会に対して、役立ち貢献したからです。
自分の行動が社会に貢献し受け入れられることで、仕事の真の充実感を体験することができます。
これは、仕事でしか味わうことができない感覚です。
たとえ部下でも、仕事でしっかり成果を出すことができたら、「ありがとう」と声に出して伝えるようにします。また、感謝を伝えることは人を勇気づけます。
全社に対しても感謝の気持ちを表現するように指導することが、人材育成にふさわしい企業風土を醸成することに役立ちます。
共感する
先ほどの調査結果にはミレニアム世代は共感を大切にし仲間意識が強いという特徴がありました。
これはミレニアム世代に限ったことではありませんが、仕事を通じて、今まであまり話をしなかった人と関わるようになったり、他店舗の人と協働して課題を達成できたときは、大きな達成感や一体感を味わうことができます。
その人たちに対する接し方が従来から変わり、次の仕事もしやすくなったり、多くを話さなくても気持ちがわかりあったりするようになります。
時には、意見が異なったり、うまくいかないことがあるかもしれません。
しかし、それらを乗り越えたり、異なる価値観を共有できることは仕事のやりがいのうちの1つです。
報酬とリンクさせる
報酬は生活するために欠かせない直接の動機づけ要因ですが、一方で仕事の成果の価値と考えることもできます。
つまり、より高度な成果を出せるようになれば、より高い報酬に結びつくということです。
先ほどの調査結果にもあるように、ミレニアム世代は直近の報酬により敏感です。
評価と報酬の人事管理システムを公正・公平、客観的に構築し、頑張れば頑張った分だけ報いがあるということを周知します。
努力が成果に反映されれば、大きなやりがいにつながります。
現代は不確実性の高い時代と言われますが、特に若い世代にとっては、人生の目標が何かよくわからなかったり、働き方に迷いがあったりすることは、ある意味仕方がないと言えるかもしれません。
だからといって、若い世代を非難したり、成長意欲が乏しいなどと一概に言うことはできないと思います。
若い世代が将来についてうまくイメージできていないなか、経験豊富な経営者や上司の方が、このように仕事を通じてやりがいを与え成長を実感させることが、若い世代を自発的人材へと育成することにつながります。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
無料メルマガ登録
専門コラムの他、各種ご案内をお届け中です。ぜひ、ご登録ください。
セミナーのご案内
店舗ビジネスの多店舗展開やのれん分け・FCシステム構築を進めていくため、具体的にどう取り組んでいけばいいのか、どのような点に留意すべきか等を分かりやすく解説する実務セミナーを開催しています。
セミナー一覧ぺージへ