「うちの社員は、ただ言われたことを言われたとおりにこなすだけで、仕事に対する当事者意識が不足しています。
今のままでは、本人たちのためにもよくないと思うのですが、なかなか伝わりません…。」
これは、弊社がのれん分け制度導入をサポートさせていただいている焼肉店経営者からいただいたご相談です。
「社員の当事者意識が足りない」という悩みは、経営者が抱える悩みの中でも、最も多いものではないかと思います。
しかし、この悩みに対する対処方法をお聞きすると、ほとんどの場合、「それでは効果がでないのではないか…?」と感じるものになっているのです。
そこで、今回は社員の当事者意識を高めるための方法について考えてみたいと思います。
(1)「当事者意識を持て」というだけでは効果は期待できない
「社員の当事者意識が足りない」とお悩みの経営者に、社員の意識変革のためにこれまでどのようなアプローチをしてきたかを確認すると、多くの場合、「社員に当事者意識を持つよう伝えている」といったような直接的な指導をされています。
しかし、このアプローチはほとんどの場合意味を成しません。
なぜならば、そもそも当事者意識が不足している社員は、「仕事に対して当事者意識を持たなければならない理由」がわかっていないからです。
より具体的に説明すると、「当事者意識を持て」と言われた社員は、頭の中で「そうはいっても、会社のことは自分事ではないし、当事者意識を持てといっても難しいよね?」と感じているのです。
自社の社員は、このような状態になっていないでしょうか。
この場合、経営者から社員に対していくら「当事者意識を持て!」と伝えたとしても、ほとんど意味がないことは明らかです。
このような事態が生じるのは、社員が当事者意識を持たなければならない理由を「会社のため」と捉えてしまっているからです。
この状況を変えていくためには、社員が当事者意識を持たなければならない理由を「自分毎」に変換していく必要があります。
(2)「当事者意識を持たなければならない理由」を社員視点から顕在化させる
では、社員はなぜ、自分のためにも当事者意識をもって仕事に取り組まなければならないのでしょうか?
この点は、経営者がご自身で考えてみてほしいポイントですが、私の考えを申し上げると、
これからの時代、当事者意識を持って仕事に取り組み、人にしか生み出せない価値を生み出せる人間でなければ、生き抜くことが難しい時代になっているから
であると考えます。
そう考える背景には、例えば以下のような時代認識があります。
- 技術革新が急速に進み、ただの作業はどんどん機械に置き換えられている時代。会社に指示されたことを、指示されたとおりにこなすだけの人材は、機械に置き換えられる時代がすでに訪れている
- 経営環境の不確実性が高まる現代は、何らかの環境変化によって企業の業績が急激に悪化し、その結果、働き手はある日突然、会社から放り出されるリスクがある。その時、指示されたことを、指示されたとおりにしかできない人材は、いくらでも代わりがきくため、転職することも独立することも難しい。
このような時代認識があれば、「自分自身のために、当事者意識を持って仕事に取り組む必要性」が理解できることでしょう。おそらく、経営者の中にも、このような認識があるのではないでしょうか。
しかし、仕事に対して当事者意識の無い社員は、そもそもこれらのことに気が付いていません。
だから、今の働き方に危機感を感じず、ただ何となく仕事をこなす日々を過ごすことになってしまうのです。
ということは、会社としては、社員に「当事者意識を持て!」という前に、上記のような時代認識を社員に教育し、社員視点から「当事者意識を持って仕事に取り組まなければならない理由」を顕在化させる必要があるのです。
(3)一発で変えようとするのではなく、継続的なアプローチで段階的に意識を変革する
以上のように、会社としては、社員が「当事者意識を持って仕事に取り組まなければならない理由」を教育し、「自分のためにも当事者意識持って働かなければならない!」と感じるよう教育を行っていく必要があります。
この教育では、いまの時代の流れや経営環境等を取り扱うことになりますから、一般的な会社でいう教育とは全く異なる内容となります。
当然、なじみのない社員が大半でしょうから、教育には長い時間がかかります。
そのため、例えば1回の勉強会で意識変革しようとしても、ほとんどの場合、上手くいきません。
ですから、会社としては、1回の機会で変えようとするのではなく、定期的な勉強会や会議を通じて継続的にアプローチをしていき、段階的に意識変革を進めていく姿勢が求められるのです。
まとめ
以上、今回は社員の当事者意識を高めるための基本的な考え方をご紹介しました。
ご紹介した通り、社員の当事者意識を高めるためには、「社員が仕事に対して当事者意識を持つべき理由」を社員の視点から教育し、顕在化していく必要があります。
そのためには、いまの時代の流れや経営環境等を社員に理解してもらわなければなりません。
決して簡単な取り組みではありませんが、社員がいまの時代の流れや経営環境等を踏まえ、「自分自身が幸せな人生をおくるために、仕事に対して当事者意識を持たなければならない」と感じさせることができれば、「当事者意識を持て!」等といわなくても、自ずと当事者意識が芽生えるはずです。
「社員の当事者意識が不足している…」とお悩みの経営者様は、ぜひ本コラムを参考に、社員教育のあり方を見直していただければと思います。
また、弊社では、社員に当事者意識を芽生えさせるための仕組み構築や研修代行等のサポートも行っておりますので、具体的な進め方のイメージがわかない方は、お気軽にご相談くださいませ。
なお、のれん分け制度構築についてさらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムも合わせてご覧ください。
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