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目的意識が社員の意識と行動を変える

「最近うちの部下の仕事が速くなってきました。また、この前は、代替案を提案してきたんですよ。以前とは人が変わったようです」

これは、定期的に経営相談を受けている理容店経営者の言葉です。

サービス業は、飲食業や建設業とならび、人手不足が深刻な業種です。
加えて、サービス業は、人を介してサービスを提供するため、機械設備を活用して高生産性を実現する製造業等と比べて生産性が低い(一人当たり売上高や粗利益など)と言われています。

この会社も例外ではなく、製造業のように最新設備を入れて生産性を高めることができないため、限られた社内の人材が成長して生産性を高めるしかなく、人材の成長が経営課題となっていました。

そこで、「社員を、自発的に考え行動できる人材に一人でも多く変えましょう。」という話をしました。それ以降、この経営者は、社員を自発的人材に育成する取り組みを始めました。

具体的には、各社員に将来期待する役職や業務、その際に得られる収入などを示し、目指すべき姿をイメージできるようにするキャリア形成支援、求められるスキルと現状を比較した能力評価、それにもとづきスキルのギャップを埋めるキャリアアップ支援など、自発的人材育成に必要な支援策を行いました。

上記の話にあった部下は、そういった支援をしても当初は、あまり変化はなかったそうです。しかし、プライベートに変化があってから、考えや行動に変化が出てきたとのことでした。

目的意識が考えと行動を変える

実はこの部下は数か月前に結婚をしたそうです。
変化が出てきたのは、結婚がきっかけになったようですが、それだけではありません。
経営者の話から、会社による自発的人材育成支援の取り組みと、部下自身の仕事に対する意識の変化の両方が作用したと思われます。

当初は、キャリア形成支援により、5年後、10年後に活躍する分野や役職、目安となる給与などを話しても、変わった様子はなかったそうです。
これだけでは、本人の意識の奥に届きませんでした。
20代の部下は、働くことで収入を得て毎月生活をしていましたが、働くことの目的が、“自分のため”になっていました。

ところが、結婚というプライベートにおけるライフステージの変化に直面し、“家族のため”という視点が加わりました。
“家族のため”とは、大切な人のために将来にわたって健康に働き、安定した収入を得る必要があるということです。
つまり、会社によるキャリア形成支援と部下自身のライフステージの変化が結びつき、部下のなかで意識が変わったのです。
目的意識を持ったことが、考えと行動を変えました。

目的意識のメリットと効果

目的意識を持つと、人はどのように変わるのでしょうか?
目的意識を持つと、以下のようなメリットがあると言われます。

  • 仕事や行動が速くなる(効率性が上がる)
  •  さまざまなアイデアや施策が創出される
  • コミュニケーションが円滑になる
  • 組織風土が前向きになる、明るくなる

考えや行動に目的ができ、行動に一貫性が出て、ゴールにより速く、より正確に到達できるようになります。
一つひとつの行動に意味が出てくるからです。

その結果として、売り上げやコスト削減など経営目標の達成に近づきます。
もし、業務が計画通り進まなくても、トライアル・アンド・エラー(試行錯誤)を迅速に繰り返し、よりよい施策を実行することができます。
目的意識を持つ社員が一人でも多く増えることで、前向き・積極的に取り組む組織風土が醸成されます。

このように、社員に目的意識を持たせることで、仕事の効率化や改善など直接的な効果に加え、会社の業績への好影響や組織風土の改善などにつながります。組織風土が改善すると、さらに多くの社員が目的意識を持つようになり、会社全体に好循環が生まれます。

社員に気づきを与える方法

 目的意識を持たせ、自発的に行動させるためには、社員自身に気づきを与える必要があります。
気づきを与えるために、上司が部下に対して、「目的意識を持て」や「自発的に行動しろ」と言っても効果がありません。もしろNGワードです。

これらの発言は、上司の意図とは逆に“目的意識を持っていないこと”と“自発的に行動していないこと”を示唆してしまいます。気づきを与えるどころか、部下の行動を否定・非難することになります。

その代わりに、業務面では「これは顧客にとってどういうメリットがあるかな?」や「それが手に入ったらどうなるだろうか?」など、仮定や見通しについて、考えさせる質問をします。
また、生活面では、収入が増えれば、趣味や自己啓発に使え多様な生き方が可能になること、家族が増えても安定した生活を送れることなど、今とは違う将来の目的を意識させることが効果的です。

冒頭の部下の例では、キャリア形成支援と部下自身の結婚というライフステージの変化が、部下に気づきを与えました。
社員が何によって気づきを得るかは、人それぞれですし、タイミングも異なります。
上司は日常から、部下の発言や行動をよく観察し、何に興味・関心を持っているかをつかみ、部下の将来のキャリアについての話や気づきを与える会話をすることが大切です。

一度気づきを得ることができれば、目的意識が醸成されます。
目的意識を持つことにより、行動が自発的になります。事業成長を実現している経営者は、売り上げを伸ばすことや人材育成などについて、強い目的意識を持っています。
そのため、リーダーシップや率先した行動、考え抜いたアイデアにより、事業を運営できるのです。

経営者と社員では、自発的に行動するための目的自体は異なります。しかし、部下に目的意識を持たせることで、自発的に行動する人材に成長することに、変わりはありません。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

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