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無店舗型ビジネスでのれん分け制度を導入する際のポイントとは

当社は無店舗型のサービス事業を展開しています。
無店舗型の場合、のれん分け制度は有効ではないでしょうか?

これは、先日のれん分け制度導入について弊社に相談に訪れた、無店舗型のサービス事業を手掛ける企業経営者からいただいたご相談です。

のれん分け制度というと、美容院や飲食店などの店舗型ビジネスを想像される方が多いようです。
実際、弊社のクライアントの8~9割は、店舗型ビジネスを営む企業です。

一方、1~2割は無店舗型ビジネスを営む企業がおり、無店舗型でものれん分け制度を有効活用されている会社は多数存在します。

ただ、店舗型か、無店舗型によって、制度設計時のポイントも変わります。
店舗型には店舗型の、無店舗型には無店舗型の”制度設計のポイント”があるのです。

そこで、今回は無店舗型ビジネスでのれん分け制度を導入する際のポイントについて考えてみたいと思います。

(1)店舗型と無店舗型の違い

当たり前のことですが、店舗型ビジネスと無店舗型ビジネスの違いは、“店舗の有無”にあります。

そして、無店舗型ビジネスでは店舗づくりが不要な分、店舗型ビジネスと比べて初期投資が少なく、低リスクで独立できる利点があります。
そのため、個人開業を目指す者からすれば、無店舗型ビジネスは独立に向けた一歩を踏み出しやすい事業ともいえます。

このように考えてみると、無店舗型ビジネスでは、店舗型ビジネスと比べて独立者を輩出しやすいように感じるかもしれません。
実際、フランチャイズの場合は、リスクの低い無店舗型ビジネスの方が、個人加盟者を集める難易度は低いと思います。

しかしながら、すでに事業についての経験やノウハウを有する自社のスタッフを対象とするのれん分けの場合には、必ずしもそうならない点に注意が必要です。
というのも、独立リスクの低い無店舗型ビジネスの場合、店舗型ビジネスと比べると、「のれん分けによる独立」という選択をする必要性が薄くなってしまうのです。

(2)無店舗型ビジネスにおいてのれん分け制度を導入する際の留意点

この点を具体的に考えてみましょう。

店舗型ビジネスの場合、スタッフが独立する際の最大のハードルは、たいてい「開業時の資金調達」となります。
独立志向のあるスタッフの大半は、このハードルを乗り越えることができず、自力で独立することを断念してしまいます。

そのため、店舗型ビジネスの場合には、ほとんどの場合、本部が開業時の資金調達を何らかの形でサポートすることになります。
裏を返せば、「本部から開業時の資金調達サポート受けられること」が、独立者にとって、「自力独立ではなく、のれん分け制度を利用するわかりやすいメリット」になっているのです。

一方、無店舗型ビジネスの場合には、店舗型ビジネスと比べて初期投資が低額で済むはずですから、「開業時の資金調達」が問題となるケースは稀でしょう。
とすると、独立者の側から見れば、「なぜ自力独立ではなく、のれん分け制度を利用して独立するのか?」という疑問が生じるはずです。

第三者を加盟対象とするフランチャイズであれば、加盟者はそもそも事業についての経験やノウハウが不足しているわけですから、本部が有するノウハウを得るために、フランチャイズ加盟しようと考えます。
しかし、自社のスタッフは、すでに本部事業についての経験やノウハウを有しているのです。そのため、フランチャイズのように「ノウハウを得ること」がのれん分け制度を利用する決め手にはなりません。

この点について、本部企業が「独立者が自力独立ではなく、のれん分け制度を利用すべき理由」について明確な説明ができなければ、独立者はのれん分け制度を利用せず、自力独立の道を選ぶことになるでしょう。

これは店舗型・無店舗型ともにいえることではありますが、資金面でのメリットを感じやすい店舗型と比べて、無店舗型の場合、資金面以外の明確なメリットを打ち出せるかどうかが、より大切になるのです。

(3)独立者が抱えている不安や悩みから、本部サポートを設計する

それでは、本部は独立者に対してどのような「のれん分け制度を利用するメリット」を提示すればよいのでしょうか。

この点、弊社では、独立者が抱えている不安や悩みから逆算して、その悩みや不安を解消するための本部サポート体制を構築していくことを推奨しています。

独立者が抱えている不安や悩みは、業種業態やビジネスモデルの特徴によっても大きく変わってくるものと思いますが、基本的には以下の4つに集約されるものと考えます。

  • 独立したいけど、貯金が無い…
  • 独立後に集客できるか不安…
  • 独立後に人は採用できるか不安…
  • 会社を辞めて一人で経営していくのは心細い…

特に、無店舗型ビジネスの場合、店舗型ビジネスと比較すると、「どのように集客するか」ということが、経営上の大きな課題になるでしょう。
この点について、本部の既存顧客を引き継ぐことや、本部の集客サポートによって独立直後から一定水準の顧客を獲得できるのだとすれば、独立者から見て、自力独立ではなく、のれん分け制度による独立を選ぶメリットが生まれてくるはずです。

このように、無店舗型ビジネスにおいては、店舗型ビジネス以上に、独立者が抱えている不安や悩みを解消する本部サポートの提供が求められるのです。

まとめ

以上、今回は無店舗型ビジネスでのれん分け制度を導入する際のポイントについて触れてみました。

店舗型ビジネスだけではなく、無店舗型ビジネスにおいてものれん分け制度は有効です。
そして、基本的な考え方は、店舗型・無店舗型でそれほど大きな違いはありません。

ただし、店舗型には店舗型の、無店舗型には無店舗型の”制度設計のポイント”があります。

のれん分け制度を成功させるためには、一般論に流されず、自社の目指す姿やビジネスモデルなどに従い、制度設計を進めていくことが大切といえるでしょう。

なお、のれん分け制度構築についてさらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムも合わせてご覧ください。

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